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SAP、“フル機能”のクラウド型人事ソリューション「SAP SuccessFactors HCM Suite」
タレントマネジメントから給与計算、労務管理までトータルに提供
2018年5月18日 06:00
SAPジャパン株式会社は17日、人事に関連するシステムをクラウドでトータルに提供する「SAP SuccessFactors HCM Suite」を提供開始した。これまで提供してきた「SuccessFactors」に給与計算、労務管理サービスを追加しており、“人事業務のフルクラウド化”を実現するという。
この、クラウドでフル機能の人事ソリューションを提供する意味について、SAPジャパン バイスプレジデント 人事・人材ソリューション事業本部 本部長 稲垣利明氏は、「人事はクラウドには上げたくないという声もあったが、この2、3年でその状況は大きく変わった。グローバル企業では、各国の法制度をキャッチアップし続けることが現実的に難しいとの声があがり、むしろクラウド版を利用して法制度キャッチアップは任せたいという声が上がるようになった」と説明した。
人事にかかわる業務すべてをクラウドで提供
SAP SuccessFactors HCM Suiteは、タレントマネジメントから人事給与まで、人事にかかわる業務すべてをクラウドで提供することで、効率化を実現し、グローバル展開を行う企業のニーズを取り込んだソリューション。日本市場向けに大幅に拡張されており、日本向けの給与計算、労務管理機能が提供される。さらに、データ保護とプライバシー管理機能も強化され、EUで5月25日に施行されるデータ保護規則GDPRにも対応している。
「SAPジャパンが提供してきた人事・人財ソリューションでは、1993年に日本向け給与機能を出荷したことが皮切り。2009年からはSuccessFactorsの国内事業を開始し、2018年からSuccessFactors HCM Suiteを本格展開する。これまでのSuccessFactorsはタレントマネジメントという側面が強かったが、今回、給与計算、勤怠管理、労務管理を含めたひとつのクラウドサービスとしての提供となる。人事の全業務をクラウドで利用できる」(稲垣氏)。
人事業務がフルクラウド化されたことで、タレントマネジメント、人事、給与計算といったシステムが個々に存在するために、分断してうまく連携がとれないといった事態を回避することができる。
さらに人事関連は、法改正対応などが必須となり、そのためのバージョンアップが必要となるが、別個のシステムを利用している場合、バージョンアップが大きな負担となっていたため、その状況を大きく改善するという。
このほか、グローバル展開を支援するために、GDPRをはじめとしてグローバル経営に必要な地域ごとの法規制を取り入れる体制を作った。91カ国の法要件に対応済みで、ローカルな対応を含めて今後の改正にも対応できるよう、200人以上の各国対応責任者を配置している。
エコシステムについても、日本だけで37社のパートナーがすでに存在し、コンサルタントの育成も引き続き続けていく。
実際のシステムについて、SAPジャパン 人事・人財ソリューションアドバイザリー本部の本部長 南和気氏は、「日本の人事部門は、『多様化』に対応する必要に迫られている。業務が複雑化する中、シンプルで簡単に使えるシステムを提供したい。業務そのものを減らすことも必要で、人がやらなくていいことはAI、マシンラーニングなど自動化を製品に組み込んでいく。また業務を日本国内だけでなく全世界で管理する必要もある。そういう部分をサービスとして提供し、SAPが請け負って負担を減らしていく」というコンセプトであると説明する。
業務の複雑化に対応するためにシンプルな画面設計を実現し、どこに何があるのかを探すといった操作を極力減らしていることも特徴。目的を迅速に達成できるために、クリック数を極力少なく作業ができる設計となっている。
また人事の場合、社員の結婚、部署の異動などによって登録内容の変更などが不可欠となる。こうした変更の際も、データの修正、確認といった作業をできるだけ少ない操作で実現できるよう設計されている。
SuccessFactorsを担当している、Head of SAP SuccessFactors APJ Senior Vice PresidentのJill Poplka氏は、「現在までに6400社を超えるお客さまがSuccessFactorsのソリューションを利用されている。日本は最も重要な市場のひとつで、日本企業は人事をとても重要視されている。そのお手伝いを当社のソリューションで実現したい」と意気込みを語った。
なお記者説明会には、実際にSAP SuccessFactors導入を選択した、住友商事の人事厚生部兼グローバル人材マネジメント部課長代理 山田裕志氏が登壇。導入を決定した理由を説明した。
同社は、現行の人事システムを15年間利用しているが、「15年使い続けるとシステムが肥大化し使いにくいところが増えてきていた。そこで2016年11月に次期人事システム検討プロジェクトをスタートし、国内、海外のマーケットシェア等を調べ、候補となる製品を10か月かけて比較検討した結果、SAP SuccessFactorsを選択することを決定した」という。
SuccessFactors導入を決める要因となったのがフルクラウド化を実現していたこと。「人事を取り巻く環境は日々変化している。政府が進める働き方改革もそのひとつだといえる。こうした変化に迅速に対応できるプラットフォームであることが望ましいと考え、人事の全領域をカバーしたフルクラウドのSAPを選択した。また、国内システムを選択した場合、国内の要件に対応できることは当たり前だが、グローバル展開を行う当社の場合、各国の法改正に対応できるものとしてSAP SuccessFactorsを選んでいる。今後は、次世代人事としてHR Techへの対応がマストと考えており、それを実現するためのプラットフォームとしてSuccessFactorsとともに挑戦を行っていく」と山田氏は説明した。