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NICT、10種類のSDN技術を並列に構築した「さっぽろ雪まつり」の映像配信実験

 独立行政法人情報通信研究機構(NICT)は5日、次世代ネットワークの実現に向けた研究開発用テストベッドネットワークとして構築・運用している「JGN-X」上に、10種類のソフトウェア制御ネットワーク(SDN)技術を並列的に実装し、同日から北海道札幌市で開催されている「さっぽろ雪まつり」の放送映像伝送に成功したと発表した。

さっぽろ雪まつり会場から4K映像伝送のデモが披露された

 実験では、トラフィック量に応じて自動的に割り当て帯域を最適化する帯域オートスケール(SDTN)を利用したネットワーク(NTT、Cisco)や、大規模OpenFlowテストベッドの「RISE」(NICT、NEC)、複数プレーンでのOpenFlow制御とMPLS Path管理を実現した「Juniper SDN」(Juniper)などのSDN技術を、JGN-X上に並列的に実装した。

 また、マルチベンダーネットワーク環境下での動的かつ簡易なパス制御を実現した「GINEW」(東京大学、慶應義塾大学)により、利用者がこれらの中から必要なネットワークサービスをGUIにより選択できる仕組みを構築した。

 実験には、朝日放送(ABC)、スカイ・エー(スカイ・A)、GAORA、毎日放送(MBS)、北海道テレビ放送(HTB)の放送局5社が参加し、さっぽろ雪まつり会場からの映像や、沖縄のプロ野球キャンプ地などからの放送映像の伝送に、今回の実験で構築した環境を実際に利用している。ネットワークの切り替えをウェブ上で簡単に行える仕組みを構築しているため、放送局側のスタッフがネットワークの状態を見ながら、必要に応じて安定したネットワークを選択できるようになっているという。

複数のSDN技術を並列的に実装
ウェブから簡単に切り替えが可能
帯域オートスケール(SDTN・OnePK)
大規模OpenFlowテストベッド「RISE」

 また、さっぽろ雪まつり会場からの4K映像の実験も行われ、発表会でも実際に生中継の映像が披露された。4K映像を国内外の拠点に伝送することで、広域かつ多機能なネットワーク運用技術の実検証を実施するとともに、SDNコントローラーと連携したネットワーク伝送状況の高精度な測定・分析も実施。シンガポールとタイの研究機関とも協力し、ITU-T標準IPTV技術であるLIME(Lightweight Interactive Multimedia Environment for IPTV services)を用いた各国へのVOD配信や、4Kライブストリーミング配信も実験した。

 さらに、さっぽろ雪まつり会場では、会場参加者向けのWi-Fiとエリアワンセグによる、エリア限定のiPhone/Androidスマートフォン向け映像配信実験や、会場とJGN-Xを100Gbpsネットワークで接続した超高速伝送実験も行った。

 発表会では、実際にブラウザー上の画面で複数のネットワークを切り替えながら、映像伝送など各ネットワークの特徴を説明するデモが披露された。NICTでは今回の実験は、利用者側で用途に応じたネットワークをより柔軟に選ぶことが可能となる、新たなネットワークサービスの基盤技術の確立に寄与するとしている。

IPTV国際映像配信実験
スマートフォン向けWi-Fi放送

(三柳 英樹)