特別企画

テレワークを実現しにくかった業種にも対応できる――、レノボがテレワーク環境構築の実績とノウハウをアピール

LESのジョン・ロボトム社長に聞く

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が社内に与えた影響は非常に大きく、感染拡大を防ぐため、多くの企業においてテレワークを導入の流れが加速することとなった。本来であれば、もっとゆるやかに変化していくと思われていた働き方改革は、この社会情勢によって、なかば強制に近い形で推進していかなければならない状況となっている。

 一方で、このような社会情勢は、テクノロジーベンダーにとっても、自分たちが提供する製品やサービスの真価が問われる機会となっている。そんなベンダーのひとつでもあるレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ(以下、LES)は、サーバーやストレージといったエンタープライズ市場向けのビジネスを展開している。

 代表取締役社長のジョン・ロボトム氏は、「テクノロジーを提供する側として、レノボは、困難な状況において企業のDXを支えていく必要があります。お客さまごとに求めるものは異なっていますが、どんなソリューションを提供したらいいのかを、お客さまと一緒になって考えることが重要だと考えています」と語る。

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ 代表取締役社長のジョン・ロボトム氏

リモートワークの導入実績を多く持つレノボへの期待

 総務省の「通信利用動向調査」(令和元年調査:2020年5月29日公表)によれば、テレワークを導入している企業は20.2%であり、今後具体的な導入予定がある企業の9.4%を加えても29.6%である。つまり、昨年の段階では全体の3割に満たない企業しか、テレワークに対応できていないということになる。しかし、COVID-19の感染拡大に伴って、テレワークの導入を余儀なくされた残り7割の企業は、すでに豊富な導入実績を持つベンダーを頼ることになった。

昨年のテレワーク導入企業は3割にとどまっていた。COVID-19の感染拡大の影響により、残り7割の企業が急ぎテレワークを導入する必要に迫られている

 もともとLESは、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するため、テレワークをはじめとする、さまざまなソリューションを展開していたテクノロジーベンダーである。特にハイパーコンバージドインフラ(HCI)と相性の良い仮想デスクトップ環境(VDI:Virtual Desktop Infrastructure)を、さまざまな業種で展開してきた実績を持っている。

 そのため、すぐにでもテレワークを実現したい企業からの相談がLESにも相次いでいるという。今年1月から6月に顧客からVDIに関する相談を受けた件数は、昨年の同じ時期との比較で130%の伸びを示しており、その多くは中堅・中小規模からであるとのこと。

 ソリューション・アライアンス本部長 早川哲郎氏は、「大企業の多くは、何らかの形でテレワークを実現する仕組みをすでに用意していますが、中堅・中小企業ではまだ十分ではないからです」と、この理由を説明した。また大企業であっても、準備が万全ではないと相談されるケースもあるという。

2020年前半、VDIへの相談が前年の同じ時期と比較して130%の伸びを示す

テレワーク導入に向けたワークショップも開催

 現在、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の観点からテレワークを導入したいと考えている企業は多い。しかし、LESではCOVID-19の感染が拡大する以前より、働き方改革を推進するための、テレワーク導入を支援してきた。

 テレワークの導入には、テクノロジー以外にも解決しなければならないさまざまな課題がある。そのため、LESはソリューションの提供はもちろん、テレワーク導入を検討する担当者向けのワークショップ開催や、テレワークスタートガイドの配布するなどの活動を積極的に行っている。

 実際にテレワークスタートガイドを見てみると、テレワークでの働き方、労働法規、業務評価、従業員の意識改革などの記述が多く、経営やマネジメントを担当するビジネス層に向けた内容であることがわかる。

テレワークスタートガイドの表紙と目次。主にビジネス層に向けた内容となっている

 「これまでにも大きな流れとして、ワークライフバランスを念頭に、リモートワークやテレワークを導入したいという動きはありました。私はLESにきて1年半ですが、その前にいたマイクロソフトでも、企業の働き方改革に向けたさまざまな取り組みを行っていました。ただ、COVID-19という社会的なプレッシャーにより、すぐにテレワークを実現できるテクノロジーとしてVDIへのデマンド(要求・需要)が高まっています。準備していたつもりだったが、まだまだ足りていないというお客さまも多いのです。それは必ずしもテクノロジーの課題だけではありません。どうしたらうまく導入できるのか、どうしたらイネーブル(有効化)できるのかというのが現在の大きなテーマになっています」(ロボトム氏)。

