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ヤマハがネットワーク機器に関する年次イベントを開催、UTMやWi-Fi6対応無線AP、マルチギガ対応スイッチなどの新製品を“予告”

 ヤマハ株式会社のネットワーク機器に関する年次イベント「Yamaha Network Innovation Forum 2020」が、11月13日にオンラインで開催された。今回のテーマは「ハイブリッド型ワークスタイル」である。

 その中のヤマハ基調講演では、ヤマハの平野尚志氏(コミュニケーション事業部マーケティング&セールス部 マーケティンググループ 主幹)が登壇。「With コロナのハイブリッド型ワークスタイルを支えるネットワーク構築とは?」と題して講演を行ったが、新型コロナ禍を経てテレワークとオフィスワークを併用する“ハイブリッド型ワークスタイル”の姿や、そこで必要になる企業ネットワークの変化について論じ、対応するヤマハのネットワーク機器を紹介した。

 さらに、2021年春に向けたロードマップとして、ローカル仮想環境向け仮想ルータや、YNOライセンスのオンライン販売、無線LAN製品のWi-Fi 6対応とそれを支えるスイッチのマルチギガ(Gigabit Ethernetを超えるLAN)対応、UTM製品を予告した。

ヤマハ株式会社の平野尚志氏(コミュニケーション事業部マーケティング&セールス部 マーケティンググループ 主幹)

緊急事態宣言が解除されて「ハイブリッド型ワークスタイル」へ

 平野氏は、コロナ禍によってワークスタイルが変化する時系列を、「Beforeコロナ」「Underコロナ」「Withコロナ」「Afterコロナ」の4つに分けて整理した。

 コロナ禍以前のBeforeコロナでは、高密度な環境が効率的だと思われ、テレワークは実験するがオフィスのほうが効率がいいというのが本音という状況だった。しかし、緊急事態宣言下のUnderコロナでは、強制的に在宅勤務になり、いろいろな問題も出てきたと指摘する。

 現在はその次、6月に緊急事態宣言が解除された後のWithコロナにあたる。恐る恐るオフィスワークを再開し、テレワークと併用し、この先どうしようと考えているところだ。そしてニューノーマルな働き方を獲得したときを、平野氏はAfterコロナと定義した。

 Withコロナ以降において、テレワークとオフィスワークが共存するのが、ヤマハの考える「ハイブリッド型ワークスタイル」である。これには、従来どおりのオフィスワークと自宅勤務だけでなく、シェアオフィスで働くテレワークや、サテライトオフィスでのオフィスワーク、会議室でのリモート会議なども含まれる。

 そして、これまで1つの箱に多くの人を入れて管理する従来の働き方から、一人一人が小さい箱にいて、ビジネスコミュニケーションツールを使って仮想的な職場を作る流れになるという働き方の将来像を平野氏は語った。

Beforeコロナ、Underコロナ、Withコロナ、Afterコロナと変化
ハイブリッド型ワークスタイルの分類

ハイブリッド型ワークスタイルのためのネットワークとヤマハ製品

 続いて、こうした働き方の変化に対してネットワークはどうするかというヤマハの考えだ。

 経緯として平野氏は、ヤマハが緊急事態宣言の翌日に「テレワーク相談窓口」を開設したことを紹介した。やがて、オフィスワークが再開されるにつれて、「オフィスに出勤したがオフィスのネットワーク環境をどうしたらいいか」というような相談が増えてきたという。そこからハイブリッド型ワークスタイルの提案が必要と考えるようになったと平野氏は説明する。

 ポイントは3つ。「通信の安定性」と、VPNなどの「情報セキュリティ」、ネットワーク管理者もテレワークするという「ネットワーク管理」だ。

 1つめのポイントは通信の安定性。まずテレワークの場合、遠隔会議や子供の遠隔授業がどんどん使われると、「趣味で使っていたインターネットに比べて急激にデータ量が増える」と平野氏。

 そこで、まずリビングでは、家庭のWi-Fiが古い規格の機器であれば、新しい規格の機器にアップデートする必要がある。また、書斎で仕事すると、壁ごしにWi-Fiにアクセスして性能が若干落ちるため、有線LANを用意することもある。さらに、こうした家庭のLAN環境を安定させるには、セッション数などルータに負荷がかかる。

 こうした条件に対して平野氏は、ヤマハのネットワーク機器の中から、Wi-Fiアクセスポイント(AP)のWLX212と、ブロードバンドルータのNVR510を紹介した。

 同じく通信の安定性で、オフィスワークの場合は、まずリモート会議用に会議室を増やした場合に、Wi-Fiが干渉する場合に備えて有線LANを会議用に用意することになる。また執務エリアは、フリーアドレスになるとWi-Fiが有効になる。

 この条件に対してはヤマハのネットワーク機器の中から、スマートL2スイッチのSWX2210-16Gと、Wi-Fi APIのWLX212を紹介した。

通信の安定性:テレワーク
通信の安定性:オフィスワーク

 2つめのポイントは情報セキュリティ。まず自宅やシェアオフィスからのリモートVPNについては、これまで拠点間で使っていたヤマハVPNルータをリモートアクセスにも活用することを平野氏は提唱した。

