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10年間使えるシャシーとEvergreenで顧客の投資を保護――、Pure Storageが進める対競合戦略を見る
新ストレージ「FlashBlade//S」のハードウェアも徹底解説
2022年6月13日 00:00
米Pure Storage(ピュア・ストレージ)は8日(現地時間、日本時間6月9日)に、「Pure//Accelerate techfest22」と題した同社の年次イベントを、米国カリフォルニア州ロサンゼルス市にあるL.A. Liveの特設会場で開催した。
その中でPure Storageは、新しいスケールアウト向けストレージとなるFlashBlade//Sを、6月8日に行った基調講演の中などで発表した。本レポートでは、FlashBlade//Sに関して、現地で取材して判明したハードウェアの詳細などについて詳しくお伝えしていきたい。
その結果判明した特筆すべきことは、FlashBlade//Sのシャシーなどのシステムが「今後10年でFlashBladeとしては最後の製品になる」(同社幹部)と説明されている通り、長期間使えるシステムとして設計されていることだ。
Pure Storage フィールドCTO(最高技術責任者) フレッド・ウヘロート氏は「こうしたFlashBlade//Sの設計は、顧客の投資を長期間にわたって守るためだ」と説明し、同社の顧客であるエンタープライズカスタマーがそうした投資の保護を望んでいるためだと述べた。
FlashArrayは人間が創出したデータを置くストレージ、FlashBladeはAI/MLなど向けのデータを置くストレージ
Pure Storageは「Pure//Accelerate techfest22」の基調講演で、同社 会長 兼 CEOのチャールズ・ジャンカルロ氏などにより、FlashBlade//S、AIRI//S、同社のサブスクリプション型の販売プラン「Evergreen」の新しいプランとして「Evergreen//Flex」などが発表された。
Pure Storage、QLCを採用し容量・性能・電力効率を倍にした新ストレージ「FlashBlade//S」
新しいサブスクリプション「Evergreen//Flex」も提供
https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/event/1415659.html
新しいFlashBlade//Sのシャシーは10年先も見据えた設計――、Pure Storage
KDDIがデータセンターのCO2削減に成功し、優良顧客として表彰される
https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/event/1415951.html
中でも注目されるのは、今回のイベントに合わせて発表されたFlashBlade//Sだ。上記の記事などでも説明している通り、Pure Storageのハードウェア製品は大きくわけて、FlashArrayとFlashBladeという2つのブランドがある。
ウヘロート フィールドCTOは「FlashArrayは低レイテンシにフォーカスしたスケールアップ向けの製品で、人間が作り出したデータを保存するストレージとしてわれわれはとらえている。それに対してFlashBladeは広帯域幅などにフォーカスしたスケールアウト向けの製品で、AIなどのマシンが作り出した、あるいは学習するためのデータを保存するストレージと定義している」と、それぞれの技術的な特徴とターゲットの違いを説明する。
FlashArrayには、FlashArray//XL(5Uシャシー)、FlashArray//X(3Uシャシー)、FlashArray//C(3Uシャシー)が用意されており、XLなどはSLC(1セルあたり1ビット)およびTLC(1セルあたり3ビット)のNANDが使われており、CにはQLC(1セルあたり4ビット)のNANDが利用されており、XLやXはパフォーマンス重視で、Cは容量重視という製品になる。こうしたFlashArrayは、VMwareなどの仮想マシンやエンタープライズのITシステム用のストレージなどが主なアプリケーションとなる。
それに対して今回新製品が投入されたFlashBladeは、複数のブレードサーバーがシャシー内で接続されており、シャシー自体もイーサネットなどでほかのシャシーとノードを構成することで、スケールアウトして使うことを前提にした製品になる。このため、広帯域幅を必要とするAI学習が主要なアプリケーションと考えられており、NVIDIAのAIスーパーコンピュータであるDGX-A100(および今後出荷されるDGX-H100)と組み合わせ、動作検証が行われた状態で出荷されるAIRI//Sという製品も別途用意されている。
将来を見据えて今は必要のない100GbEポートが8つ搭載されているFlashBlade//Sのシャシー
