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サイボウズが大企業でのkintone導入事例を説明、みずほ信託銀行やZOZOが採用
2021年2月22日 06:00
サイボウズ株式会社は19日、報道関係者向けに実施している説明会「Media Meetup」のVol.5を開催。大企業がkintoneを導入し、現場がローコード開発に取り組んでいる事例を紹介した。
kintoneは1万8000社が利用しているが、規模の小さな企業だけでなく大企業での利用も進んでいるという。「kintoneは数人から数十人規模の少人数で利用されてきたが、近年、利用規模の大型化が進んでいる。東証一部上場企業の5社に1社が導入している」(サイボウズ 営業本部営業戦略部 副部長の木地谷健介氏)という。
説明会では、利用規模の大きな導入事例の中から、みずほ信託銀行、ZOZOの導入事例を紹介。2社共通の特徴として「現場が主体となって従来はデジタル化されていなかった部分をデジタル化し、業務改革を進めている」(木地谷氏)と説明した。
ローコード開発が大きな注目を浴びている要因は?
サイボウズでは、ローコード開発が大きな注目を浴びている要因を次のように説明した。
「キーワードは不確実。以前は今後のビジネスを予測することが可能だったが、現在は不確実の時代。ゴールが見えない。ビジネスの変化に合わせて刻々と変わる現場ニーズに合わせるために、新しい取り組みを支える、柔軟に変化できるシステムが必要となっている」(木地谷氏)。
サイボウズが実施した、従業員500人以上の企業に対するアンケート調査では、ローコードプラットフォーム導入の目的として、ビジネス環境の変化への対応を挙げることが多かった。
「これまでIT化は効率化のためと言われてきたが、変化への対応を求める声が多くなっている。変化に対応するためにローコードプラットフォームを導入した場合、大いに効果あり、多少効果ありと答えた企業が9割を占めた」(木地谷氏)。
もうひとつの要因として、多くの企業で依然としてデジタル化されていない領域が多く残り、企業文化を変革するDXが進んでいない企業が多いことを挙げている。現在までデジタル化されていない部分は、少量、多種の情報共有ニーズがあるものが多く、すべてをITシステム部門だけでシステム化するには体制的に難しい。
「現場から上がってくるすべての要望をITシステム部門だけでかなえるには無理がある。そこで役割の再定義を行い、現場が欲しいものの開発は業務部門が行い、ITシステム部門はそれを支援する。従来は、業務部門からの一方的な指示をIT部門が従う関係だったが、それを変えていく」(木地谷氏)。
現場の業務部門がローコード開発に取り組む場合には、「社内で業務改善や業務フロー見直しを進めてきた部署が担当することが適している。どう業務フローを変えていくべきかという視点を持ってローコード開発に取り組むと、成果につながりやすい」(木地谷氏)という。
こうした要素を実践し、成果を上げてきるのが今回事例として紹介されたみずほ信託銀行とZOZOだ。
みずほ信託銀行:担当者約1700名の情報共有基盤としてkintoneを採用
みずほ信託銀行は、本部と営業店の担当者約1700名の情報共有基盤としてkintoneを採用した。開発はリテール・事業法人部門営業推進室が担当し、kintoneアプリの作成、マニュアル作成などを行った。
実施したのは、従来は紙を使って行っていた報告などの作業をデジタル化。PCもしくはタブレットを活用して報告を受け取ることができる体制を作ったことで、タイムリーなアクセスが実現され、記録・報告等の効率化が進展した。
また、登録データをリアルタイムに集計できるようになったことで、営業店マネジメントや本部での集計・分析の負荷軽減・スピードアップも実現した。さらに2020年、新型コロナウイルスの影響でのリモートワークがスタートすると、支給されたタブレット上でkintoneを活用することにより、情報活用が実現。デジタル化を進めたことで、変化に対応しやすい体制ができあがったという。
また、みずほ信託銀行では、kintoneとRPAシステム「UiPath」の連携も行い、他システムから情報を取得しkintoneへ連携する等、高度な利用も実現されている。今後は、行内事務の効率化に向けたアプリの展開等、さらなるデジタル化の推進も検討しているとした。
ZOZO:グループ会社や取引先との情報管理のデジタル化を実現
もうひとつの事例は、ZOZOでのkintone導入だ。ZOZOでは事業成長に伴い、既存のワークフローが企業実態に合わないものとなっていた。従来のワークフローではカバーしきれない申請書類、業務依頼ではデジタル化されていない領域も多数残っていた。
そこでkintoneを導入し、ワークフローで人事書届、稟議(りんぎ)書、各種申請業務を改善し、グループ会社や取引先との情報管理のデジタル化を実現した。クラウドベースであることから、ZOZO社内にとどまらずグループ会社、取引先との間のDXを進められたという。情報を閲覧できるデバイスも、スマートフォン、タブレットなどマルチデバイス化され、必要な時に必要な情報を確認できるようになった。さらに基幹システム、他社サービスとの連携によって利用場面を拡張している。
他社サービスとの連携例は、社内の承認フローを経た契約書類の管理をkintoneで行い、CloudSignを活用して社外との書類の確認、合意プロセスも含めた電子化を実現した。
システム開発にあたっては、「グループ全体でITシステム内製開発できる力を高める」との方針を打ち立てた。kintoneによるローコード開発にあたったのは、各部の業務改善支援、システム企画、開発を担当してきた総務部門。基幹システムとの連携のようにシステムに関する専門知識が必要な部分は、グループ会社であるZOZOテクノロジーズの技術スタッフがアドバイスやサポートを行うことで実現している。
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今回の2つの事例について木地谷氏は、「従来、ITシステム部門主導での開発では難しかった少量多種の情報管理を、業務部門が主体となって内製によるデジタル化を実現している。ITシステム部門は業務部門での開発をサポートする技術スタッフを配置し、kintoneと既存システムとの連携、他社サービスとの連携を実現している。サイボウズではこうした業務部門とITシステム部門を支える取り組みを行い、サポートする体制を整えていく」と話した。
ちなみに、システム内製化を実践していくためのコツとしては、「将来的に大規模な開発を予定している場合でも、最初は小さなところから挑戦する。例えばあるチームで利用している表計算を使った業務をkintoneに切り替えるといったところからスタートし、それが成功することで、次の内製化を進める原動力となる」という。