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シスコ、Webex製品群の強化・拡充で“オフィスとテレワークの混在環境”を支援

当たり前になっていくハイブリッドワークでのコミュニケーションをサポート

 シスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)は15日、コラボレーション事業の重点戦略説明会を実施した。

 11月から日本法人のコラボレーション事業責任者となったコラボレーション アーキテクチャ事業 執行役員の菊池政広氏は、「コラボレーション事業は働き方改革を通し、シスコのパーパスであるすべての人にインクルーシブな未来を実現する」と説明。

 今回の説明会ではコラボレーション事業の中でハイブリッドワークにフォーカスし、さらなる拡大策として、(1)対面よりも10倍リッチなコラボレーション体験を提供する、(2)ハイブリッド化が遅れている業務・業種を支援、(3)パートナーリングの拡大の3つを掲げた。Webexのスイート版提供、AIを活用した会話の文字化や翻訳機能などを提供する。

シスコ コラボレーション アーキテクチャ事業 執行役員の菊池政広氏

これからはオフィスとテレワークの混在環境が当たり前になっていく

 シスコのコラボレーション事業は、(1)ハイブリッドワーク、(2)変化に即応できるコミュニケーションプラットフォーム、(3)カスタマーエクスペリエンスの3つを重点事業としている。

 このうちハイブリッドワークに対しては、「テレワークは業務効率が低いと簡単にいう人がいるがそれで本当にいいのか。これからはオフィスとテレワークの混在環境が当たり前になっていくのではないか」と菊池氏は指摘。ハイブリッドワーク環境を整えるため、場所にしばられる電話(PBX)をクラウド化することで、ハードウェアが不要なソリューションを用意するなど、ハイブリッドワークを支援するソリューションを提供していくとした。

ハイブリッドワークとは?

 Cisco自身、2020年3月から全世界でオフィスを閉じてフルテレワークを実施してきた。その結果、よかった点として挙がったのは、「ペーパーレスや印鑑の廃止、チャットの普及などによる業務効率が向上」、「場所を選ばずに商談を進めることができるため商圏が拡大した」、「効率的な働き方により家族と過ごす時間が増えるなど、ワークライフバランスにプラス効果があった」ことなどだ。

 一方でよくなかった点としては、「ショールームが活用できないため、顧客体験提供など体験の提供が十分ではなかった」、「中途入社の社員や若手社員など、対面で会う機会がなかった人とのコミュニケーション感度をあげることが難しい」、「始業時間や終業時間のコントロールが難しく、ワークライフバランスに悪影響を与える」などだ。

フルテレワークで得られたものと課題

 なお、テレワークを体験した人を対象に調査したところ、77%の人がハイブリッドワークを働き方の1つとして認めると答えている。シスコ社内での調査では、「これよりも高い割合で、ハイブリッドワークを認めているという意見があがった」と、シスコ コラボレーションアーキテクチャ事業 部長の大野秀記氏は説明する。

 また、シスコが提供したハイブリッドワークソリューションで業務効率が向上した例を紹介した。あおぞら銀行では電話業務をハイブリッド化し、オフィスでも自宅でも出先でも0ABJ番号をそのまま利用できることで、場所にしばられない効率的な働き方を実現した。そのほか、千葉工業大学の授業、JR東京総合病院の入院時の面会、スポーツ観戦、イベント、住民サービスなど、さまざまな分野でハイブリッド化が実現しているという。

コミュニケーションのハイブリッド化のユースケース

Webexでハイブリッドワークを支える

 こうしたハイブリッドワークを支えるのがシスコのWebexだ。認証基盤、カレンダーなどさまざまなものをつないで利用できる環境を整えた。

 しかし大野氏は、「さらに多くの人にハイブリッド化された環境で働いてもらうために、新しい取り組みが必要」として新たに3つの取り組みを実施する。

 1つ目に取り組むのは、対面よりも10倍リッチなコラボレーション体験を提供することだ。電話、メッセンジャー、ミーティング、Polling、イベントなど複数のコミュニケーションアプリをワンパッケージにした「Webex Suite」を提供する。「単品のアプリケーションを購入した場合よりも、低価格で利用できるお得な製品となっている。全サービスを1つの管理コンソールから管理することができるなど活用を支援する機能を持っている」(大野氏)。

