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米GitHubの年次イベント「GitHub Universe 2023」開幕、GitHub Copilot Chatの一般提供などを発表
2023年11月10日 00:00
米GitHubの年次イベント「GitHub Universe 2023」が8日(現地時間)、米国サンフランシスコによる現地開催とオンライン開催のハイブリッド形式で開幕した。
初日の基調講演では、生成AIによってソフトウェア開発を支援する「GitHub Copilot」シリーズについて、「GitHub Copilot Chat」のGA(一般提供)予定や、自社のコードをもとにGitHub CopilotのAIモデルを自社向けにカスタマイズする機能を持つ「GitHub Copilot Enterprise」など、新発表がいくつかなされた。
「GitHubはCopilotによって再設立されている」
GitHubのCEOのThomas Dohmke氏は、2020年にGitHub Copilotが登場して3年がたち、現在では190か国で、有料ユーザーが100万人、利用する組織が3万7000以上にわたるようになったと語った。
GitHubでは現在、「Copilot X」というビジョンを掲げ、ソフトウェア開発のライフサイクル全般を支援することを目指している。Dohmke氏は、GitHubはかつてGitの登場によって設立され、いまCopilotによって再設立されていると語った。
なお基調講演の途中で、Dohmke氏の「Digital Transformationの会社」の人という紹介のもと、GitHubの親会社であるMicrosoft CEOのSatya Nadella氏がサプライズ登場した。
Nadella氏は、Copilotによる開発スピードの向上がさまざまな業界の企業を変える力を持っていることや、Copilot Chatの自然言語の操作によってソフトウェア開発のバリアーを下げる可能性について語った。
GitHub Copilot Chatが12月にGAに
自然言語による対話形式で指示することで生成AIにコーディングを支援してもらう「GitHub Copilot Chat」(現在パブリックベータ)が、12月にGAとなることが発表された。
ステージではデモが披露された。Copilot Chatでは、自然言語だけの指示のほか、「/」で始まるコマンドも使え、「/fix」でコードを修正したり、「/tests」でテストを生成したりできる。デモでは「/new」に続いて説明を入力することで、新しいプロジェクトのひな型を作ってみせた。
また、GitHubの検索APIについて質問し、返ってきた回答中のコードをワンクリックで自分のコードに張り付けたり、回答に対して質問し直して、より望みの回答を得たりするところも見せた。
インラインチャットの機能もデモされた。コードを選択してその場にチャットウィンドウを表示し、不要な要素の削除を指示したり、関数についてのコメントを自動生成したりするところ見せた。
そのほかCopilot Chatについては、OpenAIのGPT-4モデルの採用もアナウンスされている。
Copilot Chatのモバイル版やJetBrainsのIDEへの対応も
Copilot ChatのGAと同時に、モバイル版でもCopilot Chatに対応する。スマートフォン向けGitHubクライアントの「GitHub Mobile」に対応機能が追加され、Copilot Chatのサブスクリプションを契約していれば利用できる。
また、Copilot ChatはこれまでVS Codeでのみ対応していたが、IntelliJなどJetBrains社のIDEでのCopilot Chat対応も発表された。現在、限定プレビューとして参加登録を受付中。
GitHub.comにCopilot Chatを組み込む取り組み
GitHubのWebインターフェイスである「GitHub.com」にCopilot Chatを組み込む、取り組み中の機能も紹介された。プルリクエストで送られたコードについて「Please explain this code(このコードについて説明してください)」と指示して回答を得るところや、プルリクエストの説明文入力欄に「Copilot actions」ボタンが付いてコードから説明文を生成するところがデモされた。
セキュリティ機能「GitHub Advanced Security」にもAIの力
GitHubのセキュリティ機能をパックにした「GitHub Advanced Security」についても、AIによる機能が発表された。
コード中の脆弱性を検査する「Code scanning」では、発見された脆弱性とそのコード修正案についてCopilotが説明文を付けて自動的にプルリクエストを送る「Code scanning autofix」が発表された(限定プレビュー)。ユーザーはプルリクエストの提案内容を見て、それで問題がないようならプルリクエストを受け入れるだけでいい。
コード中に誤って書き込まれてしまったパスワードやAPIアクセストークンなどをGitHubが検出する「Secret scanning」にも、AIが導入された。例えばパスワード文字列は、特定のパターンとして検出しづらいが、AIの力を利用して検出できるという。
また、Secret scanningでは自分でカスタムパターンを定義することもできるが、複雑な正規表現を書く必要があった。そこでAIを活用し、いくつかの質問に答えるだけでカスタムパターンの正規表現を作成できる機能も含まれるようになった。
自社のコードを学習して独自のAIモデルが作れる「GitHub Copilot Enterprise」
GitHub Copilotの企業向け最上位版「GitHub Copilot Enterprise」も発表された。2024年2月にGAを予定している。
これまで、個人向けのCopilot Individual(月額10ドル)と、企業向けのCopilot Business(月額1ユーザーあたり19ドル)があった。Copilot EnterpriseはCopilot Businessの機能をすべて含み、加えてドキュメントやプルリクエストの要約などの機能を持つ。
中でもCopilot Enterpriseの最大の特徴は、導入組織のコードベースに合わせてAIをカスタマイズできることだ。CopilotのAIモデルをもとに、非公開も含む自社のコードベースを学習させてファインチューニングした独自のカスタムAIモデルを作成して使うことができる。これにより、自社のベストプラクティスや、自社のコーディングスタイルなどにもとづいたコードを提案できるようになる。
Copilot Enterpriseは、1ユーザーあたり月額39ドルでの提供を予定している。現在、ファインチューニングの部分とそれ以外の部分に分けて、限定プレビューの参加登録を受付中。
Copilotを外部のツールやナレッジと統合するためのパートナープログラム発表
GitHub Copilotをサードパーティの開発者向けツールやオンラインサービス、GitHub以外のナレッジと統合するためのパートナープログラムも発表された。第一段として、Datastax、LaunchDarkly、Postman、Hashicorp、Datadogを含む25社強を最初のパートナーとしてスタートする。
ステージでは、Copilot Chatから「@DataStax how is this query performing?」のように、その企業を指定して製品に関する情報を質問するケースなどがデモされた。