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クラウドは"New Normal"から"Super Power"へ、「AWS re:Invent 2016」でジャシーCEOが見せた王者の貫禄
AWS re:Invent 2016 キーノート
2016年12月5日 06:00
インモータリティ:成功し続けるためには技術的変化を受け入れよ
3つめのSuper Powerは「インモータリティ(Immortality)」、直訳すれば"不朽の名声"だが、ジャシーCEOはこれについて「企業が途絶えることのない成功の連鎖を望むなら、テクノロジの変化につねに追随していかなくてはいけない」と説明する。
インモータリティに関する新サービスの発表はなく、かわりにジャシーCEOはSalesforce.comやInfor、Splunkといった基幹業務システムを提供する企業が、プラットフォームにAWSを採用したことでまったく新しく生まれ変わったことを紹介している。日本でもSalesforce.comとの協業は大きな話題になったが、AWSをプラットフォームとして選択することで、年々その進化のスピードが加速するAWSの技術的イノベーションの恩恵を受けられる企業は確実に増えているといえる。
キーノートではインモータリティの事例としてWorkdayとMcDonaldのエグゼクティブがそれぞれ登壇し、AWSクラウドを導入したことでビジネスがいかに大きな成功を遂げたかを紹介している。
フライト:アプリケーション開発をもっと自由にするデータベースを
4つめのSuper PowerとしてジャシーCEOが挙げたのは「フライト(Flight)」である。これはアプリケーション開発、とりわけデータベースベンダの縛りから開発を自由に"羽ばたかせる"ことを意味している。AWS re:Inventでは毎年、データベース関連の大きな発表が行われるが、今回プレビュー版として登場したのは「PostgreSQL for Aurora」、データベースエンジンにPostgreSQLを採用したAuroraである。
Auroraは2014年のre:Inventではじめて公開され、以来、AWSにおいてもっとも成長のスピードが速いサービスとして知られている。エンジンにMySQLを採用したクラウドネイティブなデータベースであるAuroraは、現行のOracleによるMySQL開発の遅れに不満をもつユーザーにも支持され、グローバルでの導入数を大きく増やしている。
だが一方で「Oracleから完全に離れたかたちのデータベースエンジンを採用してほしい」「AuroraのPostgreSQL版がほしい」というユーザーの声が非常に大きくなってきたとジャシーCEOは語る。
AWSはすでにRDSのいちメニューとしてPostgreSQLのマネージドサービスを提供しているが、ユーザーのリクエストに押される格好でPostgreSQL for Auroraの開発に踏み切ったという。もちろんオリジナルのPostgreSQLとは100%互換でありながら、パフォーマンスは数倍、Auroraの特徴であるスケーラブルでセキュアな性質はそのままだ。またRDSのPostgreSQLからの移行が可能になっているほか、PostGISなどの拡張モジュールも近い将来に利用可能になる予定だという。
ジャシーCEOはre:InventのキーノートにおいてOracleやIBMといった旧来型のベンダを批判することが多く、とくにデータベースの発表に関してその傾向は強い。今回もPostgreSQL for Auroraで既存のデータベースベンダによるビジネスを強く牽制したといえる。