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バックボーンに400GbEを初導入――、近未来のネットワークを見せる「ShowNet」レポート

 最先端ネットワーク技術・製品のイベント「Interop Tokyo 2019」が幕張メッセ(千葉県千葉市)で6月12日~14日の期間で開催されている。

 初日の12日には、プレス向けに、Interop Tokyo 2019と、会場のネットワーク「ShowNet」の説明が行われた。

 Interop Tokyoは展示会であると同時に、各社が最新のネットワーク機器を持ち込んで相互接続性や新技術をテストしデモする場でもある。そうした近未来のネットワークを、出展社や来場者の実用ネットワークとして提供しているのがShowNetだ。そのShowNetについても説明のほか見学ツアーが開催された。

来年のInterop Tokyo 2020は4月開催

 今年のInterop Tokyo 2019については、Interop Tokyo 2019総合プロデューサー/株式会社ナノオプト・メディア 取締役COOの大嶋康彰氏が解説した。

 なお来年のInterop Tokyo 2020は、東京オリンピック開催により4月13日~4月15日になるという。規模は今年と同程度。

 今年のInterop Tokyo 2019のテーマは「インターネット文明開化」。これは、Interop Tokyo実行委員長でもある慶應義塾大学教授の村井純氏の「インターネットは、もはや文明である」という言葉によるものだ。

 来場見込みは数約15万人と、去年より多い数を見込む。出展予定企業数は約472社、コマ数は1696で、これは去年と同程度だという。

Interop Tokyo 2019総合プロデューサー/株式会社ナノオプト・メディア 取締役COOの大嶋康彰氏
Interop Tokyo 2019のテーマは「インターネット文明開化」
Interop Tokyo 2019開催概要
Inerop Tokyo来場者の推移

400GbEや、SRv6によるサービスチェイニングなども実験

 ShowNetについては、ShowNet NOCチームメンバー ジェネラリストの遠峰隆史氏(株式会社レピダム/慶應義塾大学)が説明した。

 遠峰氏によると、ShowNetとは「トップエンジニアが実施する世界最大級のライブデモンストレーションプロジェクト」で、2年後や3年後に業界に浸透する技術を先駆けて挑戦する場だと位置付ける

 今年のShowNetのテーマは「Evolve into the Next Generation」。去年のテーマが「Dive into the Next(次世代に飛び込む)」だったのに対し、「次世代をどう進化させるか」を示しているとした。

ShowNet NOCチームメンバー ジェネラリストの遠峰隆史氏(株式会社レピダム/慶應義塾大学)
ShowNetのテーマは「Evolve into the Next Generation」

 今年のネットワークの規模は、機器/製品/サービスの数が約2000台。動員数がのべ447名で、そのうちNOCチームが27名、STM/CTMが37名、コントリビュータが383名。UTPケーブルの総延長が約21kmで、光ファイバーの総延長が約5.5km。NOCラックおよびPodの総電気容量が、100Vが約140.0kWで、200Vが約66.0kW。

 トピックとして、まずエクスターナル(外部)接続としては、合計310Gbpsでインターネットに接続している。

今年のネットワークの規模
エクスターナル接続

 ファシリティでは、より高密度かつオペレーションしやすいものを目指しているという。

 レイヤ2/3(L2/L3)では、最新アーキテクチャと超高速通信規格を実験している。具体的にはまず、400GbEをShowNet内で採用した。「相互接続できる製品になったのが今年やっと」と遠峰氏。

 また、ファイアウォールやロードバランサーなどのネットワークサービスを柔軟に組み合わせて提供するサービスチェイニングに、IPv6の拡張であるSRv6によるルーティングを採用した。

 そのほか、対外接続からアクセス網までの徹底した自動化を実施。例えば、ブースの設定も自動で行えるようにしたり、ピアリングもパラメータを入力すれば行えるようにしたりしているという。

ファシリティのトピック
L2/L3のトピック

 Wi-Fiについては、モバイルルータなども増えて混雑する中で、いかに来場者にWi-Fiを提供するかについて毎年試行。今年は11ac Wave2/11axを用いた、柔軟な無線空間のデザインなどを行ったという。

 サービス関連では、コンテナ基盤を取り入れ、さらにShowNetとパブリッククラウドとで同様のコンテナを動かして、例えば外部からwww.interop.jpにアクセスしたときに、意識せずにパブリッククラウドに接続していたり、ShowNet内部に接続したりしているという。

 ネットワーク越しにNVMe SSDを使うNVMe over Fabricもここ数年試しているが、今年はIPトラフィックと混在させるなどの実験もしている。また、EVPN Type 5やRIFTによるデータセンター向けルーティングも実験する。

Wi-Fiのトピック
サービス関連のトピック

 セキュリティにおいては、100GbE対応のパフォーマンスや検知性能・検知手法を実験。また、セキュリティ機器とサンドボックスを連携させるICAPの相互接続も検証する。

 モニタリングでは、クラウドを活用した監視基盤とオンプレミス監視との融合を試す。テスターでは、来場見込み数の15万人分の負荷を事前に試すほか、SRv6によるサービスチェイニングがきちんと動いているかを事前に確認した。今年はさらに、QoEの測定もした。

 モバイルネットワークでは、5Gに向けたモバイルコアや、ステートレスなトラフィック誘導を活用したMEC(Mobile Edge Computing)トライアルなどが挙げられた。

