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「モノのネットワークとクラウドを融合するネットワークサービス基盤」の研究開発、日欧共同で
(2013/7/2 17:39)
東日本電信電話株式会社(NTT東日本)、慶應義塾大学SFC研究所(SFC)、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)、日本電信電話株式会社(NTT)、およびパナソニックシステムネットワークス株式会社(PSN)は、欧州委員会(EC)が実施するFramework Programme 7(FP7)と連携して、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が研究委託する「新世代ネットワークの実現に向けた欧州との連携による共同研究開発」を4月1日付けで受託したと発表した。
7月2日に東京都三鷹市および神奈川県藤沢市それぞれと共同研究検討に関する協定締結に至ったため、今後、本格的に「モノのネットワークとクラウドを融合するネットワークサービス基盤」に関する共同研究を開始する。2014年には三鷹市と藤沢市においてフィールドトライアルを実施する予定。
なお、本研究は欧州連合(EU)と連携。EUの共同研究者としては、CEA-LETI(フランス)、University of Cantabria(スペイン)、ST Microelectronics(イタリア)、Engineering(イタリア)、Santander市(スペイン)、Genova市(イタリア)が参加する。また、EUにおいても、スマートシティ実証実験の実績を有するSantander市(スペイン)、Genova市(イタリア)においてフィールドトライアルを実施する予定。
スマートシティサービスの構築を容易に
現在、モノに各種センサを取り付け、取得した情報をネットワークを通じて収集・処理し、その結果を人やモノにフィードバックする「モノのネットワーク技術(IoT:Internet of Things)」が注目されている。実現するためには、人口よりもはるかに多い情報を処理する必要があることから、クラウドコンピューティング技術と組み合わせ、モノか収集した情報を効率的に処理して「モノのネットワークとクラウドを融合する」ネットワークサービス基盤技術に期待がかかっている。しかしながら、従来のモノのネットワークとクラウドを融合したサービスでは、サービスごとにシステムを構築するため、新規サービスの創出に要する金銭的かつ時間的コストが大きいという課題があったという。
本研究では、モノのネットワークとクラウドを融合するネットワークサービス基盤技術の研究開発を推進し、スマートシティを実現することを目標とする。共通のサービス基盤を用いたスマートシティサービスを構築できるようにし、新規サービスの創出に要する金銭的かつ時間的コストの短縮を図る。また基盤を構築することで、その都市に存在する人が独自のサービスを創出できるようにする。「つまり、企業や市民がスマートシティサービスを容易に開発(利用)できるようになり、都市のリソースが最適化され、住民の行動を支援するスマートシティサービスの普及が期待される」という。
目標を達成するための3階層のアーキテクチャ
目標を達成するためのアーキテクチャとして、「City Infrastructure as a Service(CIaaS)」「City Platform as a Service(CPaaS)」「City application Software as a Service(CSaaS)」の3レイヤに機能分担させ、データ収集から加工、さまざまなシティサービス提供の検討まで行う。
CIaaSでは、仮想化技術により複数のIoTデバイスを単一のセンサとして統合する「IoTデバイスの仮想化」、ソーシャルネットワークからのデータを信頼度の高い都市センサとして活用するため、データからノイズを除去し、データの内容を解析した上で一に連動した街の情報として活用する「既設デバイスやソーシャルネットワークのセンサ化」、都市データ(気温・交通量・人口流量など)を自動変換し、統一された手法で利用するための都市データのメタデータ記述言語を導入するほか、メタデータの整備を進めるため、メタデータ記載をサポートする技術についても検討し、年ごとに異なった形で導入されたセンサデバイスのデータを相互流通できるようにする「都市データの相互接続性」について研究。オープンなAPIを用いて、あらゆるデバイス・データ・計算機資源にシームレスにアクセスできる都市のデータを収集する基盤を構築する。
CPaaSでは、都市の中に設置された多数のセンサ、デバイスサービスを組み合わせて高信頼なサービスを構築するためのサービス統合手法を開発する「高信頼IoTサービス統合手法の開発」、都市内に設置された各種多様なセンサから得られる多量のセンサデータ・イベントストリームを高品質化するための「データ/イベントストリーム自己修復機能の開発」について研究。サービス化されたセンサ、デバイスを組み合わせて高品質・高信頼なサービスを提供するプラットフォームを構築する。
CSaaSでは、都市に設置されたセンサやソーシャルネットワークのデータを活用し、都市内に発生する多種多様なイベントを検出・可視化。市民・行政がそれを活用することで状況に応じた行動支援アプリを実現するための「社会イベント検出・可視化・活用手法の開発」、ネットワーク制御可能な防犯カメラ・街灯を利用し、取得した各種センサデータの解析結果に基づいた公共空間マネジメントおよび公共空間内の市民活動を支援するアプリを実現するための「公共空間マネジメント・活動支援手法の開発」について研究。CIaaS、CPaaSを活用し、都市における市民の生活・公共サービス向上のためのアプリを構築する。
三鷹市と藤沢市でフィールドトライアル
その上で2015年からフィールドトライアルを実施。技術の検証・評価を行う。実証フィールドとしてはスマートシティに関する経験の豊富な東京都三鷹市と神奈川県藤沢市を選定。抽出した課題を解決するため、ネットワークサービス基盤を適用した都市の情報を可視化し、住民の行動支援を行うサービスを検討、実装する。こうしたサービスの検討を通じて、システムに必要な要件を抽出し、各研究開発に反映していく。
その後の予定としては、2016年3月末まで、日本およびEUにおいて研究開発を進める。研究の状況については適宜Webサイトに公開していく。