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Red Hat Summit 2023開幕、製品やサービスなどの新プロダクトを相次いで発表

CentOS 7からRHELへの移行施策、コンテナ管理ツールPodman Desktop 1.0のリリースも

 米Red Hatの年次イベント「Red Hat Summit 2023」が、5月23日(米国時間)に開幕した。今回は、米国ボストンでのリアルイベントと、オンラインのバーチャルイベントの併催形式での開催となった。

 初日の基調講演では、製品やサービスなどの新プロダクトが相次いで発表された。

  • 組織内の複数のプロジェクトをまとめる開発者ポータル「Red Hat Developer Hub」
  • Red Hat OpenShift上でAI開発のMLOpsを実現する「Red Hat OpenShift AI」
  • AnsibleのYAML形式のプレイブックを生成AIを使って作成できる「Ansible Lightspeed」
  • Red Hat Ansibleをモニタリングツールなどと組み合わせてプレイブックを実行する「Event-Driven Ansible」
  • 複数のサービスやAPIを接続する「Red Hat Service Interconnect」
  • ナレッジベースによりシステムの問題を発見する「Red Hat Insights」の強化
  • OSSサプライチェーンセキュリティの「Red Hat Trusted Software Supply Chain」
  • コンテナ向けセキュリティ製品のクラウド版「Red Hat Advanced Cluster Security Cloud Service」

 また、それと同時に、CentOS 7からRHELへの移行施策や、コンテナ管理ツールPodman Desktop 1.0のリリースもアナウンスされた。

 以下、発表された内容を紹介する。

Red Hat社President兼CEOのMattHicks氏が、8つの新発表をアナウンス
8つ+2つのアナウンス(記者会見より)

開発者ポータル「Red Hat Developer Hub」

 「Red Hat Developer Hub」は、オープンソースの開発者ポータル「Backstage」をベースにした商用版。その開発版は「Janus」として公開されている。組織内に多数のプロジェクトがあるときに、ほかのプロジェクトで開発しているサービスやAPIの情報をサービスカタログで見つけられるようにする。なお、BackstageはSpotify社によって開発された。

 また、Red Hat Developer HubやBackstageに機能を追加するための6つのプラグインをまとめた「Red Hat Plug-ins for Backstage」も発表した。Kubernetesのトポロジー表示、Open Cluster Manager(OCM)によるマルチクラスタービュー、コンテナイメージレジストリQueyに登録されたイメージの表示、CI/CDツールTektonのパイプラインの表示、IAMのKeycloakによる認証と認可、CDツールのArgo CDの表示が含まれる。

 提供予定は、今年後半に、Red Hat Plug-ins for BackstageがGA(一般提供開始)に、Red Hat Developer Hubがデバロッパープレビューとなる予定。

「Red Hat Developer Hub」の発表
「Red Hat Developer Hub」の説明(記者会見より)
Backstage、Janmus、Red Hat Developer Hubの関係(記者会見より)
Red Hat Developer Hubのサービスカタログ
プロジェクトの概要を見る
コンテナイメージレジストリQueyの情報を表示するプラグイン

OpenShift上でMLOpsを実現する「Red Hat OpenShift AI」

 基調講演では「Red Hat OpenShift AI」が、Red Hat Developer Hubといっしょにデモされていた。

 Red Hat OpenShift AIは、製品というより、AIの開発やデプロイを扱うためのOpenShiftの機能追加といえる。機械学習(ML)を本番アプリケーションにするためには、データを収集し、モデルを作成し、チューニングし、再学習し、デプロイし、メトリクスを確認するといった運用が必要になる。そうしたことを、開発者にとってのDevOpsのように、データサイエンティストが作業できるようにするMLOpsと呼ばれるプラットフォームの機能を提供する。

 Red Hat OpenShift AIでは、デプロイメントパイプラインや、モデルをデプロイするモデルサービング、パフォーマンスやメトリクスをとるモデルモニタリングの機能が含まれる。今後さらに機能を追加していく。

 Red Hat OpenShift AIについて、Red HatのCTOのChris Wright氏は、AIモデル開発とアプリケーション開発が同じプラットフォームで行われることが、AIを使ったアプリケーションを開発する上で特徴となると説明した。

「Red Hat OpenShift AI」の発表
「Red Hat OpenShift AI」の説明(記者会見より)
「Red Hat OpenShift AI」に追加予定の機能(記者会見より)
OpenShift上のAIモデルのプロジェクト
モデルのワークフローのパイプライン
モデルのデプロイの管理

生成AIでAnsibleプレイブックを生成する「Ansible Lightspeed」

 AIを利用した技術としては、インフラ構築自動化ツールAnsibleのプレイブックを、生成AIを使って作成できる「Ansible Lightspeed with IBM Watson Code Assistant」が発表された。

 GitHub Copilotが自然言語のコメントや関数名などからプログラミング言語のコードを生成して補完するのと同様に、YAML形式で書くAnsibleのプレイブック(設定)を書くときに、自然言語のコメントから実際の記述内容を補完するというものだ。以前からIBMで研究段階のものとして公表されていた「Project Wisdom」が元になっており、まずはVisual Studio Codeから使える。

