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セールスフォースとAWS、IoT時代に向け日本で連携強化

 株式会社セールスフォース・ドットコム(以下、セールスフォース)とアマゾンウェブサービスジャパン株式会社は13日、両社のクラウドサービスを連携するための技術支援、エコシステム拡大などに向け連携を強化すると発表した。

 Salesforce.comとAmazon Web Services(AWS)は2016年5月、ワールドワイドで既存の提携関係を強化することを発表しているが、今回の提携は日本法人同士が発信した連携強化となる。

 「IoT導入で多大なデータをどこに置くのかといった問い合わせがお客さまからあがるようになっている。また、AWS東京リージョンでHerokuが稼働するようになったといった動きがあり、両社がかみ合うところが大きくなった。セールスフォースのアプリを利用しながら、スケーラビリティがあるAWSにデータを送り、Herokuを使ってデータ加工するというような使い方を行うために、どんな技術が必要になるのかといったことを、具体的に見せていく必要があることなどが要因となり、連携強化を行うこととなった」(セールスフォース マーケティング本部プロダクトマーケティング シニアディレクターの御代茂樹氏)。

セールスフォース マーケティング本部プロダクトマーケティング シニアディレクターの御代茂樹氏

 具体的には、1)リファレンスアーキテクチャを開発する両社エンジニアによるクラウドデザインセンター(CDC)を10人体制で設置、2)ベストプラクティスを両社エコシステムへ展開、3)第1弾としてAWSをプラットフォームとするHerokuを軸とした営業協力、4)共同マーケティングの実施、の4点を同日付でスタートする。

セールスフォースとAWSからの提案
4つの施策を実施する

 今回の連携強化に向け、担当であるアマゾンウェブサービスジャパンのパートナーアライアンス本部 本部長の今野芳弘氏、セールスフォースの常務執行役員 アライアンス本部本部長の手島主税氏は、同じオレンジ色のネクタイをして登場。歩調を合わせ、連携によるメリットを訴えた。

アマゾンウェブサービスジャパン パートナーアライアンス本部 本部長の今野芳弘氏
セールスフォース 常務執行役員 アライアンス本部本部長の手島主税氏
2社の連携を強調するためか、両社の担当が同じオレンジ色のネクタイで登壇

 両社とも「クラウド」という同じ領域でビジネスを行っているが、セールスフォースの強みは決まったルールの中で動くビジネスアプリを提供するSaaS部分、AWSの強みはスケーラビリティのあるIaaSと、それぞれ異なる強みを持ってビジネスを展開してきた。

 しかし、クラウドに対する市場ニーズが変化し、セールスフォースは、「業務アプリケーションから広がるIoTなどを構築する際、全体を設計できるアーキテクトが欲しいといった声や、エンドユーザー向けサービス、社内向けサービスを融合したサービスモデルを構築できるパートナーを紹介して欲しいといった声が挙がるようになってきた。当社が提供しているのは業務の世界のベストプラクティスだが、独自性、付加価値の高さを求めるお客様が増え、その際にPaaSの活用範囲拡大が必要になっている。それを実現するのが、AWSとの連携と判断した」(セールスフォースの手島氏)と説明する。

クラウドに対するニーズの変化
IaaS+PaaS+SaaSで、より付加価値の高いクラウドを提供する

 AWSでも、「最近ではIoT、ビッグデータ、基幹システムでのAWS活用といった広範囲にクラウドを活用したいというニーズが高まり、それを実現している先進的事例が知りたいというお客様が増えている。スピードをあげてもっとクラウドをビジネスに活用したい、パートナーからも自社に合致した提案を受けたいといった要望も増え、最適な提案ができるエコシステムが必要と考えたことが今回の連携強化の背景」(アマゾンウェブサービスジャパンの今野氏)と話している。

 CDCは、両社から5人、計10人体制でエンジニアが関わり、連携サービス構築を支援する。「アーキテクチャを構築するための支援や、さまざまな事例をパターン化して登録し、活用しやすくなることのお手伝い、パートナーソリューションの拡充などを行っていく。両社のエンジニアがタッグを組むことで、パートナーの皆さんにも還元できる連携ソリューション構築方法を確立していく」(今野氏)。

CDCで開発を支援

 パートナーエコシステムについては、IoTを活用した酪農を行っているデザミス株式会社の事例を紹介。牛の健康管理を行うためにIoTを活用した事例で、IaaSとして家畜の生態情報、機器の情報についてはスケーラビリティのあるAWSで処理。PaaSとなる家畜のマスター管理情報、SaaSとなる家畜の行動特性と飼育情報はセールスフォースを利用している。

 「両社連携による最大のメリットはスピード。プロトタイプ作りに1カ月、ベータ版構築で2カ月、本稼働までに3カ月といった速さで、3カ月以内に、これまで勘や経験に頼っていた部分を可視化した新しいビジネスモデル構築を実現した」(手島氏)。

ベストプラクティスを両社のパートナーエコシステムへ展開
デザミス株式会社の事例

 企業の独自性、付加価値を出すことにつながるHerokuを使ったAWSとの連携については、「東京リージョンでのHeroku活用がスタートしており、国内にデータを置いて両社の連携が実現できるようになった。具体的にどうHerokuを活用した連携ソリューションを構築していくことができるのかをサポートし、支援していく」(今野氏)ことを表明している。

Herokuを軸とした営業協力

 共同マーケティングとしては、AWSがセールスフォースのワールドツアーのスポンサーとなり、さらに「連携のメリットはどんな点かがきちんと認識されていない。連携のメリットをきちんとアピールしていくことで、ビジネスの競争力、スピードアップにつながることをアピールしていきたい」(手島氏)と、連携によるメリットをアピールしていく計画だ。

共同マーケティングを実施