イベント
日本マイクロソフトの開発者向けイベント「de:code 2019」開催、最新のAIやクラウドなどを紹介
2019年5月30日 06:00
日本マイクロソフト株式会社は5月29日・30日の2日間、東京・芝公園のザ・プリンスパークタワー東京において、開発者向けイベント「de:code 2019」を開催している。
6回目となる今回は、AIやMixed Reality(MR)、サーバーレスコンピューティング、コンテナ、IoTをはじめとする「今すぐ使えるテクノロジー」と、「未来を創るテクノロジー」を、知り、学び、体験できるセッションや展示などを用意。さらに、5月6日~8日に、米国シアトルで開催された開発者向けイベント「Microsoft Build」で発表された内容も紹介した。
また基調講演では、日本マイクロソフトの平野拓也社長に加えて、米Microsoftから、Microsoft 365担当 コーポレートバイスプレジデント(CVP)のジャレッド・スパタロウ氏、Azure担当CVPのジュリア・ホワイト氏、テクニカルフェローのアレックス・キップマン氏が登壇した。
さらに、AIやクラウド、セキュリティ、デベロッパーツール、データプラットフォームなどの10個のトラックで構成されるブレイクアウトセッションも開催。講義やチョークトーク、ハンズオンラーニングなどのさまざまな形式による、150を超えるセッションが行われた。
EXPOエリアでは、日本マイクロソフトとスポンサー企業による最新のテクロノジーやソリューションを展示。オープンシアターセッションや最新テクノロジーショーケース、タッチ&トライ、HoloLens 2のデモ体験コーナーなどが用意された。HoloLens 2の体験は、今回が日本で最初となり、抽選により当選した1日あたり32人の来場者だけが体験できた。
開発者やITエンジニアが社会から必要とされている時代が訪れている
開催初日の午前9時30分から行われた基調講演で、日本マイクロソフトの平野社長は、「いまや、AIは一部の人のものではなく、多くの人が使えるものになっており、あらゆる産業で使われ、生活のなかでも生かされている。つまり、開発者やITエンジニアには大きなオポチュニティがあり、社会から必要とされている時代が訪れているともいえる」とする。
また「マイクロソフトは、Microsoft Azure、Microsoft 365、Microsoft Dynamics 365 & PowerPlatform、Microsoft Gamingという4つのクラウドプラットフォームで展開していくことになる。レッドハットやアドビシステムズ、VMware、ソニーなどとの連携を相次いで発表しており、これらは当社がオープン路線を推進することを象徴するものになる。ソニーとの提携発表の場には私もいたが、両社のCEOが和気あいあいに話をしており、私もエキサイティングした」などと述べた。
このほか、具体的な導入事例として、トヨタ自動車がMRを利用し、保守作業における効率化やサポート品質維持などに活用していることに言及。2019年中にはHoloLens 2を導入して、3Dの作業手順書などを全国に展開していくことを紹介した。
リテール分野向けでは、次世代店舗モデル「Smart Store」リファレンスアーキテクチャによって、小売店向けの標準アーキテクチャを提供し、リテールにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を促進することができるとした。
さらに、2016年に創業したアセントロボティクスとの協業を発表。Azureを活用してAIソフトウェアを開発し、自動運転や産業用ロボットの実用化を支援することになると説明する。
アセントロボティクスの石崎雅之社長は、「自動運転の実現に向けて、AIを活用。仮想空間、機械学習、説明可能という当社の3つの特長を生かしたい。そのためには、優れた技術が必要である。Azureには、90以上のセキュリティ認証、幅広いAI技術が提供されている。これを活用していくことになる」とした。
人を中心にして働き方を変えていけるMicrosoft 365
続いて登壇した米MicrosoftのスパタロウCVPは、「ITは、過去20年間にわたって働き方を変えてきた。最初はアプリケーションを使った働き方の変革であり、それを実現するためには、たくさんのコマンドを覚えなくてはならなかった。その後、デバイス中心の活用になり、スマートフォンを使って簡単に利用できるようになった。だが、こうした複数のイノベーションを統合し、生産性を再定義する時代が訪れている。それは、アプリ、デバイスでクラウドサービスを活用することで、人に焦点を当てた使い方ができるようになり、生産性を上げ、楽しい人生を過ごせるようになるということでもある。Microsoft 365は、人を中心にして働き方を変えていけるものになる」などと述べた。
ここでは、Microsoft 365においてAIを活用し、仕事の生産性を大幅に高めることができる事例をデモンストレーションしてみせた。
さらに、APIサービスのMicrosoft Graphについても説明。自社のデータを常にコントロールし、検索、分析、自然言語処理などのサービスを提供しており、より生産性を高めることができるとした。
このほか、Windows上でJavaScriptのコードを再利用できるReact Nativeを、Microsoft Buildで発表したことに触れ、「JavaとWindowsを結びつけるもの。Windowsエコシステムを強化するものになった」と位置づけた。
