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クラウドは"New Normal"から"Super Power"へ、「AWS re:Invent 2016」でジャシーCEOが見せた王者の貫禄
AWS re:Invent 2016 キーノート
2016年12月5日 06:00
X-Rayビジョン:最先端のデータアナリティクスから見えてくる新たなインサイト
ジャシーCEOが2つめのSuper Powerとして挙げたのが「X-Rayビジョン(X-Ray Vision)」である。膨大なデータに対し、X線を照射するように分析をかけることで、いままで見えてこなかったものを見えるようにする――。データアナリティクスの世界では"インサイト"という言葉がよく使われるが、ビジネスにSuper Powerをもたらすほどのインサイトを得るには、既存の精度やスピードを凌駕するアナリティクス環境が求められる。そしてAWSは今回、"X-Rayビジョン"を実現するサービスとして、大きく2つのラインアップをGA版として用意した。
ひとつはストレージサービス「Amazon S3」に対して、標準的なSQL文でもってクエリを実行できる「Amazon Athena」だ。ジャシーCEOはAthenaを「マネージドなPrestoサービス」と表現しているが、もっといえばApache Hiveをクラウド上で実行するイメージに近い。ユーザーはS3上の生データに対してダイレクトにSQLクエリを投げることができ、クエリ実行のための環境設定等はいっさい必要がない。S3データが構造化データか非構造化データであるかも問わない。
AWSにはすでに大規模データのアナリティクスサービスとしてDWHの「Amazon Redshift」やHadoopのマネージドサービス「Amazon EMR」などがあるが、ジャシーCEOは「AthenaはRedshiftやEMRとは競合しない。S3の生データを加工することなく、ダイレクトにクエリをかけ、数秒で結果を得ることができるインタラクティブなサービスであり、RedshiftやEMRとは目的が違う」と棲み分けを強調している。
もうひとつは「顧客から非常にリクエストが多かったサービス」(ジャシーCEO)というAIサービス群「Amazon AI」だ。AWSとしては初となるマネージドなディープラーニングサービスで、画像認識の「Amazon Rekognition」、音声認識の「Amazon Polly」、自然言語処理の「Amazon Lex」から構成されている。個別で利用することも、3つのサービスを組み合わせて利用することも可能だ。
Rekognitionは2015年に買収したスタートアップ企業のOrebusの技術をベースにしている。またPollyは日本語を含む27カ国語に対応したText-to-Speechのサービスで、1カ月あたり500万ワードまでは無料で利用できるという。
だがAmazon AIでもっとも注目すべきは、Amazonのバーチャルアシスタント「Amazon Alexa」の技術をベースにした「Amazon Lex」だろう。サービス名も"Alexa"から取っており、自動音声認識(Automatic Speech Recognition: ASR)と自然言語処理(Nstural Language Understanding: NRU)を備えた機械的なチャットボットとして機能させることができる。Lambdaのファンクションをトリガーとして設定することも可能だ。
AWSはディープラーニングの分野で競合よりもやや後れた感があったが、Amazon AIの強力なラインアップの登場で、一気にトップに躍り出た感がある。キーノートではAmazon AIの3種類のサービスを組み合わせ、ロンドンまでのフライトをスムースに予約するデモが行われ、いずれのサービスもAWSらしく、きっちりと仕上げてきた印象を残している。