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Pure Storage、CPUを最小限に抑えて低コスト・低消費電力を実現したスケールアウトストレージ「FlashBlade//E」
4月より一般提供を開始
2023年3月17日 06:15
Pure Storageの日本法人となるピュア・ストレージ・ジャパン株式会社(以下、両社合わせてPure Storage)は、同社の東京都内のオフィスで3月16日に記者会見を行い、新しいスケールアウト型非構造化データ・ストレージとなる「FlashBlade//E」(フラッシュブレード・イー)を発表。2023年4月より一般提供を開始する計画だと明らかにした。
FlashBlade//Eは、同社が昨年6月に米国で開催した年次イベント「Pure//Accelerate」で発表した「FlashBlade//S」と並ぶスケールアウト向け製品で、性能を重視し、ブレード1つに付き1つのCPUを搭載しているFlashBlade//Sに対して、FlashBlade//EではCPUは「制御シャシー」と呼ばれるメインのラックサーバーにだけ搭載され、残りのシャシーはストレージのみを搭載する形でコストダウンを実現している。このため、Sシリーズに比べて容量あたりの単価や消費電力を低くできることが大きな特徴となっている。
Pure Storageによれば、非構造化データの保存、HPC、データ・レイクなどがターゲットアプリケーションと想定されており、SAS HDDと変わらないコストで提供することで、HDDベースのストレージからフラッシュメモリベースのストレージへの置き換えを、国内にて訴求していく狙いがあるという。
フラッシュメモリのみに注力することで成長し続けているPure Storage、3月14日には日本市場参入10周年を迎える
ピュア・ストレージ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 田中良幸氏はPure Storageの概況などに関して説明した。その話を始める前に、田中氏は、ホワイトデーに社員の感謝するランチを行った話から始めた。田中氏がそうしたホワイトデーの話をしたのは、別にたくさんチョコレートをもらってお返しが大変だったという話ではなく、実は3月14日がピュア・ストレージ・ジャパンの創立記念日で、本年の3月14日が創立10年を記念する記念日だったからだということだった。
田中氏は「3月14日は弊社が日本市場に参入して10年という記念日だった。本社も設立されてから13~14年が経過しているが、この十数年でビジネスは堅調に成長してきており、今でも2桁成長し続けている。フラッシュメモリに注力しようという創業以来の思いを継続してやり続けているからだと考えている」と述べ、創業以来の同社の戦略であるフラッシュメモリベースのストレージを提供していくという基本は何も変わっていないと強調した。
田中氏によれば、グローバルでは、昨年度(会計年度)の収益は27.5億ドルで、前年比では26%の成長と、2桁成長を引き続き実現しているという。そして顧客企業数も1万1000社を超えており、顧客満足度を示すNPSスコアも81.4を越えるなど、「驚異的」(田中氏)なスコアを引き続き実現している点をアピールした。
そうしたPure Storageの強みについて田中氏は、「フラッシュメモリを採用することでシンプルさを実現し、シックスナイン(99.9999%)という高い信頼性を実現してきたこと、そしてサブスクリプションのような高い柔軟性を実現してきたことが評価されている。そして、最近はマーケットが追い付いてきたというべきか、消費電力が低いことが評価されるようになってきた」と述べ、フラッシュメモリや信頼性、そして柔軟性などに加えて、ウクライナ紛争後に発生したエネルギー危機などの影響もあって、消費電力が低いことが評価されている理由の1つであると述べた。
そして日本市場での傾向に関しては、DX、サステナビリティ、データの保護などがトレンドになっており、金融や通信・クラウド、医療ヘルスケアなどが成長市場になっていると説明した。
CPU入りのFlashBlade//Sを制御用として使い、新しくフラッシュメモリだけのシャシーを追加することで低コスト、低消費電力を実現
ピュア・ストレージ・ジャパン株式会社 アジア太平洋・日本地域担当 プリンシパル・テクノロジスト 岩本知博氏は、今回Pure Storageが発表したFlash Blade//Eに関しての説明を行った。
Pure Storageのストレージ製品にはいくつかの種類があるが、一般的なデータベースやVM(仮想マシン)といった市場に向けて提供されているのが「FlashArray」で、FlashArray//XL、FlashArray//X、FlashArray//Cなどの製品シリーズが用意されている。
また、NVIDIAのAIスーパーコンピュータ向けのAIRIや、Ciscoの“aaS”などの他社プラットフォーム向けとなるFlashStackなど、専用製品も用意されている。
Flash BladeはそうしたPure Storageの中でも、AI、機械学習、アナリティックス、HPCといった、コンピューティングリソースを活用して、データの処理をゴリゴリ行うような処理に向けた製品で、スケールアウト向けの製品となる。
