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レノボ、Edge ITの可能性を広げる専用端末を投入 ThinkEdgeブランドとして販売へ

 レノボ・ジャパン合同会社(以下、レノボ)は6日、エッジコンピューティング専用端末「ThinkEdge SE30」「同 SE50」を販売開始すると発表した。

 レノボでは機械学習やA推論I処理など、Edge IT領域でハイパフォーマンスの端末ニーズが高まるとの見方から、Edge IT向け製品のラインアップを拡充し、「ThinkEdge」というブランド名で販売していく。

エッジ向けにThinkEdgeを投入する
ThinkEdge SE30

 レノボの執行役員副社長 安田稔氏は、「IoT関連で生み出されるデータ量は増大し、クラウドとエッジの役割を分ける分業はさらに加速すると考えられる。今回、新ブランドを立ち上げたのは、これからIoTマーケットが広がる中、レノボとしてのオポチュニティを確保していくことにつながる。また、レノボのスケールメリットを十分に生かせる領域であり、コンピューティングパワーをあらゆる業種・領域に広げていくという当社の狙いとも合致している」と新ブランド立ち上げの狙いを説明した。

クラウドとEdge IT の分業はさらに加速する

ハイパフォーマンスエッジ端末「ThinkEdge」2製品を発売

 レノボが今回発売したThinkEdge SE30/SE50のうち、SE30は、マイナス20℃から60℃という幅広い稼働温度に対応するなど、過酷な環境での利用にも適した小型のEdge IoT端末。CPUはインテル Core i5 vProを採用し、16GBメモリ、2TBストレージを搭載する。

 本体寸法は約179×51.5×88mm、本体質量は最大構成時で約1.02kg。価格は15万8400円から。

 一方のSE50は、VPUを搭載可能で、AI関連デバイスの処理にも最適なハイパフォーマンスエッジ端末。CPUはインテル Core i7 vProを採用し、32GBメモリ、2TBストレージを搭載する。またVPUには第3世代インテル Movidius VPUを搭載可能だ。

 本体寸法は約179×72×182.9mm、本体質量は最大構成時で約3.21kg。価格は22万4400円から。

 両製品に共通する特徴として、Edge IT領域専用製品であることから、オフィス内だけでなく工場など過酷な環境での利用を想定し、幅広い稼働温度を考慮した設計であること、場所を選ばず設置できる柔軟性を持ったデザインであること、Windows 10 Enterprise LTSC/Ubuntuに対応し、利用できるOSが豊富であること、などが挙げられる。

 「両製品とも、過酷な環境を想定した堅牢性、信頼性を持っている。DINレール、VESA規格に準拠したオプション製品も豊富に用意し、さまざまな場所に設置することに対応した製品だ」(レノボ 製品担当 賈新氏)。

共通する特徴

 クラウドとの連携を行う際に必須となるネットワーク接続性も考慮されており、ThinkEdge SE30は、LTEに加え5Gモジュールを搭載可能となっている。さらに両製品とも、IEEE802.11acの無線LANに対応。SE30は2ポート、SE50は最大6ポートのRJ-45ポートも搭載可能だ。

 このほか、さまざまな機器との接続を想定し、幅広いインターフェイスを搭載できる点も特徴で、RJ-45、PoE、RS-232C、DI/DO、DC-INに加え、CANとDIDOにも対応している。

さまざまなEdge IoTデバイスとの接続が考慮されたインターフェイス

エッジIoTビジネスを手掛ける3社が登壇

 今回の発表会では、「Edge IoT製品は、パートナーとの連携が不可欠」との方針から、クラウドを提供する日本マイクロソフト、連携ソフトを提供するアステリア、インテグレーションサービスを提供する岡谷エレクトロニクスの3社が登壇した。

 日本マイクロソフトは、「クラウドの取り組みが進化する中、クラウドのパワーと応答性に優れたエッジデバイスを組み合わせることで、それぞれのメリットを生かしたソリューションが実現する。また、エッジの進化によりAIが組み込まれたデバイスが増加する見込みであることから、AIソリューションを加速するAzure Applied AI Servicesの提供を始めた。サービスのひとつであるAzure Video Analyzerは、ビデオインサイトの管理と収集を行うが、従来は数カ月かかっていた構築を数日で済ませることができる」(日本マイクロソフト IoT & MR 営業本部 技術営業部 IoTテクニカルスペシャリストの平井健裕氏)とし、クラウドとエッジ、さらにエッジAIとの連携のための環境を整えていると説明する。

 また、従来はLinuxマシンが必要だったAI環境をWindowsマシンで完結できるようにしたEdge for Linux on Windows(EFLOW)、エッジデバイスにも対応したフルマネージドのIoTプラットフォームAzure IoT Centralなどもそろえているとのこと。

 この分野でのレノボとの協業も2019年から進めているが、新製品はAzure認定デバイスとしてカタログにも表記しているという。

Edge for Linux on Windows
Azure認定デバイスのプログラム

 2社目のアステリアは、AI/IoT統合エッジプラットフォーム「Gravio」を提供している。Gravioは、ノーコードで迅速にAI/IoTを統合利用可能なミドルウェアで、用途ごとに画像認識AIを選んで利用できる。収集可能なデータとしては、温度、湿度、大気圧、人感、ドアの開閉、プッシュボタン操作、距離などのほか、AIを活用したカメラによる顔認証、カメラによる人の動き、マスク着用の有無などがあるとした。

 さらに利用者側が短期間に利用開始できるよう、ノーコードでの開発、センサーの貸し出しといったサービスも行っている。「Gravioを導入することで、ワンストップでAI/IoT環境が整備できるような世界実現を目指している」(アステリア グローバルGravio事業部 事業部長の垂見智真氏)。

 実はレノボの会議室にもGravioを活用した会議室の利用最適化を実現するソリューションが導入されるなど、両社の連携が始まっている。

 今回の新製品発売により、ThinkEdgeシリーズにGravioを導入するだけで、最先端のエッジ技術活用が可能になるとしており、各センサーの情報とカメラ画像に基づく推論情報(=AI)とIoTをエッジ側で統合し、高いシステム接続性によるクラウドとローカルを最適活用した、ハイブリッドなシステムが実現すると説明した。

スマートオフィスにおけるエッジの利用
ThinkEdgeシリーズ+Gravioでできること

 また岡谷エレクトロニクスは、半導体をはじめとした電子部品、システム製品の販売とサポートを行っている。レノボをはじめ、今回登壇したマイクロソフト、アステリアの製品も販売しており、「インテグレーションなど、足りないピースを提供するのが当社の役割」(岡谷エレクトロニクス テクノロジー本部 ビジネス推進部 部長の住田克也氏)。

 なお、エッジAIはハイスペックなコンピュータが必須となるが、ハイスペックマシンはエッジとして設置するにはサイズが大きく、24時間365日稼働で利用するにはファンの故障といった課題もある。一方、産業用コンピュータを利用する場合には、スペックが十分ではない。そこで今回の新製品は、これまでの課題を解決するマシンとなるのではないかと期待しているとのことだ。