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Microsoft、Build 2020でAzure向けの新しいサービスを発表

Azure Synapse Link、Responsible machine learning、新AIスパコンなどを提供へ

 米Microsoftは、5月19日午前8時(米国時間、日本時間5月20日午前0時)から5月20日にかけて、同社の開発者向けイベント「Build 2020」を開催している。

 本来であれば、同社の本社がある米国ワシントン州シアトルなどで開催される予定だったBuild 2020は、COVID-19の世界的な感染拡大により、デジタルイベントとして形を変更して開催されている。

 5月19日には、Microsoftのサティア・ナデラCEOなど、同社幹部が登壇した基調講演がストリーミング中継の形で行われている(同社のWebサイトから視聴可能、オンデマンドでの再生も対応)。

 この中でMicrosoftは同社のパブリッククラウドサービス「Microsoft Azure」に関する発表を多数行った。まず、データベースを利用したアナリティクスサービス「Azure Synapse Link」の提供開始を発表。またAzure Machine Learning向けには「Responsible Machine Learning」と呼ばれる新しいツール群を提供したほか、Azure AIでデータサイエンティストなどが学習に利用できる新しいAIスーパーコンピュータを、同社のデータセンターに導入したことを明らかにした。

データベース分析サービスのAzure Synapse Linkの提供を開始、まずはAzure Cosmos DBで無償で利用可能

Azure Synapse Linkの仕組み

 Microsoftが発表した「Azure Synapse Link」は、Hybrid Transactional Analytical Processing(HTAP)が実装された、クラウドネイティブなデータベースアナリティクス(分析)サービス。

 このAzure Synapse Linkを利用することで、「Azure operational database services」と「Azure Synapse Analytics」の間にあった壁が取り払われ、顧客が運用しているデータベースに保存しているリアルタイムトランザクショナルデータの分析を、データの移動管理やOSに負荷をかけることなく、1クリックで得ることが可能になる。具体的には、オペレーショナルデータベースに用意されているボタンをクリックすると、Azure Synapse Linkがデータを生成する形になっている。

 Azure Synapse Linkに対しては、自動かつ継続的にオペレーショナルデータが渡され、インデックスに近い形に変換されたデータが柱状構造に最適化される。これにより顧客は、複雑なデータベースの演算リソースを必要とせず、データアナリティクスのワークロードをリアルタイムに低コストで行うことが可能になる。

 Microsoftによれば、Azure Synapse LinkはAzure Cosmos DBにおいて本日より提供が開始されており、無償で利用できる。また、「Azure SQL」「Azure Database for PostgreSQL」「Azure Database for MySQL」のようなほかのオペレーショナルデータベースサービスサービスでも、将来的に提供が開始される予定。

・Azure Cosmos DB
https://aka.ms/cosmosdb-analyticalstore
・Azure Synapse Analytics
https://azure.microsoft.com/en-us/free/synapse-analytics/

Azure Machine Learning向けの新ツール、TOP500でTOP5に相当する性能を持つAIスパコンを導入

Responsible Machine Learningの仕組み

 Microsoftは、マシンラーニング(機械学習)ベースのAIサービスである「Azure Machine Learning」をAzure上で提供しているが、その新しいツールキットとして「Responsible Machine Learning」を発表した。

 これを利用することで、AIの開発者は、マシンラーニングのソフトウェアを開発する各段階で、自分のモデルをよりよく管理したり理解したりということが、これまでよりも迅速に行えるようになる。さらに開発者は、Azure Machine LearningやGitHub上にあるオープンソースのコードなどに効率よくアクセスし、自分のコードに取り込めるという。

 用意されているのは、InterpretMLツールキット、Fairlearnツールキット、WhiteNoiseツールキットなど。例えば、GitHubを通じてオープンソースのコードとして提供されるWhiteNoiseツールキットでは、大学機関と協力して開発された「differential privacy」(異なるプライバシー)機能が用意されている。

 病院でAIを活用すると、プライベートデータから保険の情報は見えても、生年月日や名前などのデータはAIに提供しないなどの対応が可能になり、AI向けのデータから個人情報が漏えいしないようにすることが、簡単にできるようになる。

・Responsible machine learning
https://aka.ms/Build2020_ResponsibleML

 またMicrosoftは、2019年7月22日に発表したOpenAI社とのパートナーシップに基づき構築された新しいスーパーコンピュータのサービスを、Azureで提供していくことを明らかにした。

 今回MicrosoftがOpenAIと共同開発したスーパーコンピュータは、28万5000基のCPU、1万基のGPUから基づいており、それぞれのGPUサーバー間は400Gbpsのネットワークで接続されている。その性能の具体的な数値は明らかにされていないが、MicrosoftによればTOP500(スーパーコンピュータの世界的なランキング)のトップ5に入る性能を備えているという。

 Microsoftはこれを、マシンラーニング(そして、それに包含されるディープラーニング)の学習用途に使う計画で、学習に従来の15倍大きな学習モデルを使って演算させても、10倍高速に演算することが可能になる。

AIスーパーコンピュータのイメージ

医療機関向けDXサービスとなるMicrosoft Cloud for Healthcare、Teamsの拡張などが発表

 COVID-19の世界的な感染拡大を受けて、世界各国で医療関連のリソースの逼迫(ひっぱく)は大きな問題となっている。そうした中で、いわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)の医療関連への拡大が注目されており、日本でもセールスフォースが船橋保健所のDXを支援することなどが話題を読んでいる(別記事参照)。

 もちろん、そうした動きは日本だけでなく米国でも注目を集めており、Microsoftは今回のBuildにおいて、医療機関向けのクラウドサービス「Microsoft Cloud for Healthcare」を発表した。パブリックプレビューの提供を開始し、今後6カ月間、無償で試用できることを明らかにしている。

 Microsoft Cloud for Healthcareは、すべてがクラウドベースで提供され、患者との意思疎通の拡充、医師や看護師などの医療チームのコラボレーションの拡充、日々のオペレーションや医療データの分析拡充、セキュアで信頼性のあるクラウド経由でのサービス提供、外部パートナーとのコラボレーション機能などが用意されている。

 また、Microsoftは同社のクラウドベースの生産性向上ツール「Microsoft 365」に関するアップデートも行い、テレワーク関連として注目を集める「Microsoft Teams」の機能拡充などを明らかにした。

 具体的には、チーム(Slackで言うところのチャネルのようなもの)向けのカスタマイズ可能なテンプレートが用意され、例えば病院向け、銀行向けといった形で産業別に用意される。

 このほかにも、チームメンバーをサポートするチャットボットを簡単に作れる機能、自動化ワークフローを簡単に追加できるオートメーション機能などが追加される。