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あいおいニッセイ同和損保、既存業務のデジタルシフトを目的にDynamics365とUiPathの導入プロジェクトを発表

 MD&ADインシュアランスグループのあいおいニッセイ同和損害保険は2日、同グループが掲げる中期経営計画AD Vision 2021における重点戦略「デジタル革命に向けたデジタライゼーションの推進」の一環として、既存業務のデジタルシフト実現に向けた取り組みを2018年11月より開始すると発表した。

デジタルツールで紙ベースの業務プロセスを削減

 あいおいニッセイ同和損害保険では、以前より業務効率化を推進する取り組みを実施してきたが、依然として申請・報告・部門間の連携業務において、人手による業務が残っており、紙ベースの業務プロセスが中心となっている。

 こうした現状を打開するため、同社はデジタルツールとしてUiPathのRPA(Robotic Process Automation)、およびMicrosoftがSaaSとして提供するXRM(CRMとERPを統合したプラットフォーム)のDynamics 365を採用したという。

 RPAによって、これまで人手で実施していた業務の、徹底した自動化を実現する一方、Dynamics 365を全社的に導入してRPAと組み合わせ、保険料清算業務をはじめ、社内のあらゆる業務で活用する。

 これにより、2021年までに約138万時間の余力を創出し、よりクリエーティブな業務に注力できる環境を構築するという。さらにペーパレス化も推進し、現在は年間約1200トン使用しているコピー用紙など、紙ベースの書類の大幅削減を目指す。

デジタルシフトによって約138万時間の余力を創出し、年間約1200トン使用している紙の大幅削減を目指す

 今回の業務効率化プロジェクトでは、現状の業務をそのままRPAによって自動化するのではなく、既存業務のデジタルシフトを実現するため、BPR(Business Process Re-engineering:抜本的な業務の見直し)を非常に重視している。

 あいおいニッセイ同和損害保険 代表取締役副社長執行役員 黒田正実氏は、「現状の業務をそのままRPAに置き換えるのでは、付加価値は生まれない。すべての業務を見直して、無駄な業務をなくし、AIやロボットに任せられることはすべて任せる。デジタルイノベーションというと、新興企業が新しい技術を使って新しいコンセプトで行うものというイメージがある。しかし、われわれのように以前から仕事をしている企業においても、自分たちでチャレンジし、変革していかなければならない」と述べ、デジタルテクノロジーによる業務改革に強い意気込みを示した。

 また、RPAによる自動化で仕事を失ってしまう人が出るのではないかという懸念について黒田氏は、「自動化しても人員を削減してしまっては、やはり付加価値を生み出すことはできない。浮いた人材によって、これまで提供できなかったサービスを提供できるようにすることで、新たな価値が創造できる」と説明した。

あいおいニッセイ同和損害保険 代表取締役 副社長執行役員

自分たちの業務を知っているのは自分たち自身

 プロジェクトには、アビームコンサルティング、シーイーシー、日本マイクロソフト、UiPathが参画する。アビームコンサルティングは、BPRを前提としたRPA導入の全面支援、シーイーシーは、Dynamics 365のアドオンテンプレートを提供および新規アドオンテンプレート開発、日本マイクロソフトは、Dynamics 365の提供およびテクノロジー支援、UiPathは、RPAソフトウェア「UiPath」および活用ノウハウの提供、標準機能の拡充を行う。

 なおBPRを前提としたRPA導入には、あいおいニッセイ同和損害保険の経営企画部から約20人、プロジェクト参画企業の約50人がチームとなって取り組む。

 「自分たちの業務を知っているのは自分たち自身」との意識を持ち、よくあるRPA化プロジェクトのように「SIerに丸投げ」するようなやり方はせず、プロジェクト参画企業から支援を受けつつ、実際の業務見直しや改善、RPA化する業務の選択などは、あいおいニッセイ同和損害保険のメンバーが判断するという。

 すでに2017年度から経理部の業務でPoC(Proof of Concept:概念実証)を行っており、業務プロセスの上流からデータ化することで、約4万時間の削減に成功したという。またRPAについても、エンジニアを雇用して内製化も進めていく予定であるとした。

