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AIが新たな特異点を生む――、マイクロソフトの開発者向けイベント「de:code 2017」レポート
HoloLens開発者も来日
2017年5月26日 06:00
データが存在する場所に知性を――、AIを支えるデータベースとは
続いて登壇した米Microsoft データプラットフォーム コーポレートバイスプレジデントのジョセフ・シロシュ氏は、AIのテクノロジーを支えるデータベースについて、次のように述べている。
「かつて地球が誕生してから40億年ほどたったころ、カンブリア爆発と呼ばれる歴史上の特異点があった。有眼生物、つまり目のある生物が誕生し、他の生物を捕食するようになったことから、地球上の生命体に大きな競争と進化が発生し、膨大な数の生物が産みだされた。現在、AIの誕生によって、私たちは新たな特異点に立っている。いま、あらゆるビジネスがAIを活用したものに生まれ変わろうとしている。AIはカンブリア爆発の有眼生物と同じように、データを見る眼を持っている。AIはデータを保存するだけではなく、データの内容を見て理解することができるようになっている。そのため、データの近くにAIを持ってくる『Intelligent DB』や『Intelligent Data Lake』が重要になってくる」
先日発表されたSQL Server 2017は、商用データベースとしてとして初めてAIを組み込んだ製品であるという。これまでのデータベースはデータを保存しておくだけの場所だったが、機械学習エンジンである「R Server 9.1」との組み合わせによって、データをアプリケーションに取り込むことなく処理できる。
SQL Server 2017では、RやPythonのストアドプロシージャを利用できるため、アプリケーションにRやPythonなどのストアドプロシージャを呼び出すコードを追加するだけで、AIの機能が利用できるほか、Graphモデルのサポートにより、複雑な関係も分析可能だ。スケールアウトする機械学習エンジンであるR Server 9.1は、トレーニング済みのCognitiveモデルによって、GPUによる高速なディープラーニングを実行することができるという。
MicrosoftのデータベースといえばSQL Serverのイメージが強いが、先日、米国のBuild 2017では、新しいNoSQLのクラウド型データベース「Azure Cosmos DB」が発表された。グローバルに点在する25のリージョンへレプリケーションが可能なデータ分散機能、Document、Graph、Key-Valueから選択できるマルチデータモデル、およびそれぞれのモデルに用意されたAPIなどが特長となっている。
またAzureでは、これらMicrosoftのデータベース以外にも、MySQLやPostgreSQLといったオープンソースのデータベースの提供も開始される。
さらにシロシュ氏は、Spark/Hadoopクラスタをクラウドで提供する「Azure HD Insight」や、容量無制限のData Lakeによる分析サービス「Azure Data Lake」などによって、Data LakeにもAIを搭載する「Intelligent Lake」についても言及した。
Azure Data Lakeには、顔の解析、画像のタグ付け、顔の表情分析、OCR、テキストから重要語句の抽出、テキストの感情分析といった6つのCognitive機能が実装されているという。これにより、PB(ペタバイト)以上のデータのBig Cognitionを実現し、画像、動画、音声、テキストといった異なるコンテンツや構造化データを横断したクエリを可能にするという。
また、ディープラーニング用のプラットフォームとして、「Azure Data Science Virtual Machine」が提供されると、シロシュ氏はアピールする。名前の通りAzure上で提供されるこの仮想マシンは、メジャーな分析ツールがインストール/構成済みで、Azure GPU VMに上にディープラーニングの拡張機能も組み込まれているという。さらに、開発者版のSQL ServerやR Server、さらにはAzure Batchも利用可能であるとした。
シロシュ氏は、Microsoftの“インテリジェンス”なデータ戦略によって、AI、大規模なデータ分析基盤、ディープラーニングといったテクノロジーが、膨大な投資を必要とすることなく利用できるようになったことをアピール。
そして、「5億3000万年前のカンブリア爆発と同じように、AIによるインテリジェンスのエクスプロージョン(爆発)によって世界は大きく変わっていくだろう」というコメントで締めくくった。