ニュース
パナソニックのIoTソリューション「Vieureka」、新カメラ投入やパートナー施策強化を実施
オンライン記者説明会レポート
2020年4月2日 13:19
パナソニック株式会社は2日、IoTソリューション「Vieureka(ビューレカ)」プラットフォームの取り組みについて説明するとともに、プラットフォームに対応した高機能カメラ「VRK-C301」を発表した。説明はオンラインで行われ、パナソニックにとっては、これが初のオンライン会見となった。
画像データを有効に活用できるソリューション
Vieurekaプラットフォームは、本体でAIによるデータ処理が可能な「Vieurekaカメラ」と、カメラ上で実行されるアプリケーションを遠隔地から管理できるクラウドベースの「マネジメントソフトウェア」、アプリケーションを開発するための「ソフトウェア環境」で構成されたプラットフォームだ。
カメラに搭載したCPUで画像を解析できるのに加え、解析内容をリモートから入れ替えられる特徴を持っているため、用途に応じて解析機能を変更したり、新たな解析が必要になった場合には、機能を追加したり、といったことが可能になる。
アプリケーションは、パナソニックが小売店舗向けソリューションを開発。その他の業種向けアプリケーションは、パートナーが開発することになる。
すでに、小売店舗や建設現場、介護施設などで利用されており、サッポロドラッグストアー(サツドラ)では来客分析などにVieurekaを活用。約360坪の店舗内に設置した96台のカメラで撮影した映像から、来店客数や性別、年齢、滞留時間などの情報をもとに売り場到達率を定量化し、商品棚などのレイアウト変更に活用。販売機会の拡大につなげている。
また五洋建設では、名札につけたカラービットを利用した入退出管理に活用している。
パナソニック テクノロジー本部 事業開発室 エッジコンピューティングPFプロジェクト総括担当の宮崎秋弘氏は「人は位置や動き、かたち、大きさ、色、奥行きなど、くらしのなかの87%を視覚で理解している。また、全世界で年間約6600万台の監視カメラが新設されており、工場で利用されるセンシング用途などを含めると年間1億台ずつ増加している。Vieurekaは眼によるセンシングに着目し、画像データを有効に活用することを目指した。意味のあるデータを収集する画像解析、コストと性能を両立した分散処理、秩序を保証する個別管理を実現することで、“世界のいま”をデータ化して、人々のくらしをアップデートすることができる」などとした。
また「従来の監視カメラによるソリューションでは、1店舗あたり数百万円から数千万円の投資が必要であったが、Vieurekaプラットフォームでは10分の1から、2けた違う投資額で導入および運用ができる」と、コスト面でのメリットをアピールしている。
Vieureka事業では、今後3年で10億円規模のビジネスを目指す予定だ。
GPU搭載の新カメラ「VRK-C301」を投入
今回の発表では2つのポイントがある。
ひとつは、Vieurekaプラットフォームに対応した新たなカメラである「VRK-C301」の製品化である。高性能CPUを搭載したことで、ディープラーニング(深層学習)など高度な画像解析を活用したサービス展開が可能になるという。
従来の「VRK-C201」が4コアのCPUを搭載していたのに対して、6コアのCPUを搭載。新たにGPUを搭載することで、性能は3.3倍に向上させた。
「ディープラーニングAIへの対応強化のほか、同時検出数の増加、高解像度化、高フレームレート化が図れるため、複雑な機能や要求にも対応でき、適用範囲が広がる」(パナソニック テクノロジー本部 事業開発室 エッジコンピューティングPFプロジェクト主任技師の水上貴史氏)という。
また、87×87mm、幅35.6mm、重量260gの筐体のなかに、広角レンズに加えて、新たに対角64°の望遠レンズを搭載することで、離れた位置からの撮影、また来店客などにカメラを意識させない撮影を可能にした。さらに、天井つり下げや卓上設置、壁面設置に加え、実証実験などにも使いやすいような、磁石による容易な設置方法を採用。現場の状況にあわせて解析な不要なエリアの撮影を減らすために、角度を変えた設置も可能にした。
そのほか、USB3.0を搭載することで拡張性を向上させたほか、アプリケーション開発言語は、CおよびC++に加えて、Pythonにも対応している。
さらにAWS IoT GreengrassおよびAmazon SageMaker Neoを搭載したことで、「これまでは開発言語などに制約があったが、アプリケーション開発環境の充実により、さまざまなコミュニティへの広がりが想定される。Vieurekaプラットフォームを活用した新たなサービス創出の取り組みを加速させることができる。高精度の人物属性推定や動作検出などの複雑な画像解析技術の利用ニーズが増大し、ハードウェアの高性能化への需要が高まっていることに対応できる」と述べた。
すでに先行ユーザーで導入を開始しており、顔認証チェックインシステムや介護施設向け排せつ予測、白杖(はくじょう)や車いすの検知、製造業および建設業向け外観検査や作業動作解析、ヒューマンセンシング技術を用いた顧客満足度見える化などに活用されているとのこと。
これらのソリューションを開発および導入した企業からは、「高度な認識エンジンをエッジ側で動作させることができるようになった」「エッジでのディープラーニングによるAI処理が必須技術となっており、それに対応できるようになった」といった声が上がっているという。
パートナープログラムを強化
もうひとつが、パートナープログラムの強化だ。
同社は2019年4月から、Vieureka パートナープログラムを開始。これまでに「流通業」「製造業」「IoTデータ活用の事例」をテーマに、合計3回のパートナー向けセミナーを開催しているが、ハードウェアメーカー、AIエンジンメーカー、インテグレータなど、延べ134社238人が参加。住宅、店舗、病院、工場、オフィス、道路など、エンドユーザーのさまざまな利用シーンにおいて、共創するための体制づくりが進められているという。現在は36社のパートナー企業がVieurekaパートナーコミュニティに参加している。
「パートナー向けセミナーは回を追うごとに参加企業が増加している。パートナーにとっては、パナソニックが提供する開発環境を利用することで、ゼロからの開発は不要であること、2017年6月のサービス開始以来、53回に渡るアップデートを行い、ニーズにあわせた機能を提供していること、遠隔保守および遠隔管理により、現場に駆けつけることが不要で、出張コストがゼロで運用サポートができるというメリットがある。パートナー企業ではさまざまなアプリケーション開発に着手しており、これらが順次展開されることになる。今後も、パートナーコミュニティを拡大したい」(宮崎氏)としている。