 黒田氏は「自ら業務の企画立案できてこそ継続的業務改革が実現する」と述べ、2018年度上期は経理部、下期は人事部など10部署にRPAを順次導入する計画であることを明らかにした。

改善前、経理部 保険料清算業務ではダブルチェックなどの業務が大きな負担となっていた
業務プロセスの上流からデータ化することで自動化を実現し、40,000時間分の業務を削減した

パートナー各社が支援内容を説明

 RPA化の支援を行うアビームコンサルティング 執行役員 プリンシパル 安部慶喜氏は、「一般的にRPAは自動化しやすい業務から行っていく『現場型』や『ボトムアップ型』の導入が多いが、今回は業務全体を俯瞰(ふかん)し、最も費用対効果の高い大量業務を自動化する『直下型』で進め、確実に効果を上げていく。このプロジェクトによって、『業務削減』『業務プロセスの見える化と再定義』『社員の改革マインド醸成とスキルの獲得』を目指したい」と説明した。

アビームコンサルティング 執行役員 プリンシパル 安部慶喜氏

 シーイーシーは、Dynamics 365のノウハウ提供、アドオンテンプレートの提供および新規アドオンテンプレートの開発、Microsoft Azureを基盤としたAIやチャットボットなどの技術との連携を支援する「Convergent」を提供している。

 サービスインテグレーションビジネスグループ マイクロソフトクラウド事業部部長の溝道修司氏は、「当社はDynamics 365の効果を最大限にする支援を行うことが使命。業務改革は常に継続し、プラットフォームも常に成長し続けなければならない。MicrosoftにはAI、IoT、Cognitiveなどいろいろ素晴らしい技術がある。これらの技術を引き出し、今後もプロジェクト支援に取り組んでいきたい」と述べた。

シーイーシー サービスインテグレーションビジネスグループ マイクロソフトクラウド事業部部長 溝道修司氏

 日本マイクロソフトは、SaaSであるDynamics 365を保険業務の次世代プラットフォームとして提供する。

 Dynamics ビジネス本部 本部長 大谷健氏は、「Dynamics 365は、CRMとERPを統合したサービス。CRMとは顧客を管理する仕組みだが、今回は業務プロセスを管理する『XRM』として利用されている。営業部隊からバックオフィスまで一貫したデータの管理を実現し、既存の1,200トンの書類はデータとして管理され、業務プロセスで処理されるようになる」述べた。

 既存の紙ベースの業務プロセスでありがちな多重入力業務(複数の部署で行われる書類のスキャンや入力)など、業務負荷を回避できるようなシステムの構築を支援するという。

 なお、クラウドサービスのDynamics 365は継続的にアップデートしていくため、常に最新のプラットフォームを利用できるというメリットもあるとしている。

日本マイクロソフト Dynamics ビジネス本部 本部長 大谷健氏

 RPAを提供するUiPathのクライアントソリューション本部 ディレクター 明瀬雅彦氏は、「エンタープライズ RPAに求められる要件は、Dynamics 365やCognitive製品など最新技術と容易に連携できること。また、日本独自の少量多種な業務にも対応できるユーザーフレンドリーなロボット開発機能や、保守性も重要」と述べる。

 さらに、今後直面するであろう課題についても、UiPath本社の開発部隊と連携し、製品として課題解決をサポートしていくという。

UiPath クライアントソリューション本部 ディレクター 明瀬雅彦氏

 さらに今後、あいおいニッセイ同和損害保険では、OCRやAIによる業務変革にも着手していく考えであるという。顧客や他社から受け取った書類をOCRによってデータ化し、保険業務の次世代プラットフォームにおいて活用する。あるいは、AIによるチャットボットやアナリティクスなどの実現にも取り組んでいく考えだ。

左から、日本マイクロソフト Dynamicsビジネス本部長 大谷健氏、シーイーシー サービスインテグレーションビジネスグループ マイクロソフトクラウド事業部長 溝道修司氏、あいおいニッセイ同和損害保険 代表取締役副社長執行役員 黒田正実氏、アビームコンサルティング 執行役員 プリンシパル 安部慶喜氏、UiPath クライアントソリューション本部 ディレクター 明瀬雅彦氏