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広域ネットワークへのSDN適用を目指す研究開発「O3プロジェクト」が始動

NEC・NTT・NTT Com・富士通・日立の5社共同で

 日本電気株式会社(NEC)、日本電信電話株式会社(NTT)、NTTコミュニケーションズ株式会社(NTT Com)、富士通株式会社、株式会社日立製作所(日立)は17日、総務省の委託研究「ネットワーク仮想化技術の研究開発」に基づき、5社共同による研究開発プロジェクト「Open Innovation over Network Platform(愛称:O3プロジェクト)」を立ち上げた。

 同プロジェクトでは、データセンターへの導入が始まっているSDNを、広域ネットワークに適用するための研究開発を進める。この“広域SDN”が実現することで、通信事業者は広域ネットワークにおいて、サービスプロバイダの要望に応じたネットワークを従来のおよそ1/10の時間で、臨機応変に設計・構築・変更できるようになる。これにより、サービスプロバイダのサービス開設・撤収時間を大幅に短縮できると見込まれる。

広域ネットワークにおける通信事業者・サービスプロバイダの課題

 データセンターでの取り組みが進み、一部の事業者では商用サービスも始まったSDN。今後は企業の事業継続基盤の強化やグローバル化が進むにつれ、世界中に分散するデータセンターとユーザーの連携が必要になることから、広域ネットワークを対象としてSDNを適用する機運が高まると予想される。

 しかし、光や無線など多くの種類のネットワークをまたがった通信サービスから構成される広域ネットワークでは、それぞれのネットワークごとに個別にサービス設計・構築・運用を行っているため、多様なサービス要件(ネットワークの性能要件・プロトコル要件・処理要件など)を満たしたネットワークを構築し、迅速にサービスを開始するのが困難だった。

 また、広域ネットワークは、ネットワークレイヤごとにネットワーク装置と運用管理システムが存在し、それぞれのレイヤで別々の運用管理を行う。そのため、上位レイヤの運用管理者にとっては、下位レイヤでの障害発生時に真の障害個所を迅速に特定するのが難しいほか、通信事業者やサービスプロバイダはサービスに対してネットワーク資源を割り当てる際に、すべてのレイヤを通じて低コスト・高性能な資源を組み合わせ、サービス構築コストを最適化するのが困難といった課題があった。

O3プロジェクトの具体的な目的

 O3プロジェクトでは、これら課題を解決するため、ネットワーク資源を共有する複数の通信事業者・サービスプロバイダが、それぞれの目的に合わせて自由にネットワークを設計・構築・運用管理できるネットワーク仮想化技術の確立を目指す。

 具体的には、多様なサービス要件を満たしたネットワークを構築して迅速なサービス提供を可能とする「SDNプラットフォームソフト」を開発。光・無線・パケット通信など、さまざまなネットワークについて、それぞれを管理するための情報(ネットワーク構成情報や通信状態情報など)を共通的に扱えるようにすることで、広域ネットワークを統合し、管理制御を柔軟かつ迅速化するという。

 また、このプラットフォーム上で動作する、ネットワーク設計・構築・運用管理ソフトを開発する。具体的には、広域ネットワークにSDNを適用する際に必要となる、設計ソフト(設計したネットワークの検証)や、構築ソフト(既存ネットワークとの相互接続、既存ネットワークからSDNへの移行)、運用管理ソフト(レイヤ間における障害特定・対処の迅速化・サービス品質の制御)の3種類を開発する。

 さらに上記2点により制御可能なSDNネットワーク装置を開発する。具体的には、すべてのレイヤを通じて低コスト・高性能な資源を活用してサービス構築コストの最適化を可能とする、既存の光通信システム・無線通信システム・パケットトランスポートシステムのネットワーク装置を制御するインターフェイスやドライバ機能、および構成や機能を自由に変更できるソフト通信機器を開発する。

 こうしたネットワーク仮想化技術を構成する各技術の試作や実証実験を通じて研究開発成果の実用性について実証し、実用化を目指すとともに、本研究成果のグローバルな普及や標準化を進めていく。特に2014年度中に成果の一部をオープン化し、国内外の通信事業者・サービスプロバイダ・ベンダに提供していく。

川島 弘之