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サティア・ナデラCEO、de:code 2016基調講演に登場

「人の好みや趣味を理解しながらアプリが対話する世界になる」

 日本マイクロソフト株式会社は、5月24日・25日の2日間、東京・芝公園のザ・プリンス パークタワー東京において、ITエンジニアを対象にした「de:code 2016」を開催している。

 Microsoftが打ち出すテクノロジーの方向性と、クラウド、モバイルに関する最新技術情報を紹介するイベントで、100を超えるブレイクアウトセッションを用意。今年3月30日から3日間に渡り米国サンフランシスコで開催された同社の開発者向けイベント「Build 2016」での発表内容について、参加した日本のITエンジニアに対して詳細を説明するイベントにも位置づけられている。

 参加費用は8万円にも関わらず、約2000人が参加。Microsoftの技術に対する関心の高さを裏づけるものとなった。

サティア・ナデラCEOが基調講演に登場

 初日となる5月24日の午前10時から行われた基調講演では、米Microsoftのサティア・ナデラCEOが登壇。「すべての人の可能性を拡げるモバイルファースト、クラウドファーストの世界(Accelerating Digital Transformation in our Mobile-first, Cloud-first World)」をテーマに講演した。

米Microsoftのサティア・ナデラCEO

 ナデラCEOは、「Microsoftは、モバイルファーストおよびクラウドファーストの世界において、独自の強みを持っている」と切り出し、「モビリティとはひとつのデバイスを指すのではなく、人間の体験そのものを指している。そして、5年後にはこれまで以上に豊富なよりよい体験ができるようになる」などとした。

 そして、ナデラCEOは、同社が掲げる3つの野心(Ambition)について、ひとつひとつ説明を行った。これらの取り組みも、モバイルファースト、クラウドファーストの考え方に則ったものとなる。

 3つの野心のうちのひとつめは、「インテリジェントクラウド」である。

 インテリジェントクラウドでは、ハイパースケールとエンタープライズクラスのクラウドインフラと位置づけるMicrosoft Azureによって提供される価値について示した。

 「Azureは、オープンであり、柔軟性を持ったフレームワークを実現するクラウドサービス。ここでは、新たなマイクロサービスを提供。音声、画像認識など、22のAPIを活用して、アプリにさまざまな機能を追加できる」などと説明。トヨタでは、Azureを活用したテレマティクスに取り組んでいることを紹介しながら、「トヨタはデジタル時代の自動車づくりに挑んでいる。クルマ同士だけでなく、クルマと街をつなげたサービスも開始している」と述べた。

 また「Azureを活用することで、日本だけでなく、世界を相手にしたアプリを開発でき、ビジネスを拡大できる。コネクテッドテーブルという世界を実現することで、2020年の東京オリンピックの時には、日本語がわからなくてもレストランでスマホから注文したり、Skypeトランスレータで注文したりできるようになる。IoTの活用においても、Azureの活用範囲は広い」などとした。

女子高生AI「りんな」のデモを実施、Windows 10の訴求も

 2つめが、「プロダクティビティとビジネスプロセス」だ。ここでは、Office 365を活用した生産性向上などの実例を示したほか、Build 2016において重要なキーワードとなった「Conversation as a Platform」に言及。「人間の言葉を理解したインターフェイスによって、アイコンをクリックするのではなく、対話で利用できるようになる。Microsoftが提供するボットフレームワークによって実現できるものであり、人の好みや趣味などを理解しながら、アプリが対話することになる。これは、新たなプラットフォームになる」と語りながら、日本でサービスを行っている女子高生AI「りんな」のデモストレーションを行った。

 りんなは、日本マイクロソフトが提供しているLINEおよびTwitterのサービスで、現在、340万人以上が利用しているという。

 ナデラCEOは、「ボットによってどんな可能性が生まれるのか、ワクワクしている。すべてのサービスにおいて、こうしたインターフェイスが利用できるようになる」と語った。

Conversation as a Platform
女子高生AI「りんな」のデモ

 そして、3つめが、「パーナソルコンピューティング(Windows 10およびデバイス)」である。

 ナデラCEOは、Windows 10を搭載したデバイスの魅力や、2in1という新たなカテゴリーをSurfaceが創出した実績などを示す一方で、ミックスドリアリティを実現するHoloLensの説明に時間を割いた。

 「HoloLensは、アナログの世界をデジタルに変えるのではなく、アナログの世界に、デジタルの無限の世界を融合し、新たな価値を提供するものになる。これがミックスドリアリティである。デジタルとアナログの融合と、プレゼンスをアプリに組み込むこと、そしてそれを活用できる環境が整うことで、開発者の限界を取り払ったプラットフォームが提供できる」と述べた。

 ここでは、日本航空が整備士やパイロットのトレーニングに、HoloLensを活用していることを紹介した。

 「HoloLensを活用することで、新たな方法でトレーニングができるようになる。今後は、エンターテイメント分野や教育分野、医療分野でも活用されることになるだろう」と語った。

 最後に、ナデラCEOは、「日本の開発者たちが、日本の経済を変えることができる。それはデジタル革命が日本の社会や経済を変えるからだ」と開発者にエールを送り、講演を締めくくった。

Windows 10をアピール

 一方、ナデラCEOの講演を前に、日本マイクロソフトのCTO(最高技術責任者)である榊原彰執行役と、日本マイクロソフト デベロッパーエバンジェリズム統括本部長の伊藤かつら執行役が、米サンフランシスコで開催されたBuild 2016について報告した。

 榊原CTOは、「Conversation as a Platformは、次世代インターフェイスとして会話を重視することを明確にしたものであり、B2Bにおいても、B2Cにおいてもコアの一端を担う技術になる」としたほか、「Microsoftの変化は、オープンソースに傾注しているところにある。古い考えに縛られるのではなく、どの技術が世の中で役に立つのかを、Microsoftは考えている」と語った。また、「いまや自動車メーカーでさえも、ソフトウェア企業になっている。未来はソフトウェアが作ることになる」とも述べている。

日本マイクロソフトの榊原彰執行役CTO(右)と、日本マイクロソフト デベロッパーエバンジェリズム統括本部長の伊藤かつら執行役

大河原 克行