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次に来る技術は何かを見極める――、近未来のネットワーク「ShowNet」レポート
2018年もさまざまな最新技術を実装
2018年6月18日 12:00
2~3年後のネットワーク技術を安定提供
Interop Tokyoは展示会であると同時に、各社が最新のネットワーク機器を持ち込んで相互接続性や新技術をテストしデモする場でもある。そうした近未来のネットワークを、出展社や来場者の実用ネットワークとして提供している。
これは「2~3年後に業界に浸透する最新技術を実装」し、それを「来場者・出展者に安定して提供する」という相反する性格を持っていると、遠峰隆史氏(ShowNet NOCチームメンバー ジェネラリスト/国立研究開発法人 情報通信研究機構)は語った。
今年のテーマは「Dive into the Next」。5Gなど新しい技術やサービスが開始されようとしている中で、そうした「次に来るもの」を考えながら次に備えることを意味するという。
今回の規模は、各社から提供(コントリビューション)された機器やサービスが約2600台。スタッフがのべ450名で、その内訳はNOCチームが27名、一般公募によるSTMと企業からのCTMが合わせて35名、コントリビュータが388名。このメンバーが6月1日より幕張メッセに入り、6月8日まで事前検証し、6月9日から全体にネットワークを構築した。
そのネットワークは、UTPケーブルが総延長約27.22kmで、光ファイバーが約5.6km。総電気容量は、100Vが約169kWで、200Vが約70kW。
各社からは、毎年、世界初となる機材類がコントリビューションされる。今年も、TIS/あくしゅのインフラ運用テスト基盤「LiquidMetal」や、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)のソフトウェアベースの100Gigabit Ethernet(GbE)対応コアルータ「Kamuee」、ジュニパーネットワークス(以下、ジュニパー)のルータ「MX10008」などが世界で初めて投入されたという。
今年の各トピックでは、以下のようなものが利用されている。
・L2/L3:サービスチェイニング
・ワイヤレス:802.11ac wave2 とNBASE-T/MGBASE-T
・セキュリティ:サービスチェイニングによる柔軟で多様なセキュリティ機能の提供
・モニタリング:アラートの集約やツール間連携の加速
・DC/サーバ:ハイパーコンバージドインフラ(HCI)&コンテナによるスケール可能やインフラ基盤、NVMeを活用した高速ストレージ
・ファシリティ:次世代25G/100Gメディア
・IoT/クラウド:LPWAや仮想モバイルコア
コアネットワークに100GbE対応ソフトウェアルータKamuee投入
展示会場のShowNetブースでは、1~20まで(11は欠番)の番号が付けられた19のラックに、ShowNetを構成する機材が収められていた。
ラック1~4は「エクスターナル接続/バックボーン」だ。今回のShowNetから外部への接続は、NTT ComのGlobal IP NetworkでOCN/NTT.netに100GbE×2(その先にNICTやJPNAP、IIJなど)、BBIXに100G(その下にソフトバンクなど)、NTT ComのArcstar Universal OneでSDN-IXのPIX-IEに10G(その下にJPIXやKDDI、ブロードバンドタワーなど)という3系統となっている。
これらの回線が、ラック1~2に接続している。
なお、ラック前の床には、エクスターナル接続の図と、実際のエクスターナル接続ケーブルが見えるようになっていた。
こうしたエクスターナル接続から直接つながるコアネットワークが、ラック3~4に収められている。ここには、世界初披露となるジュニパーのMX10008をはじめ、各社のコアルータが並ぶ。
その中でも、NTT Comが開発したソフトウェアベースの100G対応コアルータ「Kamuee」が、コアネットワークで実働していたのは特筆すべき点だ。
サービスチェイニングやモニタリングを強化
ラック5~6は「サービスチェイニング」。セキュリティやCGNといったネットワークのサービス(ファンクション)を集めておき(プール)、ネットワークの制御によって必要なサービスを必要な順番でつなげて(チェイニング)利用する。