『テレワークに向かない』業務にも対応可能

 テレワーク導入を検討する際、最初の技術的な課題となるのは、「どのアプリケーションを利用するのか」であるといえる。中には、「すべてSaaSで完結するので、大きな投資は必要ない」という企業もあるかもしれないが、多くの場合は社内の基幹システムを利用しなければならず、業種や業務によっては専用のアプリケーションを利用しなければ仕事にならないこともある。

 またテレワークを実現する方式には、オンプレミスのサーバー上に仮想デスクトップ環境を構築してリモートから操作するVDI、同じくオンプレミスのサーバーを複数のユーザーで共有するリモートデスクトップ(RDS)、クラウド上にある仮想デスクトップ環境を操作するDaaS、インターネットを専用線のように利用して企業ネットワークに接続するVPN(Virtual Private Network)などがある。

 それぞれの方式にはメリット/デメリットがあり、どの方式が望ましいのかを一概に特定することは難しい。しかし、どのアプリケーションを、どんなポリシーで運用するのかといった要件によって、利用できる方式にも制限が出る。

テレワーク実現方式の比較

 建設業や製造業における設計業務では、3D CADなど専用の環境を利用することが多いため、RDSやVPNでの対応が難しく、これまでテレワークを実現しにくい業種といわれていた。しかしLESでは、HCIとVDIを組み合わせることで、3D CADやCGに対応するGPUを仮想化し、これらの業種においてもテレワーク環境を提供した実績を持っている。

 「建設や製造の現場においても、リモートワークの取り組みが増えています。VDIはVPNと比べて、非常に少ないネットワーク帯域で対応できるソリューションです。一般的に、Officeアプリケーションを使うような用途であれば300kbps程度で十分ですし、3D CADや大きなモニターに複数の画面が欲しいという用途であっても、1.5Mbps~3Mbpsくらいあれば対応できます」(早川氏)。

 実際に導入する前には、何人のユーザーが、どの程度の帯域幅で利用したいか、あるいは物理的な距離が離れているのでレイテンシはどの程度になるかといったことも、LESの検証設備などを使ってシミュレートできるという。

 「例えば『どのくらいのレイテンシを入れた際に、3D CADの画面が毎秒何フレーム表示できるか』などの実験を行ってから導入することが可能です」(早川氏)。

企業のDXをテレワーク実現だけで終わらせるべきではない

 また、たまたまVDIの特性がテレワークの需要にマッチしたために注目されているが、オフィスで利用する環境としての導入事例も少なくない。特にリモートのデバイスにデータを残すことがなくセキュアであるため、金融業界やヘルスケア業界での導入事例も多い。

 「HCIとVDIの組み合わせは、Nutanix社によって広く知られてるようになりました。LESは早い時期からNutanix社と協業し、HCIとVDIを組み合わせたソリューションを、さまざまな業種で展開しています。その実績がVDIの安心感につながっています」(ロボトム氏)。

 しかし、HCIとVDIの組み合わせは導入コストが高いことから、二の足を踏む企業も少なくない。ロボトム氏は、ビジネスリーダーやITリーダーは、テレワークという喫緊の課題への対応だけではなく、さまざまな観点から企業のIT戦略をもっと積極的に検討すべきであると主張する。

 「現在COVID-19の影響から、すぐにテレワークに対応したいという市場のデマンドが高まり、VDIが注目されています。しかし、本来IT戦略とは、企業のDXを推進するため、ワークライフバランス、生産性向上、BCPなどさまざまな観点から、ビジネスリーダーやITリーダーが検討すべきです。テレワークの実現だけで終わらせるべきではありません。COVID-19の拡大は社会にとって大変不幸な出来事ですが、この事態が収束した後に、以前の状態へと戻るのはもったいない。この出来事をきっかけに、HCIとVDIによって実現できるさまざまな業務、あるいはセキュリティ性能の確保や運用コストの削減など、総合的な視点で検討してください」(ロボトム氏)。

 またビジネスの視点から、データセンターモダナイゼーションに取り組むことも重要であるとロボトム氏は述べている。

 「中長期的なビジネスの視点からアプリケーションを再検討し、パブリッククラウドに移行するもの、オンプレミスに残すものに分けてハイブリッドクラウドを実現する計画を立てる必要があります。すべてのアプリケーションをクラウドにシフトすることが最善であるとは考えていません。それよりも、データセンターをモダナイゼーションし、柔軟に対応可能なハイブリッドクラウドを実現するべきです。実際、海外ではクラウドに移行したアプリケーションを、再びオンプレミスに戻すといった動きもあります。LESはお客さまのデータセンターモダナイゼーションを、今後も積極的に支援していきます」(ロボトム氏)。