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クラウドは"New Normal"から"Super Power"へ、「AWS re:Invent 2016」でジャシーCEOが見せた王者の貫禄
AWS re:Invent 2016 キーノート
2016年12月5日 06:00
スーパーソニックスピード:FPGAやGPUのパワーをクラウドに
最初のSuper Powerとして挙げられたのは「スーパーソニックスピード(supersonic speed)」、劇的なスピードである。クラウドの登場により「一瞬で数千ものサーバを立ち上げることが可能になった」とジャシーCEOは強調するが、そのベースになっているのはAWSクラウドの基本サービスともいえる「Amazon EC2」だ。EC2には毎年、いくつかのインスタンスタイプが追加されるが、今回、ジャシーCEOは新インスタンスファミリを含む7つのアップデートを発表している
・「T2」インスタンスの拡張(GA):「t2.xlarge(メモリ16GB)」と「t2.2xlarge(メモリ32GB)」が追加
・「R4」インスタンスの追加(GA):BIやインメモリアナリティクスなどメモリインテンシブなワークロードに最適化(メモリ488GB、DDR4、L3キャッシュ、64vCPU)
・「I3」インスタンスの追加:SSDベース、トランザクション処理やデータウェアハウジング、Hadoopなどに最適化(330万IOPS、メモリ488GB、容量15.2TB、64vCPU)
・「C5」インスタンスの追加(準備中):Intel Skylakeをベース、マシンラーニングや画像/音声処理に最適化(72vCPU、EBSへのスループット12Gbps、メモリ144GB)
・「Elastic GPUs For EC2」(プレビュー):既存のEC2インスタンスにGPUアクセラレーション機能を提供、
・「F1」インスタンス(開発者プレビュー):ユーザーが記述したFPGAコードが実行可能
・「Amazon Lightsail」(GA):既存のEC2インスタンスよりも少ないステップでVPSの構築が可能
この中でも特に注目したいのは、従来のEC2インスタンスとは明らかに異なるタイプであるElastic GPUs For EC2とF1インスタンスだ。
Elastic GPUs For EC2は、ユーザーがすでに利用しているEC2環境にオンデマンドでGPUリソースをアタッチできるようにする、文字通りエラスティックなGPUサービスだ。ジャシーCEOは「EBSボリュームを追加するように、GPUのパワーをEC2に追加できる」と説明している。追加されるリソースはメモリが1GBから最大8GBまでで、メモリの容量に見合ったコンピューティングパワーが提供される。使いたいときに使いたいだけGPUパワーを利用するという、ある意味、非常にクラウドらしいサービスだといえる。
FPGA(Field-Programmable Gate Array)によるハードウェアアクセラレーションを実行可能にするF1インスタンスも既存のEC2とは異なるタイプのインスタンスだ。ユーザーは自分で作成したコードをFPGAイメージとしてF1インスタンス上で実行できる。また、作成したイメージはAWSマーケットプレイスで販売することも可能だ。今回、FPGA開発者のためのSDKも同時に提供されている。なお、F1インスタンスではXilinxのチップが使われている。
もうひとつ、既存のEC2インスタンスの方向性とは異なる新サービスがAmazon Lightsailだ。前述したとおり、EC2インスタンスはAWSクラウドの基本ともいえるサービスだが、インスタンスファミリやタイプが年々増えていくに従い、「EC2イメージを構築するのが面倒」という声も上がるようになってきたという。
仮想マシンを立ち上げ、ストレージをアタッチし、セキュリティグループを作成して、DNSを設定する――、こうした作業はとりわけクラウドの初心者にとってハードルが高い。
この「もっとシンプルにVPSを構築したい」というニーズに応えたのがLightsailで、ユーザーはあらかじめAWSが用意したイメージから自分のワークロードに適したものを選び、これもあらかじめ用意されているコンピュートサイズを指定して、インスタンスに名前をつけるだけでいい。
コンピュートサイズには5種類あり、サイズによって価格が異なる。AWSにしてはめずらしく月額固定料金(5ドル~80ドル)のサービスである点も特徴だ。構築ステップがシンプルで価格やサイズも手軽であることから、最初のクラウド環境として導入するにも適している。
いずれのインスタンスも、ユーザーにとって必要な"スピード"をそれぞれのニーズに応じて加速し、ビジネスに"スーパーソニックスピード"を提供することにフォーカスしているといえる。