昨年もサービスチェイニングは試みられていたが、今年はバックボーンネットワークのラック5~6と、データセンターネットワークのラック17という3つのファンクションプールで構成。トンネリングにより3ラックとも同等に利用される。
ジュニパーのMX204でサービスをルーティングし、Dell EMC Z9100-ON/Cumulus Linuxでファンクションプール間を接続する。
ラック7~9は「セキュリティ/モニタリング」だ。ラック7がモニタリング、ラック9がセキュリティで、その間のラック8が両者となっている。Nirvana 改弐もここに収められている。
今回はShowNet全体のトラフィックを監視する機器をいくつか導入している。外から中へのトラフィックはラック9などで脅威を検出し、中から外へのトラフィックはサービスチェイニングで検出している。
LTE仮想モバイルコアやLoRaWAN
ラック10は「ワイヤレス」だ。無線LANコントローラや、LoRaWANのネットワーク、PTP(Precision Time Protocol)の時刻同期などがここに入る。無線LANコントローラとしては、ラック内のほか、Cisco Merakiのクラウド型、UNIFASのハイブリッド型コントローラも使われていた。
今年の新しい試みとしては、「さくらのセキュアモバイルコネクト」により、IoT機器向けのLTEのMVNOサービスを仮想モバイルコアで構築していた点が挙げられる。ShowNetブースの要所要所やPODには、来場者証のQRコードをかざすとチェックインするチェックポイントが設けられており、この回線を利用しているとのことだった。
また2017年と同様に、阪神ケーブルエンジニアリングによる地域BWA(Broadband Wireless Access)と会場のLTE基地局を閉域網接続するネットワークも設けられた。なお、ShowNetブースの裏に設けられた基地局の隣には、NECによる5Gの基地局も置かれていた。
出展社収容に群集検知システムも
ラック12~14は、バックボーンと出展社などをつなぐ「出展社収容」だ。
ラック12は、ブースを接続する「ホール向けネットワーク」。ここでは、ジュニパーのスイッチ複数台を「Junos Fusion」で統合することで、ホールの全ユーザーを直接収容し管理工数を減らす、といったことがなされていた。
ラック13は「バックボーン解析・検知」。ここではAlaxala AX-TAP-86でトラフィックをタップして、可視化やセキュリティ装置に送っている。
また、ラック13にはNECの群集検知システムも収められている。ShowNetブース入り口付近に設置されたカメラの映像を受け、人の密度をヒートマップ表示したり人数をカウントしてグラフ表示したりしていた。
ラック14は、スタッフなどが接続する生活ネットワークが収められている。L1~L3を統合制御するマルチレイヤSDNコントローラにより、ネットワークを適宜つなぐという。
セグメントルーティングやNVMe over Fabricを実験
ラック15は「テスタ」。ネットワーク負荷試験やセキュリティ負荷試験の機器が収められている。ネットワーク上の各所との間はあらかじめ線を引き、NETSCOUTのL1スイッチに集約してある。
ラック16は「ファシリティマネジメント」。ラック間の配線を集約して相互接続するパッチパネルだ。
ラック17~20は「クラウド/データセンタ」だ。
ラック17はラック5~6と同じく、サービスチェイニングのためのファンクションプールだ。またここでは、データセンターのラックで動くコンテナ間の接続をSDNで管理する、ジュニパーのContrail Enterprise Multicloudも収められている。
ラック18は次世代ルーティング技術であるセグメントルーティングの相互接続検証だ。各社のセグメントルーティング対応製品を相互接続して検証している。まだ新しい技術なので、ここまでの大規模でのベンダー間相互接続はまだあまり例がないとのことだった。
ラック19はNVMe over Fabricを使った高速ネットワークストレージ。NVMeドライブをネットワーク経由でRDMA(Remote DMA)により接続する技術だ。今年は3並列接続で速度を測っていた。
ラック20はハイパーコンバージドインフラとコンテナオーケストレーション。サーバーアプリケーションをここで動かして管理する。
なお、ラック15~17は、背面もガラス越しに公開されていた。