また、新たなWindows Terminalを紹介。「複数のシェルを統合し、開発者が使いやすいボックスとして提供した。タブ、テーマ、ショートカット、ユニコードをサポートしており、オープンソースとしてGitHubで提供している」と説明した。
そのほか、Linux 4.19カーネルをWindowsで利用できる「Microsoft Windows Subsystem for Linux 2(WLLS2)」、共同作業の強化やボットの活用などを実現する「Fluid Framework」や、新たなMicrosoft Edgeの機能、強化されたMicrosoft Teamsなど、Microsoft Buildで発表された製品、サービス、機能を紹介した。
Microsoft Azureの最新トピックを紹介
続いて、MicrosoftのホワイトCVPは、「Azureは、すべての言語、あらゆるOS、すべての開発者をサポートし、すばらしいアプリを開発できる環境を整えている。またAzureは、包括的なハイブリッドアプリの開発を当初からターゲットにしてきた。フォーチュン500社の95%以上がAzureを利用している」と切り出す。
その上で、新たに発表したブラウザベースの開発支援ツールVisual Studio OnlineやVisual Studio 2019などのVisual Studioファミリと、マルチクラウドやハイブリッドクラウドをサポートし、YAML定義のCI/CDを使用した統合パイプラインを提供するなど、効率的な共同開発を進めることできる「Azure DevOps」を紹介。
3600万人以上の開発者が参加している世界最大の開発者コミュニティ、GitHubとの連携などについても説明した。
「最近は、GitHubとAzure Active Directoryをセキュアな環境での同期サポートにより、2億以上の企業ユーザーの利便性を向上させることができる。また、GitHubアカウントによるAzureへのサインイン、Visual StudioとGitHub Enterpriseの統合サブスクリプションの提供などを行っており、開発者をサポートしている」とした。
そのほか、Azure API Management統合機能により、FunctionsをサーバーレスAPIとして定義できる「App Service on Linux」、フルマネージドのKubernetesオーケストレーションである「Azure Kubernetes Service(AKS)」や「AKS向けサーバーレスコンピューティング」、Kubernetesベースのイベント駆動型自動スケール「KEDA」などに加えて、Azureエッジデバイスを紹介。スターバックスで採用している「Azure Sphere」や「Azure IoT Central」、「Azure IoT Plug & Play」、「Azure Kinect」などをデモンストレーションした。
「数百社のパートナーから、数千のAzure認定デバイスが提供されている」(ホワイトCVP)。
さらに、学習済みAIであるAzure Cognitive Serviceが、コンテナの併用によってあらゆる場所で利用できるようになること、カスタムAIであるMicrosoft Machine Learningは、1台のサーバーから数十万台までの規模で学習が可能であり、新たにFPGAを使用したハードウェア高速化モデルを提供できることなどを紹介。
また、Azureのデータベースサービスについても触れ、ストレージのスケールアウトが無制限に拡張できる「Azure SQL Database Hyperscale」、最新版のPostgreSQLとの互換性を持った「Azure Database for PostgreSQL Hyperscale」、パフォーマンス単位や秒単位で課金を行う「Azure SQL Database サーバーレス」、ARMプロセッサ環境に最適化した「Azure SQL Database Edge」を紹介した。そのほか、Azure Cosmos DBやPower BIの新機能にも触れている。
最後に登壇したのが、HoloLensの生みの親としても知られる、Microsoft テクニカルフェローのキップマン氏である。
キップマン氏は、Microsoft Buildで発表した最新のHoloLens 2について紹介。MEMSレーザーディスプレイ、アイトラッキング、深度センサー、連結式ハンドトラッキング、Windows Helloによる光彩認証、新たなホログラフィックプロセッシングユニットなどの機能を搭載するとともに、視野角を2倍にしたこと、快適性を3倍に高めたこと、オープンな開発環境を提供したことなどに触れた。
キップマン氏は、「さまざまな頭のサイズや形状、民族や性別にあうようにデザインをしている。また、デバイスが大型化しないように工夫を凝らしている」とした。
そしてキップマン氏はHoloLens 2を装着し、MRにおいて自身のアバター同士を戦わせたり、アバターが日本語を話したりといったデモを行った。
また、HoloLensに最適化した「Dynamics 365 Remote Assist」「Dynamics 365 Layout」「Dynamics 365 Guides」といったアプリケーションによって、製造現場などにおいて、MRの活用が促進できる環境が整っていることを強調した。
「MRで重要なのは、エコシステムがオープンでなくてはならないという点だ。2019年中に提供できる形で、開発者向けに99ドルのパッケージを用意した。すべてを試すことができる」とした。
基調講演は、当初の予定時間を大幅に超過し、約3時間に達した。