 CTOのChris Wright氏はAnsible Lightspeedについて、「domain-specificな(特定分野に特価した)生成AI」であることを強調した。氏は、ChatGPTのような汎用の生成AIはとてもすばらしいが、汎用であるがために特定分野で使うには精度が問題になると説明。それに対してAnsible Lightspeedの生成AIは、AnsibleプレイブックのYAMLに特化して学習しているため、エンタープライズの運用に使える精度で記述を生成できると主張した。また、同様の技術をOpenShift(Kubernetes)のYAMLに応用する可能性についても触れた。

 提供予定としては、今年後半にテクノロジープレビューが提供される予定。

「Ansible Lightspeed」の発表
「Ansible Lightspeed」の説明(記者会見より)
「Ansible Lightspeed」のデモ

異常発生時などにAnsibleを自動実行する「Event-Driven Ansible」

 Ansibleについては「Event-Driven Ansible」のGAも発表された。

 Event-Driven Ansibleは、モニタリングやオブザーバビリティのツールと連携し、例えばモニタリングツールで異常が検知されると、あらかじめ設定したルールによってAnsibleにイベントを送り、Ansibleが自動的に対応する。

 イベントソースとしては、いくつかのモニタリングやオブザーバビリティのツールのほか、現在使っているツールにカスタムで対応することも対応。また、Red Hat OpenShift、Red Hat Insights、AWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platform、ServiceNowに対応する補足コンテンツをRed Hatが用意している。

 提供予定としては、2023年6月にリリース予定のAnsible Automation Platform 2.4の顧客が利用できるようになる予定。

「Event-Driven Ansible」の発表
「Event-Driven Ansible」の説明(記者会見より)
パフォーマンス管理ツールDynatraceと統合
ルールを設定するルールブックを作成
Event-Driven Ansibleのジョブ実行ログ

クラスター間でサービスを接続する「Red Hat Service Interconnect」

 Kubernetesクラスターやクラウドなどの間でサービスを接続する「Red Hat Service Interconnect」も発表された。オープンソースの「Skupper.io」がベースになっている。

 Red Hat Service Interconnect は、Kubernetesクラスター、仮想マシン、物理マシンの上のアプリケーション間で、信頼できる接続を実現する。

 すでにGAとなっている。

「Red Hat Service Interconnect」の発表
「Red Hat Service Interconnect」の説明(記者会見より)

「Red Hat Insights」がconsole.redhat.comに統合

 ナレッジベースによりシステムの問題を発見する「Red Hat Insights」も強化された。
 Red Hat Insightsが、クラウドやオンプレミスのリソースを統合管理するクラウド上のコンソール「console.redhat.com」から利用できるようになった。また、Red Hat Insightsイメージビルダーのサービスにより、組織特有のセキュリティやコンプライアンスの要件にあったOSイメージを作成できる。

 すでにGAとなっている。

「Red Hat Insights」の強化の説明(記者会見より)

ソフトウェアサプライチェーンセキュリティのソリューション「Red Hat Trusted Software Supply Chain」

 「Red Hat Trusted Software Supply Chain」は、ソフトウェアサプライチェーンのセキュリティの問題に対するソリューションだ。

 現代のソフトウェア開発では何らかの形でオープンソースのライブラリやイメージなどを利用していることが多く、それがまた別のライブラリなどを利用していたりする。そのため、依存(利用)先のライブラリにマルウェアなどが紛れこむと、ソフトウェアが影響を受けてしまう。こうしたソフトウェアサプライチェーンの問題に対応するのがRed Hat Trusted Software Supply Chainのソリューションだ。

 その一環としてまず、「Red Hat Trusted Application Pipeline」と、「Red Hat Trusted Content」の2つのサービスが、QueyやAdvanced Cluster Security(ACS)で利用できるようになる。Red Hat Trusted Application Pipelineは、CI/CD中でコード署名を実現するツールで、SBOM(ソフトウェア部品表)の自動生成もサポートしている。また、Red Hat Trusted Contentは、OSSの既知の脆弱性などの情報をリアルタイムに提供する。

 Red Hat Trusted Application Pipelineはすでにサービスプレビューとして利用できる。Red Hat Trusted Contentは、数週間以内にサービスプレビューとして利用できるようになる。

「Red Hat Trusted Software Supply Chain」の説明(記者会見より)

Red Hat ACSのクラウド版「Red Hat Advanced Cluster Security as a Service」

 そのほか、コンテナセキュリティ製品Red Hat Advanced Cluster Security(ACS)をクラウド上のマネージドサービスとして提供する「Red Hat Advanced Cluster Security as a Service」も発表された。

 現在、Amazon Marketplaceで限定的に提供されている。

「Red Hat Advanced Cluster Security as a Service」の説明(記者会見より)

CentOS 7からRHELへの移行施策や、Podman Desktop 1.0のリリースも

 基調講演では紹介されなかったが、2024年にサポート終了を迎えるCentOS 7からRHELに移行する施策についてもアナウンスがなされた。

 「Red Hat Enterprise Linux for Third Party Linux Migration」として、RHELのライセンスを“競争力のある価格”で提供する。CentOS 7で動いているインスタンスをそのままRHEL 7に変換するためのツールやベストプラクティスも含まれる。

 通常の購入ルートのほか、AWS、Azure、Google Cloudなどのマーケットプレイスから購入できるようにする。

CentOS 7からRHELへの移行施策(記者会見より)

 コンテナ管理ツール「Podman Desktop 1.0 community edition」もリリースされた。PodmanはDockerを代替するコンテナエンジンで、Podman DesktopはDockerのDocker Desktopにあたる。

「Podman Desktop 1.0 community edition」(記者会見より)