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ブイキューブが事業戦略を発表、“リアル+リモート”のハイブリッドでコミュニケーションを支援

 株式会社ブイキューブは18日、中期経営計画に基づく事業戦略発表会をオンラインで開催した。今後同社は「エンタープライズDX」「イベントDX」「サードプレイスDX」という3つの事業セグメントで展開していくという。

 ブイキューブ 代表取締役社長 CEOの間下直晃氏は、同社のミッションを「Evenな社会の実現」であると紹介し、「すべての人が結果ではなく、機会を平等に得られる社会。『子供がいるから仕事ができない』『地方では十分な医療が受けられない』といった機会の格差をテクノロジーでなくしていこうという思い」と説明した。

 これまでコミュニケーションは対面で行うことが前提だったが、リモートで会う非対面文化が急速に進展している。テレワークの普及は、移動時間からの解放、働き方・働く場所の自由度の拡大といったワークスタイル変革にもつながっている。こうした文化や事業環境の変化について間下氏は、「新型コロナウイルス感染症の拡大の前(Beforeコロナ)、テレワークは一部の先進的な企業における限定的な取り組みだったが、現在では多くの企業で当たり前の選択肢となった。遠隔コミュニケーションサービスは、必要不可欠な社会インフラになっている」と述べた。

 緊急事態宣言をきっかけに、社内会議やテレワークといった社内コミュニケーションのリモート化に取り組んだ企業の多くは、緊急事態宣言解除後の事業活動再開に向けた取り組みとして遠隔コミュニケーションサービスの活用を進めている。商談、採用面接、社内研修/イベントなどの社内利用の拡大にとどまらず、マーケティング活動などの社外コミュニケーション、あるいは教育、医療、エンタメといった分野におけるサービス提供のリモート化などだ。

遠隔コミュニケーションサービスを取り巻く事業環境の変化

 また、このように遠隔コミュニケーションサービスを活用することで、さまざまな有益性への気づきが生まれると間下氏は説明する。移動時間削減による生産性向上、経済合理性、採用地域・人材の多様化といったメリットを享受することができるようになるほか、リモートを前提とした新しいビジネスの創出、商圏や顧客接点の拡大につながっていく。

 間下氏は「Afterコロナのコミュニケーションは、TPOにあわせたハイブリッドなものになっていく。リアルの方が良いことはたくさんある。リアルで会うべきときにはリアルで、リモートを使うべきときはリモートを使う。5Gをはじめとする高速ネットワークやデバイスの普及もこの動きを後押しし、Evenな社会の実現につながっていく」と述べた。

Afterコロナのコミュニケーションは、リアルとリモートのハイブリッドなものとなっていく

 3つの事業セグメントである「エンタープライズDX」「イベントDX」「サードプレイスDX」についても、それぞれ個別に事業戦略を解説している。

3つの事業セグメント「エンタープライズDX」「イベントDX」「サードプレイスDX」

 エンタープライズDXは、Web会議のテクノロジーを利用したオンラインコミュニケーション事業だ。「V-CUBEミーティング」「V-CUBEコラボレーション」「V-CUBE Box」「V-CUBEボード」といった企業内外コミュニケーション製品を提供しているほか、Zoomなど他社ツールもリセラーとして販売している。

 ブイキューブといえばWeb会議システムのベンダーというイメージが強いが、間下氏は「Web会議そのものは無償サービスも多くコモディティ化が進んでいる。今後はユーザー数が増えても成長は限定的なものとなるため、メインで注力していく分野ではない」と説明。コロナ禍において市場が拡大したものの、今後は飽和が見込まれるWeb会議の領域は、キャッシュカウとして位置付け、最小限の投資で安定的収益を見込んでいる。その一方、映像配信や双方向コミュニケーション技術などを企業サービスに組み込むためのSDKによるビジネスを強化し、企業のDX推進に貢献する事業を拡大していくという。

