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新しいFlashBlade//Sのシャシーは10年先も見据えた設計――、Pure Storage
KDDIがデータセンターのCO2削減に成功し、優良顧客として表彰される
2022年6月10日 00:00
米Pure Storage(ピュア・ストレージ)は8日(現地時間、日本時間6月9日)に、「Pure//Accelerate techfest22」と題した同社の年次イベントを、米国カリフォルニア州ロサンゼルス市にあるL.A. Liveの特設会場で開催した。
6月8日の午前中に行われた基調講演には、同社 会長 兼 CEO チャールズ・ジャンカルロ氏や同社幹部が登壇し、同社のビジョンなどについて説明した。この中でPure Storageは、同日の朝に発表した新製品「FlashBlade//S」や「AIRI//S」、「Evergreen//Flex」などに関して説明したほか、同社の顧客となる日本のKDDI株式会社が、Pure Storage製品の採用によりCO2排出量削減などを実現し、持続可能なビジネスの構築に成功したとして、「Pure Storage Greatest of All Time Breakthrough Award」を授与したことなどを明らかにした。
エネルギーコストの増大などがフラッシュメモリだけを提供しているPure Storageの追い風に
ジャンカルロ会長 兼 CEOは「われわれの会社のミッションは、テクノロジーによりエネルギー効率の改善やデータセンターの必要とするスペースの削減などを実現することで、よりよい世界を実現していくことだ。今回のイベントにはリアルで1000人の参加者が、そしてバーチャルでは約8000人の参加者が参加してくれている」と述べ、Pure Storageのフラッシュメモリによるストレージが、HDDベースのストレージよりもエネルギー効率に優れ、かつスペースもとらない特長を生かして、世界中で課題となっている持続的な成長が可能な社会を実現するためのソリューションになっていると強調した。
ジャンカルロ氏は「われわれの競合は、ストレージをコモディティとしているが、データはコモディティではなく、非常に価値があるものであり、フラッシュストレージは環境を変えていくだけでなく、その大事なデータを管理していく基盤となる。そこにわれわれは大きな成長のチャンスがあると考えている」と述べ、同社はストレージビジネスがコモディティ製品を売るビジネスではなく、ソフトウェアやハードウェアを絶え間なく開発し続けることで、技術革新(イノベーション)を実現するビジネスとして展開していくと考えていることを強調した。
そうした中で、同社のビジネスには3つの柱があるという。それが「クラウドを活用してハイブリッドクラウドなどの環境を実現していくこと、そして難しいことを考えなくても使える簡単さ、そして顧客の体験をよりよくしていくことだ」(ジャンカルロ氏)と述べ、売上に対する研究開発への投資が業界標準は5%にすぎないのに対して、Pureは20%に達しており、それが同社の強みだと強調した。
そして、パンデミックやウクライナ紛争などによりサプライチェーンが機能しなくなったことで、エネルギーのコストが増大しており、特に欧州ではそれが5倍になるなどの大きな影響を受けていることを挙げたうえで、「磁気ディスクからフラッシュに置きかえることで、エネルギー効率やスペース利用効率が改善し、TCOの削減に役立っている。こうした効果は、以前はほとんど誰も気にしていなかったが、ここ数年のESGへの注目度が上がってくることで、企業にとって重要な要素になりつつある」と述べた。
また、エネルギーコストの増大によりストレージ運用のTCOに対する企業の関心度は高まっているほか、さらに世界的なESG(企業における、Environmental、Social、Governance、環境、社会、企業統治などへの取り組みのこと)への関心の高まりにより、多くの企業が磁気ディスクからすべてをフラッシュメモリにしたストレージへの移行を真剣に検討しており、それが同社にとって追い風になっていると強調している。
KDDIのデータセンターが、Pure Storageのフラッシュストレージ採用でCO2削減に成功し表彰される
そして、同氏のパートの最後には「Pure Storage Greatest of All Time Breakthrough Award」と呼ばれる、優れた取り組みを行った顧客を表彰する賞の受賞対象を発表し、米国の自動車メーカーであるフォードなどとともに、日本のKDDI株式会社(以下KDDI)が受賞企業として紹介された。
Pure Storageの発表によれば、KDDIはFlashArrayをストレージとして採用しており、従来のストレージに比較して3倍性能が向上し、データの重複排除・圧縮においては2倍の効率になり、コスト、消費電力、データセンターのスペース削減などを実現したという。
また、データ分析基盤としてもPure Storageが採用されており、FlashBladeを利用して複数のデータウェアハウスを統合し、全国30万台の基地局から集約した非構造化データを取り込むデータレイクを構築しているとのこと。