Pure Storageは今回、Pure//Accelerate techfest22の展示会場で、FlashBlade//Sの実機を公開した。FlashBlade//Sは5Uのシャシーになっており、そこに10枚のブレードサーバーが収納できる形になっている。最小の構成単位は7枚で、ユーザーのニーズに応じて最大で10枚まで増やすことができる。
それぞれのブレードには、Ice Lake世代のXeonプロセッサ、DRAM、SSDが搭載されており、そのブレード1つにつき4つのDFM(DirectFlash Module)と呼ばれるフラッシュメモリモジュールを装着可能にしている。DFMはPure Storage独自設計のモジュールで、FlashBlade//Sには1つのDFMで24TBないしは48TBの容量を実現している。
このため、1つのブレードサーバーで48TB×4=192TBの容量が実現されており、1つのシャシーで10枚のブレードサーバーを格納できることから、1920TB、つまり約2PBの容量が実現可能だ。電源ユニットは後部に4つ用意され、2400Wの電力を供給可能にしている。
こうしたFlashBlade//Sがユニークなのはネットワーク部分だ。シャシーの後部には100GbEが8ポート搭載されるというスペックになっているが、実は物理的には16ポート用意されており、そのうち8ポートだけが現状は使われているという構成になっている。これは将来を見据えた設計になっているためで、ブレードサーバーに搭載されているCPUやDFMに搭載されているフラッシュメモリが、将来、より高性能なものに置きかえられることに備えているのだという。
なおPure Storageでは、普通のハードウェア、ソフトウェア買い切りの購入方法も可能だが、同社が「Evergreen」と呼んでいるサブスクリプション契約を結んで、徐々にハードウェアやソフトウェアを最新のモノに置きかえながら使えるようにしている点も大きな特徴だ。
例えば、現在ブレードサーバーのCPUにはIntelのIce Lake世代のXeonが搭載されているが、近い将来、Sapphire Rapids世代に置き換わった新バージョンが出たら、そちらに置きかえることが可能になる。
またフラッシュメモリも、将来QLCからPLC(1セルあたり5ビットになるNAND)に置き換わったらそちらに変える、あるいはQLCでも層数が増えて性能が向上したものが登場したなどにより、新しいNANDを搭載したDFMに置きかえるといったことが可能な設計になっている。
そうしてブレードサーバーのCPUの処理能力が上がったり、より新しいフラッシュになって読み書きの速度が上がったりした際には、FlashBlade同士のノードを接続するために利用しているイーサネットも、もっと高い帯域幅が必要になる可能性がある。そうしたことを意識して将来の拡張性を確保するために、8ポートの100GbEが用意されているということになる。
10年間は使えるシャシー設計になっているFlashBlade//Sは長期間にわたり顧客の投資を守るためとPure Storage
Pure Storage FlashBlade担当副社長 アミー・ファウラー氏は、同社が行ったPure//Accelerate techfest22の中で、FlashBlade//Sを「この10年で最後のFlashBlade製品になる」と表現し、今回発表したFlashBlade//Sを今後10年間にわたり提供していく考えを明らかにした。
これは何も、FlashBladeのハードウェアを進化させないということではなく、シャシーは10年間を見据えた設計にしており、内部のブレードサーバーとDFMは技術革新があったとき、例えば新しいCPUやNANDが登場したときには進化させていくが、シャシーは基本的には変えないという意味になる。
この点に関してウヘロート フィールドCTOは、「顧客は自社の投資が保護されることを望んでいると考えている。特に日本のお客さまに関してはそういうご要望が多いと聞いており、そうしたお客さまが弊社製品をご購入いただく場合にセールスポイントになると考えている」と述べ、同社の顧客はハードウェアへの投資が無駄になることを恐れており、それが保護されるようなシャシーの設計が求められていたため、こうした設計になっていると説明した。
また、「当社の競合他社に対する強みはソフトウェア開発、ハードウェア開発の両方に投資していることだ。今回のFlashBlade//Sでも新しいハードウェアを導入するのと同時に、FlashBlade用のPurity 4(Purity//FB 4)を投入している。今後もそうした開発を続けていき、Evergreenなどを導入いただいているお客さまには、ダウンタイムなしに最新のソフトウェア、ハードウェアにアップデートできる環境を提供していく」と述べ、顧客の投資を保護しながら、常に最新のソフトウェア、ハードウェアから構成されているストレージ環境を維持できるというわかりやすさが、同社の競合他社に対する強みだと強調した。