Webex Suite

 “対面よりも10倍リッチ”とアピールする要因となっているのが、新しい機能を積極的に追加していることだ。言語を超えたコミュニケーションを実現するために、108の言語をリアルタイムで翻訳し、字幕、議事録をAI活用で自動的に行うことでコミュニケーションや会議の質を向上させているという。

 またWeb会議の画面は、主催者が見せたいレイアウトに自由にカスタマイズ可能で、テレビのようなレイアウトで配信を行える。見せたい画面を強制的に配信することや、イベントに合わせ特定の人物のみを配信することや、話者だけを配信するといった配信方法も可能となる。

言語の壁を突破する
テレビのようなレイアウトで配信

 イベント開催に必要なランディングページ、参加登録、当日のアジェンダ、コンテンツ配信、アンケート、集計機能を持つSocioを提供し、Webex Eventsと組み合わせて利用することで、参加者はオンライン、現地のどちらでもSocioを介してイベント登録、イベント情報などを取得することができる。

SocioとWebex Eventsにより、最大10万人規模のハイブリッドイベントの運営と配信を可能にするという

 このほか、多くの会議室はオンライン会議を行うことを想定せずに設計されていることから、会議室で利用するための新しいデバイスを提供することを予定する。11月18日に開催する「WebexOne」で公開する予定だ。これらのデバイスだけでオンライン会議に参加することが可能で、Webex以外のミーティングツールに参加することもできる。

 また、企業内の管理部門が抱える課題解決も支援していく。例えば、情報システム部門の担当者にとっては、ハイブリッドワークを推進する際、トラブル対応、運用管理、セキュリティに配慮する必要がある。そこで登録ユーザーや起こっているトラブルを可視化し、対処すべき問題を把握して解決に向かうことができるコントロールハブを無償で提供する。一方でマネジメント層に対しては、誰がミーティングを主催し、何時間開催されているのかといった情報を可視化するPersonal Insightsを提供し、そこで得た成果をもとにワークライフバランス向上などを進めていく。

 なお、具体的なソリューションは、東京本社を含め全国6か所にあるショールームを使って体験してもらうことも可能で、シスコのスペシャリストによるプレゼンテーションを受けることが可能となる。

情報システムが抱える課題と解決
マネジメント層が抱える課題と解決

ハイブリッド化が遅れている営業や製造現場などへの支援も

 2つ目の課題である、ハイブリッド化が遅れている業務・業種の支援としては、ハイブリッド化が進まない業務である営業職のハイブリッド化を実現する提案を行う。具体的な事例として、オンライン商談を行う際、「顧客と簡単につながる仕組みが欲しい」という声が上がったため、LINE WORKSとLINE間でのオンラインコミュニケーションをアプリのインストール不要で簡単に実現し、ワンクリックで簡単に会議を始めることができる仕組みとした。

 今後の展望として、オンライン商談時のチャット、会話などすべてを記録し、データベース化することにより、営業活動における生産性を最大限に向上させることも計画している。

営業職のハイブリッド化を支援

 製造業などの現場とエキスパート間のコラボレーションをハイブリッド化することも課題の1つ。作業現場とエキスパートとのやりとりを音声に加え、リアルタイム映像を組み合わせることで作業を効率化する。将来的にはホログラム、AIなどを併用していくことでコンタクトセンターとの組み合わせ、さらなる生産性向上なども進めていく。

 加えて、現場とエキスパートをつなげる際に、「アプリケーションをインストールして利用するのは不便」という声があることから、アプリケーションをインストールせず利用できる「Webex Instant Connect」を提供し、簡便で安全なコミュニケーションを提供するとした。

現場とエキスパート間のコミュニケーションの効率化を支援

 3つ目の課題であるパートナーリングの拡大については、Webexコミュニティによるエコシステム作りを進め、情報交換などを行う交流の場を提供する。文字起こし・議事録作成、オンライン診断、ウェアラブルソリューションの提供でより多くの活用場面を増やしていく計画だ。