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近未来が予想できるかも!? 2013年のIT新技術・実証実験まとめ
DCからビッグデータ、O2O、医療まで
(2013/12/24 06:00)
データセンター
データセンター分野では「コンテナ型データセンター」に関する話題が多かった。通年外気冷却や高効率冷却などの空調効率化、あるいはITやファシリティの自動制御などが実現されようとしている。バッテリ内蔵サーバーや外気冷却で、データセンターを稼動させるための設備を最小限に抑えようとするヤフーの取り組みも興味深い。
加えて「自律型データセンター」というキーワードも出てきている。複数のクラウド環境を仮想的に統合し、障害検知や復旧などを自律的に行わせるものだ。これを可能にしたのが「Software-Defined」と表現される、ソフトウェアで各種の要素を制御する技術。ネットワークの機能をソフトウェアで制御する「Software-Defined Network(SDN)」がはじめに登場し、「Data Center」「Infrastructure」「Storage」「Server」といった文字も「Software-Defined」の後ろに置かれるようになった。
・マレーシアとシンガポール間でのクラウド連携、CTCが実証実験
・ハイブリッドクラウドを“自律”させるソフト制御技術、TISが開発へ
・竹中工務店、既存建物内に導入できるモジュール型データセンター
・外気冷却とミスト噴霧を採用した都市型DC、NTTスマートコネクトが実証実験
・IIJ、データセンター設備を動的に制御するコンテナ型モジュール「co-IZmoSD」を開発へ
・IIJ、“通年”外気冷却のコンテナ型データセンター実証実験を開始
・NEC、多段式高効率冷却技術を開発~ラックに搭載されたICT機器の効果的な排熱を実現
・ヤフー、次世代型「プレハブデータセンタ」にバッテリ内蔵のPRIMERGYを採用
・SBT、ヤフーの「プレハブデータセンタ」にバッテリ内蔵サーバー300台導入
・富士通研究所、物理サーバーをオンデマンドで提供するIaaS基盤技術を開発
・CTC、遠隔地の複数データセンターを仮想統合するソリューション
これらの技術が確立されるとなにが可能となるのか。「Software-defined Data Center」への取り組みを強めるVMwareによれば、「すべてのインフラが仮想化され、サービスとして提供されて、さらにデータセンターの制御が完全にソフトウェアで自動化される」世界が訪れるという。「人が立ち入らなくても半永久的に自動運用されるデータセンター」もいずれ実現されるのかもしれない。
ネットワーク
ネットワーク分野ではやはり「SDN」が主役だ。技術的な実証を超えて、2013年は家庭内通信機器の仮想化、広域ネットワークへのSDN適用など実用途までイメージしたものが出てきた感がある。「さっぽろ雪まつり」ではSDNで複数のネットワークをソフトウェアで切り替えながら映像を伝送する実験も。
テレビ朝日が建てた「ゴーちゃん。スクエア」では、各種イベント向けネットワーク、社員向け業務ネットワーク、映像伝送などに利用される広帯域ネットワークなどのさまざまなネットワーク環境を共存させるため、実際にSDN/OpenFlowでネットワークを構築した実例も出てきている。
・テレフォニカとNEC、SDN/NFVによる家庭内通信機器の仮想化で協業
・広域ネットワークへのSDN適用を目指す研究開発「O3プロジェクト」が始動
・NICT、10種類のSDN技術を並列に構築した「さっぽろ雪まつり」の映像配信実験
・NEC、ネットワークの通信速度を瞬時に推定する技術を開発
・NTT Com、日米間海底ケーブルに100G技術を導入、容量を8.4Tbpsに拡張
・「モノのネットワークとクラウドを融合するネットワークサービス基盤」の研究開発、日欧共同で
・アライドテレシス、無線LAN高速認証技術「IEEE 802.11ai」の実証実験に協力
・NEC、テレビ朝日「ゴーちゃん。スクエア」のSDNネットワークを構築
セキュリティ・災害対策
セキュリティ分野は「暗号化」に関する話題が多数。暗号化したままで統計解析したり、生体認証したり、復号せずに処理する新技術が開発された。新技術でも実証実験でもないのだが、総務省がはじめた標的型サイバー攻撃を「体験」する演習の話題も。防御するのが困難とされる標的型攻撃を擬似的に再現し、その対応を実際に体験。対応の基本的な流れをつかもうというものだ。
そのほか、クラウドにおける災害対策に関する実証実験が行われた。「自律型データセンター」でもそうだが、クラウドを広域で連携させる動きが加速している。
・NEC、RDBのデータを暗号化したままで処理可能な秘匿計算技術を開発
・富士通研、データを暗号化したままでの統計計算や生体認証を実現
・NICTと日立、クラウド向け暗号技術の安全性評価で世界新記録を達成
・NTTデータ、クレジットカード加盟店審査業務の高度化に関する実証実験
・総務省、標的型サイバー攻撃を「体験」する実践的防御演習を実施
・広域災害に対応するクラウド基盤構築に向けて~クラウドネットワークシンポジウム2013
・早稲田大学やNECなど、災害時のクラウド活用を支援する情報セキュリティ技術を開発
・AR技術によるリアルタイム遠隔地作業支援、NTT東日本が実証実験
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来年はどんな新技術が登場するだろうか。新技術ではないが動きがありそうだと思うのは、3Dプリンタの企業活用だ。もちろん、製造業などではすでに多用されているわけだが、コンシューマも手が届く小型・低コストの3Dプリンタが出てきたことで、ほかのエンタープライズ分野でも思わぬ用途が提案されるかもしれない。
漫画「宇宙兄弟」では、「月の砂(レゴリス)」を原材料にして3Dプリンタで月面基地を建設するという話があり、まさに可能性は無限大だ。もちろん、架空の話で2025年と相当先の話だが……と思ったら、実際にNASAが同じ構想をすでに発表しているようだった。
一方で、米国では3Dプリンタで作られた銃が物議を醸している。その設計図も公開され、誰でも作ろうと思えば独自に銃を作れてしまうためだ。プラスチックを主な原材料とすると金属探知できなくなる可能性もあり、米国ではプラスチック銃を規制する法案も検討されている。
なんでも作れる3Dプリンタ。だからこそ、その用途には今後さらに注目が集まるものと思われる。