エンタープライズDX事業。Web会議はコモディティ化が進み成長は限定的だが、SDK需要の急増が見込まれている

 SDKは、SNSやファンサービスといったエンタメ分野での利用が拡大しているほか、Chatworkなどほかの外部ツールにWeb会議機能を提供するといった用途でも利用されている。そのほかにも電子カルテやオンライン診療アプリと連携した遠隔診療、採用管理システムと連携したWeb面接、フィットネススクール、災害時に情報共有などを行う緊急対策ソリューション、スマートグラスなどのデバイスを活用して製造や建設の現場で利用するフィールドワークソリューションなどさまざまな分野での利用が見込まれている。

 間下氏は、「ZoomやTeamsなどのWeb会議を利用すれば良いと思われるかもしれないが、思いがけない壁にぶつかることがある。例えばヨガレッスンでは、先生と生徒はお互いに見えてほしい、生徒同士は見えてほしくないといったニーズがあった。Web会議ツールでは実現できないため、作りこみが必要だったが、SDKを使って数週間でできあがった」と述べている。また、今後のSDK需要の急増に対応すべく、営業や開発体制を強化し、さまざまな分野・業界に積極的に展開していくという。

Web会議のツールだけでは対応できないニーズにも、SDKを使って低コストに新たな仕組みを作りこむことができる

 イベントDXは、さまざまな分野におけるイベントをV-CUBEセミナーやEventInといったプロダクトによってリモート化し、運用設計、イベント当日のディレクションやログ解析といった運用支援を行う事業だ。単にプロダクトを提供するだけではなく、スタジオ提供やスタッフの派遣などイベント開催における包括的なサービスを提供する。

 間下氏は「現在非常に需要が高まっているが、プロフェッショナルなスタッフが足りずにお断りすることも多い」と述べる。急増する配信需要を確実に獲得するため、人的・物的リソースに対して積極的な投資を実施していくという。

イベントDX事業

 イベントの配信件数は、自粛期間に一時減少したものの、それ以降は急激に需要が増加している。2019年は2500回程度だったイベント配信件数だが、2020年は5000件以上を開催する予定となっており、2021年には15000件程度の開催を目指すという。

イベントDX事業の売上高計画、開催回数計画
イベント配信件数の推移

 サードプレイスDXでは、企業や公共向けにスマートワークブース「テレキューブ」を提供する。企業ニーズとしては、Web会議の増加や感染症対策の必要性から、遮音性のある個室会議スペースの需要が拡大しており、1人用~4人用まで幅広い選択肢を提供する。公共向けとしては、駅、大型商業施設、オフィスビル、マンションといった公共エリアにおけるインフラのひとつとして、個室ワーキングスペースを提供する。

サードプレイスDX事業

 コロナ禍によるテレワークニーズの高まりによって、テレキューブの利用率も大幅に増加している。間下氏は「緊急事態宣言以降は、ビジネスエリア、住宅エリアともに利用率が高まっている。2019年は400台程度の設置台数だったが、2020年には累計で2000台の設置台数となった。JR東日本では1000カ所の設置を目指しており、空港、マンション、オフィスビル、官公庁にも導入が始まっている」と説明した

コロナ禍によるテレワークニーズの高まりによって、利用率が大幅に増加。2020年には累計で2000台となった

 また、今後はテレキューブ内部での「遠隔医療相談」「VR海外旅行」などの付加価値アプリ/サービス実装や、予約管理・運営ソフトウェアインフラの横展開などサードプレイスインフラ整備の担い手としても事業を展開していくという。

テレキューブ内部での付加価値アプリ/サービスの実装、予約管理・運営インフラなどを展開していく

 ブイキューブでは、コミュニケーションのリモート化の急激な浸透を背景に高い成長を目指し、資本効率・株主還元を追求している。具体的な数値目標として、2020年の売上高は79億円となる見込みだが、2021年には115億円、2022年には153億円にまで成長することを目指す。また、現在Web会議を中心としたエンタープライズDXが売上高の多くを占めているが、今後はイベントDXが最大事業として拡大していくと予測している。なお、イベントDXによる利益増加を見込み、必要な人員とキャパシティを拡大しているという。

2022年には153億円の売上高を目指す
現在はWeb会議を中心としたエンタープライズDXが最大事業領域だが、今後はイベントDXにシフトしていくことが予想される
イベントDX事業による利益増加を見込み、必要な人員とキャパシティを拡大