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サイボウズ、2021年12月期業績はクラウド事業拡大で増収 連結売上高の81%がクラウド関連に

 サイボウズ株式会社は24日、2021年12月期決算、およびクラウド事業の概況とkintoneのビジネス展開について説明会を開催した。

 サイボウズの2021年12月期業績は、連結売上高が184億8900万円(前年比18.0%増)、営業利益が14億4100万円(同36.5%減)、経常利益が14億6800万円(同35.4%減)、当期純利益が5億5100万円(同61.6%減)となった。

サイボウズの2021年12月期業績詳細

 この結果について、サイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏は、「2021年12月期業績は、クラウド事業が好調に推移し売上高は約28億円増えた一方で、営業利益は約8億円減少した。利益が減った要因としては、クラウド事業の強化にともない、広告プロモーションに積極投資を行った。具体的には、製品の認知度向上を目的にkintoneのテレビCMを放映した。案件化への効果は数年程度かかると想定しているが、既存顧客への活用促進、kintoneのブランドイメージの醸成、販売パートナーなどのエコシステム活性化に期待している。また、採用活動では、学生や家族への認知度が高まったことで、テレビCMなどの広告プロモーションをきっかけに応募するケースが増加している」と説明した。

サイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏

 クラウド事業の概況については、「2011年にkintoneをリリースし、クラウドビジネスに転換してから10年が経過するが、クラウド関連の売上高は順調に成長を続けている。2021年12月期のクラウド関連売上は前年比26%増となり、連結売上高の81%をクラウド関連が占めている。また、周囲のパートナー・ユーザーとともにビジネスを拡大するエコシステム戦略の推進により、パートナー販売の売上高も年々増加しており、前期はクラウド関連売上のうちパートナー販売が60%に達した。さらに、パートナー支援プログラムをリニューアルし、クラウドに特化したプログラムに刷新。昨年12月末時点で、パートナー社数は約360社、連携サービス数は300以上となっている」と、エコシステム戦略によってパートナー販売が拡大していると強調した。

サイボウズの連結売上高推移(パッケージ/クラウド別)
エコシステムによるビジネス拡大

 製品別の導入実績は、昨年12月末時点で、「kintone」が2万3000社、「サイボウズOffice」が7万2000社、「サイボウズGaroon」が6400社、「Mailwise」が1万1800社となった。特に、kintoneでは、昨年、UI/UX改善や機能強化など、約70のアップデートを実施。サイボウズGaroonでは、パートナー企業から多数のプラグインがリリースされたことで、kintoneやMicrosoft 365との併用など使い方が広がった。また、kintoneとサイボウズGaroonがISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)のクラウドサービスリストに登録されたことで、行政機関が信頼できる安心安全なクラウドサービスの提供を加速している。

 kintoneの販売状況について青野氏は、「kintoneは、プログラミングの専門知識がなくても容易にシステムを構築できるため、『現場の人が主体の業務改善』を支援するツールとして利用が拡大している。実際に、kintoneの導入担当者は、非IT部門が93%を占めている。また、kintoneの月平均導入社数は550社で、東証一部上場企業の4社に1社がkintoneを導入している。エンタープライズ企業では、kintoneを活用し、IT/DX部門と事業部門の連携でスピーディーな業務システムの開発および業務改善に取り組んでいる。さらに、前期は自治体への導入も拡大し、2021年末時点での自治体導入数は140となった」と述べた。

kintoneの販売状況

 自治体への導入事例としては、東京都では医療従事者等向けの新型コロナワクチン接種の管理業務をはじめ、全庁的に活用しており、昨年8月に公表された「シン・トセイ加速化方針」の中でもkintoneの活用を明言している。神奈川県と広島市でも、新型コロナウイルス感染症対応業務でkintoneを採用。また、北九州市とは、kintoneを活用し全庁的なDX推進の実現するための連携協定を締結するなど幅広い活用が進んでいる。さらに、kintoneを活用したさまざまな成功事例やノウハウを自治体間でシェアできるように、自治体間をつなげるコミュニティ「Govtech kintone community」の運営を開始し、200自治体・500人を超える自治体職員が参加している。

自治体におけるkintoneの活用の広がり

 また、新たな販売パートナーチャネルの拡大として、地方銀行との連携も強化している。「現在、全国10行の地方銀行と協業しており、当社のパートナー企業を間に挟む連携協業も13行となっている。地方銀行によるコンサルティング実績としては、実働約4年間で、約300社にkintoneを中心としたサイボウズ製品を導入している。そのなか当社では、地方銀行によるkintoneのコンサルティング提案スキル向上や、各銀行の提案方法・提案スキル共有のためのコミュニティを運営してきた。今後もIT活用提案を通じて、地方中小企業の生産性向上や働きやすい企業創生を実現していく」(青野氏)という。

地方銀行と連携したビジネスモデル

 グローバルの販売状況としては、2021年末時点で米国市場では680サブドメイン(前年比30.8%増)、中華圏市場では1190社(前年比7.2%増)、その他アジア市場では940社(前期比25.3%増)となり堅調に推移している。特に米国市場においては、aPaaS市場が盛況で競合企業が急増するなか、顧客の課題や現状業務に寄り添った提案や、中長期的にkintoneによる業務改善のフォローアップを実施するなど伴奏型サービスにより、顧客満足度を獲得している。また、東南アジア市場での売上が堅調に推移していることから、さらなる販売強化のため、今年3月に東南アジア初の営業拠点をマレーシアの首都クアラルンプールに開設する。2020年に開設したタイの駐在員事務所と連携を図り、東南アジア全域のユーザー数拡大を図っていく。

 2022年12月期の業績予想は、連結売上高が217億3000万円(前年比17.5%増)、営業利益が3億4500万円(同76.1%減)、経常利益が4億100万円(同72.7%減)、当期純利益は4億2900万円の赤字となる見込み。

サイボウズの連結業績推移

 青野氏は、「今期も引き続き、広告プロモーションなど認知向上施策に積極的に投資していく。また、ユーザー拡大を見据えて、昨年刷新した次世代クラウドサービス基盤『Neco』のサーバー機材の増設を行う予定。さらに、人材採用やオフィス拡充にも積極投資し、さらなるクラウドビジネス拡大を目指す」との考えを示した。