セキュリティのトピック
モニタリングのトピック
テスターのトピック
モバイルネットワークのトピック

バックボーンに400GbE導入

 展示会場のShowNetブースでは、1~20まで(11は欠番)の番号が付けられた19のラックに、ShowNetを構成する機材が収められていた。

ShowNetブース入り口に張られたネットワークトポロジー図。注目キーワードも紹介されていた

 ラック1は対外接続だ。ここで前述のとおり、4つのトランジットを経由して計310Gbpsでインターネットに接続している。

 ラック2は対外接続のエクスターナルルータ。Huawei NE9000とExtreme Networks SLX9640の2台が使われている。

 ラック3はコアのバックボーンだ。ここでJuniper MX240に400GbEモジュールを入れて、ShowNet初の400GbEを導入している。ちなみに、400GbE対応ともなると機器の発熱が大きいのだという。また、このラックではサービスチェイニングのSRv6の処理もしている。

ラック1:対外接続
ラック2:エクスターナルルータ
ラック3:コアのバックボーン
ラック3の400GbE対応したJuniper MX240

SRv6でサービスチェイニング

 ラック4はネットワーク負荷などのテスターだ。400GbEの負荷試験や、SRv6によるサービスチェイニングがきちんと動いているかのテストをする。

 ラック5~6が、サービスチェイニングで提供されるネットワーク機能群(ファンクションプーリング)だ。今回はSRv6でサービスチェイニングしていることから、SRv6ヘッダの付いた特殊なIPv4パケットがセキュリティ機器がパケットを検知できないため、一時的に外すプロキシーなども使われている。NTTコミュニケーションズのソフトウェアルータ「Kamuee(カムイー)」もここで使われている。

ラック4:テスター
ラック5:サービスチェイニング
ラック6:サービスチェイニング

 各ラック間の配線は、ここ数年、各ラックのパッチパネルから集線ラックに一度集め、そこから分配するようになっている。これによって配線が大いに整理されスッキリすることになる。

 去年までは集線ラックは1ラックだったが、今年はラック7とラック16の2ラックが集線ラックとなっている。ラック1~14はラック7に、ラック15~20はラック16に集線し、その間はラック7とラック16で接続している。

 光多重によるリングの伝送装置も、ラック7とラック16に収められている。これにより、必要なネットワークを必要なところに出すという。

ラック7:集線ラック
ラック16:集線ラック

 ラック8~9はセキュリティ監視だ。各機器のミラーポートから集めたパケットを、ラック9のパケットブローカーに集める。そして重複排除のうえ、ラック8の各種セキュリティ機器に送って検査する。NIRVANA改などもここに収められている。

 前述した、セキュリティ機器とサンドボックスを連携させるICAPの相互接続も、ここで検証している。セキュリティ機器で怪しいと判断したものをサンドボックスに流すものだ。

 ラック10はモニタリングだ。syslogなどの情報を集め、接続が切れたなどのトラブルを検出する。今年はクラウド連携によるモニタリングもしている。

ラック8:セキュリティ監視
ラック9:セキュリティ監視
ラック10:モニタリング

出展者ネットワークやWi-Fiコントローラ、モバイルネットワークなど

 ラック12は出展者向けネットワークだ。Huawei S6720がL2でブースとつながり、Huawei NE40E-MK2とCisco Catalyst 9600が出展者のデフォルトゲートウェイとなる。また、Juniper SRX5400がCGNやファイアウォールの機能を持つ。

 ラック13はWi-Fiだ。Wi-Fiコントローラや、無線の可視化などが収められている。

 ラック14は運用系のネットワークが収容された部分。QoE測定などもここでしている。

ラック12:出展者向けネットワーク
ラック13:Wi-Fi
ラック14:運用系ネットワーク

 ラック15は、モバイルネットワークだ。4G/5Gのコア装置や仮想基地局が収められている。また、時刻同期のNTP/PTPタイムサーバーもここに入っている。

 ラック17は、次世代データセンターファブリック/EVPN相互接続検証を担当する。400GbE相互接続や、EVPNによるスパイン・リーフ構成、トポロジー情報を構成するRIFT(Routing In Fat Trees)の相互接続などを検証している。

ラック15:モバイルネットワーク
ラック17:次世代データセンターファブリック/EVPN相互接続検証

www.interop.jpをパブリッククラウドとShowNetでロードバランス

 ラック18は、高速ネットワークストレージで、NVMeをネットワーク越しで使うNVMe over Fabricを実験する。今年は、スイッチに機械学習チップを入れて輻輳をなくすHuaweiのAIファブリック技術を使って実験している。

 ラック19はネットワークサービス。ラック18のNVMe over Fabricはここで使っている。そのほか、モニタリング用のVPNや、コンソールにネットワークでアクセスするコンソールサーバーも入っている。

 ラック20もネットワークサービスだ。DHCPなどのサービス基盤がここで提供されている。また、www.interop.jpのコンテンツをコンテナにして、ShowNet・Azure・GCPの3カ所で動かし、ロードバランスしており、そのShowNet側がここにある。これらはこのラックのサーバー上で、仮想マシンとコンテナ上で動いている。

ラック18:高速ネットワークストレージ
ラック19:ネットワークサービス
ラック20:ネットワークサービス