ニュース

2021年はサービスに本気で取り組む――、脱“ハードウェア企業”をアピールするレノボ

2021年の事業戦略説明会を開催

 レノボ・ジャパン株式会社(レノボ)は10日、2021年の事業戦略説明会を開催した。代表取締役社長 デビット・ベネット氏は、「2020年はコロナの年だった。本当に多くのことが変わってしまったが、その中でもレノボはテレワーク環境を提供するなど社会の変化をサポートしてきた。そして、2021年はレノボ自身が大きく変わる年になる」と述べた。

レノボ・ジャパン 代表取締役社長 デビット・ベネット氏

 昨年の業績は非常に好調で、2020/21年 第3四半期(2020年10月~12月)は、売上、税引き前利益(PTI)、純利益(Not Income)のすべての面において、過去最高を記録している。また、国内法人向けPC市場(2020年4月~12月通期)において、日本法人設立以来初のレノボブランド単独での「シェアNo.1」も達成している。

2020年10月~12月には、売上、税引き前利益、純利益が過去最高を記録

 この業績の要因としてベネット氏は、「テレワーク先進企業として市場の変化にいち早く反応したこと」および「GIGAスクールなどの学校向けソリューション販売」にあると分析している。

好調の要因はテレワーク需要とGIGAスクール

 レノボが企業のテレワークを迅速にサポートできる背景として、ベネット氏は「レノボは2015年には無制限のテレワーク制度を開始しており、さまざまな準備ができていた。ほかの企業に先駆けてさまざまなノウハウを持っていた」と説明する。

 1回目の緊急事態宣言に先立ち、レノボでは2020年3月には東京の秋葉原にある本社オフィスの勤務(在籍率)は14%にまで抑えられ、同年5月には2%、さらに2回目の緊急事態宣言の開始時には3%という低い水準をキープしている。また、こうした経験をもとに、レノボはテレワークスタートガイドの無料配布し、中堅・中小企業向けにテレワーク用のノートPCを無料でレンタルするといった社会貢献活動を実施している。

以前からテレワークに取り組んでいたレノボは、コロナ禍のテレワーク需要を迅速にサポート

 テレワークをはじめとする働き方の変革にレノボが積極的に取り組んできたのは、それが企業を強くするという信念に基づいているという。レノボのテレワークはグローバルスケールで導入されている。例えば「Global Future Leadership Program」の取り組みでは、グローバルなレノボの幹部を世界中で採用している。日本でも東京大学や京都大学などから応募があり、これまで9名の幹部候補が採用されたとのこと。

 レノボの文化であるダイバーシティ経営を支えるのも、「Work Anywhere」を実現するテレワークだ。14人のエグゼクティブは5つの異なる国籍を持ち、世界中から経営に参加している。1カ所の本社がすべてを決めるのではなく、重要な本社機能が地域に分散している。さらに日本のような日本のような現地法人の97%が現地採用であり、地域のことは地域で意思決定する。なお、ベネット氏自身も現地採用であるという。

「Global Future Leadership Program」では、グローバルなレノボの幹部を世界中で採用している
テレワークは、レノボのダイバーシティ経営を支えている

レノボが提供する「サービス」とは

 2021年の事業戦略として、レノボはハードウェアに加えて、PCやサーバーをスムーズに導入するための「サービス」および、日々の運用を支える「サポート」を強化していくという。

 ベネット氏は、「ハードウェアだけでなく、サービスに本気で取り組むことは、レノボのワールドワイドの方針」と述べ、PCなどのデバイスを販売している「Intelligent Device Group」、サーバー製品を販売している「Infrastructure Solutions Group」に加え、4月からはサービス事業に特化した「Solutions & Service Group(SSG)」を新設することを明らかにしている。

 また、すでに2020/21年 第3四半期の段階で、サービスの売上は前年度比で35%増、レノボ全体に対する売上比率も8%となっている。

サービス事業に特化した「Solutions & Service Group(SSG)」を新設
2020/21年 第3四半期(2020年10~12月期)の段階で、サービスの売上は前年度比で35%増、レノボ全体に対する売上比率も8%

 レノボがサービスに注力する背景としてベネット氏は、「コロナ禍によって働く場所は多様化し、特にジェネレーションZと呼ばれるような若い世代では、テレワークが当たり前だと思うようになっていく。また、DXの導入や展開を加速するため、これまで以上に迅速な意思決定が求められるようになる。こうした企業の課題に対応するには、レノボ自身もハードウェアを提供するだけの企業ではいられない」と説明した。

