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“デベロッパーによるデベロッパーのためのイベント” Oracle Code Tokyo 2019が開催

基調講演レポート

 日本オラクル株式会社は17日、東京・白金台のシェラトン都ホテル東京で、「Oracle Code Tokyo 2019」を開催した。

 「デベロッパーによるデベロッパーのためのイベント」というコンセプトで開催されているOracle Code Tokyo 2019では、トップエンジニアによる基調講演や、最新技術動向やユースケース、トレンドに関する各種セッションを実施。デベロッパーをはじめ、ITに携わるすべてのエンジニアに最新情報を提供できるイベントに位置づけられているほか、オラクルのクラウドに関する最新技術についても説明が行われた。

 なお今年のテーマは、「未来を創造する最新テクノロジーを今、あなたの手に」となっている。

Java SEが広く使われているのは偶然ではない

 午前10時から行われた基調講演では、Javaの開発を統括する米Oracle Java Platformグループ担当のジョージ・サーブ(Georges Saab)バイスプレジデントが、「Javaの未来」と題した講演を行い、Javaの提供する価値と今後の方向性に関して話した。

米Oracle Java Platformグループ担当のジョージ・サーブ バイスプレジデント

 サーブ バイスプレジデントは、「Java SEが広く使われているのは偶然ではない。多くの人が、意識的に、どう進化させるのかというを考えてきたからである。Javaはクラウドに最適化し、これからも進化を遂げ、優れたものを届けていくことになる」と切り出した。

 その上で、「だが、進化の仕方は大きく変わっている。Java 8までの進化は3~4年に一度行われてきたが、Java 9に進化した2年前から、より迅速な移行へとシフトし、6カ月ごとに新たな機能を搭載したリリースを行えるようになった。これは世の中の変化にあわせたものであり、イノベーションを開発者の手元にすぐに届けることができるようになった」とする。

 そのなかではさらに、「だが、新たなものを提供することで、いま動いているワークロードに影響を及ぼしてはいけない。そこで、長期間にわたって利用できるLTS(ロングタームサポート)を提供している。8年間届けることで、新たな機能を本番環境へと移行させることをサポートできる」としたほか、「昨年から、開発者の声を反映してJava SEのサブスクリプションモデルを提供し、柔軟性や拡張性を実現。必要なときに必要な費用を支払い、さらに最新の機能やセキュリティパッチも利用できる。非常に評判がいいものである」とした。

サブスクリプションモデル

さまざまな新機能を紹介

 こうしたこれまでの取り組みを振り返ったあと、未来へのイノベーションへの取り組みとして、新たな機能を提供するプロジェクトについて紹介した。

 具体的には、ツールの活用によって、マニュアル作業のステップを大幅に削減することができる「Project Panama」、効率的なメモリレイアウトが可能になる「Project Valhalla」、軽量スレッドや継続などをJavaに導入できる「Project Loom」、Java言語を進化させ、生産性を高められる「Project "Amber"」、JITコンパイラをJavaに実装したりする「Project Metropolis」、超低レイテンシを実現するGarbage Collector(GC)「Project ZGC」について説明している。

 会場では、Project Panamaのデータをまとめて演算するVector APIと、Project Loomの軽量スレッドであるFiberを利用して、画像処理のデモを行った。

Javaで推進されている各種プロジェクト
Project Panama
Project Loom
Project ZGC

 また新たな技術として、Graal VMについて説明。Oracle Labsのエリック・セドラー(Eric Sedlar)バイスプレジデント兼テクニカルディレクターは、「一度コードを書けば、Graal VMによって、JavaやPythonなどのどんな言語でも動かすことができ、SparkやHadoopなどのフレームワークや、NumPy、SciPyなどのデータプロセシングも使うことができる。コードをどんなフレームワークやエンジンにも組み合わせることができる」と述べた。

Graal VM
Oracle Labsのエリック・セドラー バイスプレジデント兼テクニカルディレクター

 最後に、サーブ バイスプレジデントは、「われわれは、思慮深くJavaの進化に取り組んでいる。現在、有望な技術的ロードマップを持ち、エキサイティングなプロジェクトも走っている。こうした取り組みを見てもらい、開発者からの継続的なフィードバックを期待している。それによって、Javaの堅牢性を高め、意義のある進化につなげたい。あと20年間は、堅牢なものとしてJavaを提供したい」などとした。

ほかのコミュニティや開発者に寄り添えていなかった反省がある

 なお、基調講演の冒頭にあいさつした日本オラクル 執行役員 オラクル・デジタル本部長の本多充氏は、「日本オラクルは、ほかのコミュニティや開発者に寄り添えていなかった反省がある。今年のイベントでは、さまざまな方に参加してもらい、従来のオラクルのイベントには参加してもらえなかった方々にも講演をしてもらっている。また、MySQLのユーザーグループとオラクルのユーザーグループが、ひとつのイベントに並んで参加するのも、これまでに例がない試みである。このイベントの開催をうれしく思っている」とした。

日本オラクル 執行役員 オラクル・デジタル本部長の本多充氏

 また、「トップエンジニア対談~テクノロジーで創る未来~」と題した基調講演も行われ、ウルシステムズの漆原茂社長がモデレータとなり、ティアフォーのチーフエンジニアであるジェフリー・ビッグス氏、ソラコム 執行役員 プリンシバルソフトウェアエンジニアの片山暁雄氏が登壇。オープンソースを活用した自動運転や無人運行する小型バスの事例などを紹介。テクノロジーが創る未来やその未来に向けたエンジニア像などについて対談形式で講演したほか、会場から寄せられた質問にも答えた。

「トップエンジニア対談~テクノロジーで創る未来~」と題した基調講演を行った、(左から)ウルシステムズの漆原茂社長、ティアフォーのジェフリー・ビッグスチーフエンジニア、ソラコム 執行役員 プリンシバルソフトウェアエンジニアの片山暁雄氏