 また、場所にとらわれない働き方をしていくと、サーバーなどをクラウドに移していくクラウドシフトが進む。このとき、いままでの拠点間接続と同様にVPNでパブリッククラウド環境に接続するために、ヤマハが提供している仮想ルータvRXを平野氏は紹介した。

情報セキュリティ:リモートVPN
情報セキュリティ:クラウド環境とのVPN

 3つめのポイントはネットワーク管理。「遠隔地やサテライトオフィスが増えて、小さい規模のオフィスが分散するようになると、そういう拠点をどうネットワーク管理するかが問題になり、クラウド型管理サービスが重要となる」と平野氏。ヤマハのクラウド型ネットワーク管理サービス「YNO(Yamaha Network Organizer)」では、LANの隅々までどのようになっているかが見えるため、ネットワーク管理者が自宅からYNOを通してLANの回線状態を把握しトラブル個所を特定できると氏は説明した。

ネットワーク管理:YNO

クラスター型管理に対応したWLX212を紹介

 ここであらためて、2020年に発売されたWi-Fi AP新製品の「WLX212」が紹介された。平野氏はWLX212で目指すものを「安心して、ばら撒ける無線AP」と説明する。

 特徴としては、まず既設Wi-Fi APを“ポン付け”でリプレイスできることがある。消費電力を従来機種と同程度に抑えているため、PoEで使っているところでも交換しやすく、それによってIEEE 802.11ac wave 2に対応できる。

 続いて、さまざまな環境に適用できること。色や、設置場所、アンテナのパターン(指向性・無指向性)を選べるようになった。「理想は天井や壁付けだが、机の上とか棚の上とかに置かれることも多く、そのときにきちんと性能を出すのが難しかった」と平野氏。そこで、あらゆる状況に対応できるようにしたという。

 3つめの特徴は、管理負担の軽減。同じネットワークセグメントに2台目以降をつなぐと自動的に設定がなされる、クラスター型の管理機能が採用された。

 また、YNOからの管理にも対応。これまではヤマハルータ配下に設置してYNOからヤマハルータ経由でアクセスする必要があった。WLX212はYNOから直接管理でき、電波状況も見えるようになった。「ネットワーク管理者のコロナ対策になると思う」と平野氏は語った。

WLX212の特徴
YNOから直接WLX212を管理できる

Wi-Fi 6やマルチギガスイッチ、UTMなどこれからの新製品ロードマップ

 ここから話は、「今冬の予定」ということで今後の製品のロードマップの紹介に移った。

 1つめは、ローカル仮想環境で仮想ルータのvRXが動くようになることだ。「オンプレミスサービスを仮想環境化していくときに、物理ルータを仮想ルータに変えていけるようになる」と平野氏。また、物理ルータではリモートVPNの上限が決まっていれば、仮想ルータであれば簡単に台数を増やしてスケールできるというメリットもあるという。なお、このvRX VMware版は11月18日に発表された

ローカル仮想環境で仮想ルータのvRXが動く
オンプレミスサービスの仮想環境化に利用できるという
VPNのスケーラビリティ向上に利用できる

 2つめは、YNOライセンスのオンライン販売を始めることだ。これまではオンラインで購入できず、また契約期間が1年単位だったこともあり、ちょっと使うのが難しかったりした。そこへ新しく、オンラインでライセンスが買え、月額後払いに対応する。「オンラインで購入できれば、感染リスクを抑えながら、必要なときにすぐ使える。使っていて、お客さま都合で通常のものに切り替えることもできる」と平野氏は説明した。

YNOライセンスのオンライン販売

 3つめは「LAN products over Giga(ギガを超えるLAN製品)」、つまりWi-Fi APのWi-Fi 6対応と、その土台となるスイッチのマルチギガ対応だ。

 「Wi-Fi 6への対応は、APを用意すれば済むものではない。LAN全体が再構成されなくてはいけない」と平野氏。Wi-Fi 6に対応するには、4x4 MIMOで5GBASE-T以上、2x2 MIMOで2.5GBASE-T以上のマルチギガネットワークが必要になるという。また、PoE給電もPoE++レベルが必要になるという。

 その製品として、まずWi-Fi APについては、WLX402と同じクラスにおいて、クラスター管理&YNO対応で、Wi-Fi 6対応の製品を出す予定。「2021年の春ぐらいに出していきたいなと思っている」(平野氏)

 またマルチギガ対応スイッチとしては、スタンダードL3スイッチ、PoE++対応のインテリジェントL2スイッチ、PoE++対応のPoEインジェクターの3製品を予定。「こちらも2021年春を目指していく」(平野氏)

「LAN products over Giga」
Wi-Fi 6に必要なマルチギガLANとPoE
Wi-Fi 6対応APの新機種予定
マルチギガ対応スイッチの新機種予定

 4つめとしては、従来のファイアウォール(FWX120)の上位的な位置づけで、UTM製品を予定している。「偉い人が小さいオフィスで働くようになると、そこがターゲットになることもありうる。そのため、高度な防御機能が小さいオフィスに求められる。そこに向けてUTMを出す」(平野氏)。なおUTM製品は2製品を予定しているとのことだが、その詳細は語られなかった。

従来のファイアウォールの上位的な位置づけでUTM製品を2機種