レノボがサービスに注力する背景

 具体的なサービスの施策については、執行役員でサービス事業部サービスセールス&マーケティング本部統括本部長の上村省吾氏が、「プロテクションサービス」「開発部門と連携した計画サービス」「生産拠点での設定サービス」「国内対応による運用サポート」「情報資産の廃棄とリカバリーサービス」「現用設備の保守と連動した新規展開サービス」という6つを挙げた。

 「国内開発部門などの知見を生かし、顧客のIT推進計画の立案を支援する計画サービスや、これまで以上に拡充した国内対応による運用サポート、保守や修理を国内で行っている利点を生かして、導入後のアセット管理、代替機の交換、マイグレーションなどによって、ライフサイクル全体をカバーするサービスを提供する」(上村氏)。

レノボ・ジャパン 執行役員 サービス事業部サービスセールス&マーケティング本部統括本部長 上村省吾氏
レノボのサービス施策は、「プロテクションサービス」「開発部門と連携した計画サービス」「生産拠点での設定サービス」「国内対応による運用サポート」「情報資産の廃棄とリカバリーサービス」「現用設備の保守と連動した新規展開サービス」の6つ

 ITに対するニーズの変化について上村氏は、「共通のトピックスは、Modern ITの積極的な活用。先進的なModern ITが職場に導入されていることによって、トップタレントは非常に心地よい形で仕事を進めていくことが可能になり、新しいアウトレットやイノベーションが具現化できる。また、先進テクノロジーに興味が無い社員やビジネスパートナーにも、フレンドリーなユーザーインターフェイスを提供することで生産性が高まっていく」と説明した。

Modern ITの積極的な活用

 そんなモダンITの活用施策としては、マイクロソフトの「モダンワークプレイス」を活用するさまざまなメニューを用意しているという。ベストプラクティスを活用して運用方法を検討する「コンサルティング」、デジタルデバイスの展開・運用の詳細なアセスメントを実施する「IT環境調査」、Microsoft 365などを活用して生産性やコラボレーションを高める「生産性とコラボレーション」、プロジェクトマネジメントによるシームレスな対応と変更管理の「ITサービスの移行」、エンドポイントデバイスのセキュリティ管理やソフトウェアスタック管理の「マネージドサービス」などだ。

マイクロソフトの「モダンワークプレイス」を活用するメニューを提供

 また、マイクロソフトのテクノロジーだけではなく、レノボの独自製品やサービス、あるいはサードパーティー製品を組み合わせて提供する「レノボスマートフリートサービス」も用意されている。最近ではレノボ以外のPCを導入していても、「Any Windows PC」としてレノボ製品と併せてサポートするという提案や事例が増えているという。

レノボの独自製品やサービス、サードパーティー製品を組み合わせて提供する「レノボスマートフリートサービス」

 現在最も問い合わせの多いサービスは、Windows Autopilot機能によって、PCの初期設定、リセット、再活用をシンプルな方法で展開する「Zero Touch Deployment」だという。また、レノボが提供する「Lenovo's Ready to Provision(RTP+)」を併用し、ダウンタイムやネットワークトラフィックを抑制することも可能になっている。

Windows Autopilotで、PCの初期設定、リセット、再活用をシンプルな方法で展開する「Zero Touch Deployment」

 さらに、2021年2月には「レノボ・ジャパンカスタマー・フルフィルメント・サービス(CFS)」の稼働を開始している。NECパーソナルコンピュータ群馬事業場内に開設しており、世界11カ所に展開予定となっている。グローバル連携し、自動化作業ツールを含むベストプラクティスの共有を推進し、個社プロファイル、OS情報の一元管理にも対応する。また、タギングなど物理キッティングへの個別要件にも対応する。

レノボ・ジャパンカスタマー・フルフィルメント・サービス(CFS)

働き方の新常識にスマートなテクノロジーで貢献する

 法人ビジネスを担当する 執行役員 副社長の安田稔氏は、「ニューノーマルな時代をスマートなテクノロジーで支えたいという思いから、レノボでは『スマートノーマル』という表現を使っている。2020年は変化と対応が求められた年だった。テレワークが当たり前となり、社員同士だけではなく顧客ともオンラインで会議をするようになった。また、テレワークにおける社員の評価基準や雇用方法を見直す企業も多かったと聞いている。そして2021年は、これらのことが当たり前のこととして定着させ、未来の成長に向かって『再起動』する重要な1年になる。レノボでは、スマートノーマルの社会をインテリジェント・トランスフォーメーションで支えていきたいと考えている」と述べた。