さらにそうしたデータウェアハウス(DWH)の統合により、電力消費量、必要なスペース、それに伴う二酸化炭素排出量を大きく削減でき、KDDIが2030年までに二酸化炭素実質排出量をゼロにするという目標の達成に寄与するとした。こうした取り組みが評価されて今回のアワード受賞につながったということだ。
今後10年間使い続けられるという新しいFlashBlade//Sのシャシー、内部だけをアップグレードして利用可能に
その後、ジャンカルロ氏に代わり、同社の幹部が登壇し、新しい製品などに関して説明を行った。今回説明されたのは同日に発表されたFlashBlade//S、AIRI//S、Evergreen//Flexなどの各製品になる。各製品の発表概要に関しては、以下の記事が詳しいので、そちらも合わせてご参照いただきたい。
Pure Storage、QLCを採用し容量・性能・電力効率を倍にした新ストレージ「FlashBlade//S」
新しいサブスクリプション「Evergreen//Flex」も提供
https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/event/1415659.html
FlashBlade//Sは、同社が提供しているフラッシュメモリベースのストレージ製品における、スケールアップ向けのFlashArrayとスケールアウト向けのFlashBladeのうち、後者の最新製品となる。
FlashBlade//Sは、2つの点で強化が行われている。1つは採用されているフラッシュメモリがTLC(1つのセルあたりに3ビットのデータを格納できるフラッシュメモリ)からQLC(1つのセルあたりに4ビットのデータを格納できるフラッシュメモリ)に変更されていることだ。最新のQLCはTLCよりも速度が向上しているほか、1つのチップで実現できる容量が増えることで、より大容量が実現できる。
今回のFlashBlade//Sには、DFM(Direct Flash Module)というモジュール形状でフラッシュメモリがブレードに内蔵されるが、1つのDFMで最大48TBを実現することが可能になっている。
また、シャシーも完全に新しくなっており、従来モデルの4Uから5Uに高さが増やされ、1つのシャシーに10個のブレードサーバー(Ice Lake世代のIntel CPU、DRAM、OS用のストレージ、ネットワークなどが搭載されている)が内蔵でき、1つのブレードサーバーに最大で4つのDFMを内蔵することができるため、シャシー全体で最大1920TB、つまり約2PBの容量を実現することが可能になっている。
こうしたFlashBlade//SについてPure Storage FlashBlade担当副社長 アミー・ファウラー氏は「FlashBlade//Sはこの10年で最後の製品になる」と述べ、今後10年は今回発表したFlashBlade//Sのシャシーが利用されること、そしてブレードサーバーやDFMなどの世代が新しくなれば、顧客がEvergreenプログラムなどのサブスクリプションを契約して新世代のものに置きかえ、シャシーが同じでも性能などを引き上げられていくことなどを説明した。
またFlashBlade//Sは、NVIDIAが提供するAIスーパーコンピュータのDGXシリーズと、動作確認などが行われた状態で、「AIRI//S」としてセットで提供されることが発表されている。
このためイベントでは、NVIDIA 製品マーケティング担当上席部長 トニー・ペイクデイ氏が呼ばれ、ファウラー氏と対談を行った。ペイクデイ氏は「1億のオブジェクトや、1兆のパラメーターなどがある巨大なAIモデルを学習させる場合、データスケールの演算性能やそれにふさわしいストレージが必要になる」と述べ、NVIDIAが第3四半期に出荷を開始するDGX-H100や、既に出荷を開始しているDGX-A100などとFlashBlade//Sを組み合わせて利用することが、AIの研究などに大いに役立つと強調した。
またこのほかにも、Pure Storageが買収したPortworx(ポートワークス)が提供するKubernetesプラットフォームに関する説明や、同社のサブスクリプション型の購入方法になるEvergreenプログラムの新しいプランとなるEvergreen//Flexなどに関する説明が行われ、顧客事例としてデルタ航空の事例などが紹介された。
共同創業者は「シンプルイズベスト」をこれからも社是としていくと強調
講演の終盤には、Pure Storage 共同創業者 兼 CVO(最高ビジョナリ責任者)のジョン・コルグロブ氏が登壇し、Z世代のような若者にとっては、生まれたときからフィーチャーフォンやスマートフォンなどがあったことから、ダイヤル式の電話の方が難しくて使えないという「逆説」や、ボーイング747の最初の世代では、コックピットに950ものダイヤルとボタンがあって、運行には機長、副機長以外にフライトエンジニアがいたことなどを紹介して、何事も複雑にするよりは最初からシンプルにしておくことが大事だと強調した。
コルグロブ氏は、「私がPure Storageを創業した当時からこの“シンプルにする”という哲学を重視しており、エンジニアにはそれに注力すべきだといつも口を酸っぱくしていっている。これからもPureの製品は常にシンプルで、簡単に使えて、誰もが容易に使える、それを維持していく」と述べ、製品などを複雑にするのではなく、できるだけシンプルにして顧客にわかりやすい製品作りを維持していくと、同社の技術開発の方針を説明した。