Pure Storageは昨年の6月に米国で開催した年次カンファレンスの「Pure//Accelerate」で、「FlashBlade//S」を発表している。今回発表された「Flash Blade//E」はそれに次ぐ新しいシリーズとなる。
FlashBlade//Sは、5Uのラックに、10個のブレードサーバー(第3世代Xeonスケーラブル・プロセッサーベース)が内蔵できるようになっている。そして、その1つのブレードサーバーに4つのフラッシュメモリのモジュール(DFM:DirectFlash Module)が内蔵される形となる。DFMは48TBないしは24TBとなっているので、計算上は1つの5Uラックで48TB×4×10=1920TB、約2PBという容量が実現できる計算になっている。
なお、FlashBlade//Sのハードウェア的な特徴に関しては以下の記事が詳しいのでご興味がある方はご参照いただきたい。
岩本氏によれば今回新しく発表されたFlashBlade//Eでは、そうしたFlashBlade//Sの特徴を引き継ぎつつ、ハードウェアを簡素化することで、低コスト化を実現し、SAS HDDベースの製品と同じような導入コストを実現しているという。
具体的には、FlashBlade//Eでは、「制御シャシー」と「拡張シャシー」という2種類のシャシーが用意され、ミニマムでは制御シャシー(1)+拡張シャシー(1)という組み合わせで提供される。
また、制御シャシー(1)+拡張シャシー(2)、制御シャシー(1)+拡張シャシー(3)という組み合わせまでをサポートされており、顧客は拡張シャシーが1つだけという最小構成から始め、拡張シャシーを最大で3つまで増やすことが可能だ。
制御シャシーとは、FlashBlade//Sのシャシーそのもので、5Uのラックサーバーに10枚のブレードサーバーが入り、それぞれにCPU(岩本氏によれば、FlashBlade//Eの制御シャシーに入っているCPUはFlashBlade//Sと同じとのことなので、第3世代Xeon SPだと考えられる)が入っている。
拡張シャシーには、ブレードサーバーと同じ形状のブレードが入っているが、ブレードにはI/Oだけが搭載されておりCPUなどはないという。しかし、1つのブレードには4つのDFMが入るのは一緒になるので、最小構成である制御シャシー(1)+拡張シャシー(1)では、制御シャシーの10個のCPUが、制御シャシー自体の40個のDFM、拡張シャシーの40個のDFMを制御する形になる。
最大構成であれば、制御シャシーの10個のCPU、制御シャシー自体の40個のDFM、拡張シャシー(40×3)の120個のDFMを制御する形となり、1つのCPUが16個のDFMを制御する形になる。
これに対してFlashBlade//Sでは、すべてがFlashBlade//Eでいうところの制御シャシーになるので、1つのCPUが4個のDFMを制御する形になるため、処理能力ではFlashBlade//Sの方が優れているのは明白だが、CPUの数は単純計算で2倍、3倍、4倍となり、高コストになってしまうのも理解しやすいだろう。
これを省略し、低コスト化しているのがFlashBlade//Eのアドバンテージといえる。性能面ではFlashBlade//Sにかなわないのは当然だが、「それでもSAS HDDから構成されているシステムに比べて圧倒的な高性能を実現している」との通りで、十分な性能を実現しながらコストダウンを実現した製品というのがFlashBlade//Eの位置づけになる。
消費電力は5分の1になり、運用コストは最大60%削減できる
岩本氏によればこうしたハードウェアの構成を採用することで、FlashBlade//EのGBあたりの単価は「20セント以下」となっており、SAS HDDから構成されるストレージとほぼ変わらないという。また、消費電力が削減できることもFlashBlade//Eの特徴で、SAS HDDのシステムから消費電力が減ることはもちろんだが(消費電力は5分の1に)、設置スペースも5分の1に削減することが可能で、運用コストを最大60%まで削減できると説明した。
岩本氏は「お客さまにご提案させていただくとき、一昔前までは性能要件に消費電力が含まれていることはまれだった。しかし、今は持続的成長性の観点や、エネルギー危機などにより消費電力を性能要件に入れるお客さまが増えている」と述べ、HDDに比べて消費電力が低いフラッシュメモリだけで構成しているPure Storageのシステムはそうした持続可能なデータセンターという今もっとも注目されている課題の解決にも役立つと説明した。
なお、こうしたFlashBlade//Eが受け入れられそうな日本での顧客は「製造業や医療ヘルスケアなどが考えられる。これまで価格競争で(HDDベースのストレージに)負けてきたという経緯があるが、単価が同じレベルになることで、性能や消費電力では圧倒できるのでお客さまに選んでいただけるのではないか」(岩本氏)とのことで、従来はフラッシュメモリではコスト高でカバーできなかったような価格帯の市場を、FlashBlade//Eでは低コストを実現したことでカバーできるようになっており、そこがFlashBlade//Eの強みになると説明した。