レノボ・ジャパン 執行役員 副社長 安田稔氏
“働き方”の常識を『再起動』

 インテリジェント・トランスフォーメーションは、それぞれの働き方に最適な「Smarter Devices」、臨場感と質の高いコラボレーションを実現する「Smarter Collaboration」、快適なオフィス環境の構築と可視化を行う「Smarter Infrastructure」という3つのスマートテクノロジーで構成されている。

インテリジェント・トランスフォーメーションを実現する「Smarter Devices」「Smarter Collaboration」「Smarter Infrastructure」

 Smarter Devicesでは、「ThinkPad X1 FOLD」「ThinkPad X1 Nano」「ThinkPad X1 Titanium」といった5G対応した製品を紹介し、「これからは“つながりの質”が重視されるようになる。高速で低遅延という5Gの世界が発展することで、快適なコラボレーション環境が実現する」(安田氏)。

Smarter Devices

 Smarter Collaborationについては、「Microsoft Teams」「Zoom」「Google Meet」といったオンライン会議のツールを搭載した製品ラインアップを拡充していくという。「これまでは比較的小さな会議室を対象としてきたが、今後は中規模や大規模な会議室を対象とする製品も提供していく。“臨場感”と質の高いコラボレーションを実現するため、AI搭載カメラ『ThinkSmart Cam』や、スピーカー内蔵の『ThinkSmart Bar』といった製品も日本市場に投入していく予定となっている」(安田氏)。

Smarter Collaboration

 Smarter Infrastructureとしては、2018年に立ち上げたIoTソリューションブランドである「ThinkIoT」を紹介。さらにエッジコンピューターの新製品として、稼働環境をマイナス20度から60度までに拡張した第2世代「ThinkEdge SE30」と、IP50対応でAI関連デバイスの処理にも最適化した上位モデルの「ThinkEdge SE50」を国内に投入することを明らかにしている。

 「クラウドの普及と同時に、エッジ領域での処理も欠かせない重要なものになってきている。2025年にはAI搭載ハードウェアの28%がエッジデバイスになると予想されている」(安田氏)。

Smarter Infrastructureとして、「ThinkEdge SE30」と「ThinkEdge SE50」を国内市場に投入

インテリジェントな変革を支えるデータセンター事業

 レノボのデータセンター事業を展開するレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ(LES) 代表取締役社長のジョン・ロボトム氏は、「最も信頼されるデータ・センター・パートナーとして、お客さまのインテリジェントな変革に貢献することをミッションとしている」と述べた。

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ 代表取締役社長のジョン・ロボトム氏

 ワークロードの最適化という観点からは、IntelだけではなくAMDのプロセッサを搭載したサーバー製品が、241のワークロードパフォーマンスで世界記録を保持していることを紹介している。

 また、Lenovo ThinkSystemサーバーは、世界22カ国1200社以上の企業を対象にした調査において、最小のダウンタイムを達成したという。さらに、さらに、スーパーコンピューターの性能ランキングにおいても、TOP500のうちレノボ製品は182台採用されているとした。

241のワークロードパフォーマンスで世界記録を保持

 LESは“データセンター事業”を担当する企業ではあるものの、エッジ向けのサーバー製品として「ThinkSystem SE350」、Nutanix社のソフトウェアを搭載したHCI「Think Agile HX1021」、マイクロソフトの「Azure Stack」を搭載したHCI「ThinkAgile MX1020 Certified Node」なども展開している。こうしたデータセンター外に設置される製品についてロボトム氏は、「IoTの普及と高度化によって、店舗や現場において膨大なセンサーデータ処理のニーズが生まれている」と説明した。

エッジ向けのサーバー製品「ThinkSystem SE350」、Nutanixのソフトウェアを搭載したHCI「Think Agile HX1021」、マイクロソフトの「Azure Stack」を搭載したHCI「ThinkAgile MX1020 Certified Node」

 さらに、データセンター事業においても、サービス強化は事業戦略のひとつとなっている。ロボトム氏は、「Lenovo Professional Serviceは、全世界で170%成長したが、単に業績だけではなく、お客さまのインテリジェントなトランスフォーメーションに貢献するために重要」と述べる。

 Lenovo Professional Serviceは、経験豊富な専門家がビジネスニーズに適した戦略的なソリューションを設計する「Solution Services」、生産性を最大化する「Implementation Services」、24時間IT投資を保護する「Support Services」で構成されており、エンド・ツー・エンドで顧客をサポートできるという。

Lenovo Professional Service

 また、ロボトム氏は、サブスクリプションモデルである「Lenovo TruScale」も紹介し、「日本でもスマートインフラのひとつとして提供していく」と説明した。

Lenovo TruScale