大河原克行のキーマンウォッチ

2021年は「業種ごとのソリューション提案」と「基幹システムのマイグレーション」を推進――、AWS・長崎忠雄社長

パートナー戦略の強化もあらためて表明

 Amazon Web Services(AWS)が、2011年3月に東京リージョンを開設してから10年目の節目を迎えた。2021年は新たに大阪リージョンを正式オープンし、日本における地盤を強化。さらに業種別体制の強化やマイグレーションを加速するための体制づくりにも余念がない。

 AWSの長崎忠雄社長に、これまでの10年間の取り組みと、2021年の事業戦略、そして今後のAWSについて聞いた。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社の長崎忠雄社長

コロナ禍の変化を幅広く支援したAWS

――2020年は社会環境が大きく変化した1年でした。そのなかで、AWSに対する日本の企業からの期待は、どう変化しましたか。

 2020年は、多くの人たちが働き方を変え、ビジネスのやり方を再定義しなくてはならない、これまでとは大きく異なる1年でした。先行きが不透明となるなかで、IT投資はこのままでいいのか、あるいは投資はどこにすべきなのかといったことがわからず、自問自答する企業が多かったといえます。

 しかし、クラウドに関するプロジェクトはそれほど止まらなかったというのが私の印象です。その理由はいくつかあります。ひとつは、クラウドはコストダウンにつながるというイメージが定着していたことで、やらなくてはいけないプロジェクトにはクラウドを活用するといった動きがあったこと、もうひとつは、新たな働き方にシフトするには、従来の仕組みでは時間がかるためにクラウドを活用するという動きです。これから5年、6年かかるだろうと思われていた変化が、1年に凝縮するような形で起きています。デジタル化の動きが一気に進展するなかで、多くの企業がクラウドを活用しています。

 例えば、イノベーションへの取り組みや新たなものを創出することにちゅうちょしていた企業が、新たな社会へと変化するなかで、背中を押されたケースも多いですね。5年先にやればいいと思っていたイノベーションを、いまやらなくてはならなくなったという企業は本当に増えました。

 その際にAWSは、当社が企業カルチャーとして持っているスピード感を生かして挑戦し、実験を繰り返して成功の確度を高めていく手法を提供したり、それを実践するためにクラウドサービスの活用を支援したり、といったことを行ってきました。

 Amazonはイノベーションを起こすための基本的な考え方として、「お客さまから物事を考える」ということを徹底しています。そして、これを実践するためのプロセスやメカニズムを社内に蓄積しています。有名なのは「開発をする前に、プレスリリースから書き始める」という手法です。こうしたメカニズムを学習するためのセミナーを、オンラインを通じて提供するといったことも行ってきました。

 一方で、リモートワークを支えるAmazon WorkSpacesやAmazon Connect、AWS VPNなどのソリューションに対する関心が一気に高まりました。これまでは、AWSというと、Amazon EC2やAmazon S3が代表的なソリューションであり、それ以外のソリューションの導入はもう少し先でいいと思っていた企業が多かった。しかしコロナ禍では、まったなしでリモートワークへの移行が迫られ、そこにAWSのソリューションが活用でき、クラウドならではのスピードを生かした、新たな働き方への移行を支援できたといえます。

 Amazon Connectを導入していた企業では、営業活動を対面からリモートへと移行したことで、コンタクトセンターへの負荷が高まった時期に、一気に窓口を増やし、その後、問い合わせの数が安定してきたところで縮小するといった運用を行いました。またAWSでは、新型コロナウイルス感染症に向けた支援策のひとつとして、Amazon WorkSpacesを無料提供する期間を設け、多くのユーザーに使っていただくことができました。これまで使ったことがなかった企業では、これらのツールの活用メリットを体感していただけたと思います。

 これまでAWSが訴求してきた、クラウドのスピードの速さ、そしてクラウドの柔軟性のメリットを実感した企業が多かったといえます。すぐに使い始められ、拡張もでき、不要になったらやめることができます。

 また幅広いサービスがありますから、必要なものだけを選択して利用すればいいわけです。使うか、使わないかはお客さまの判断です。このハードルの低さが、従来のITとは異なるクラウドの良さであり、メリットです。

 ただ反省しなくてはいけないのは、かなり多くのお客さまから、「こんなにいいソリューションを持っていたのならば、もっと早く教えてくれればよかったのに」と言われたことでした。私たちが、しっかりとお伝えができていなかったという反省があります。

 AWSには、200以上のサービスがあり、そのなかのひとつとして、これらのソリューションも提案をしてきてはいましたが、お客さまの関心がAmazon EC2 やAmazon S3などに集中し、なかなかその良さをご提案できずにいました。

 しかしこの1年間で、「こんなサービスがあるんだったら、すぐに導入してみたい」という声をずいぶんといただきました。AWSの守備範囲の広さを知っていただき、「次は、AWSのこのソリューションを使ってみよう」というような動きもずいぶん出てきた1年でしたね。

 AWSが提供するソリューションやテクノロジーに対する理解が深まり、さらに、Amazonの企業文化を知ることにもメリットを感じていただけた1年だったといえます。

AWSのこれまでの歩み

クラウドのメリットが理解された1年

――これは、新規ユーザーの獲得にもつながっているのですか。

 それは確実につながっています。Amazon WorkSpacesの利用者が増加したり、Amazon Connectの導入が促進される一方で、AIやML、IoTを活用して、業務改革に取り組んだり、顧客満足度を高める施策のためにデータを駆使し、そのためにデータベース周りのマイグレーションに投資をするといった動きも増えています。フロントシステムと基幹システムを連携させるだけでなく、基幹部分をAWSに移行させようという動きが出てきています。

 AWSに対する期待値が高くなっていることを感じます。さまざまな業界のさまざまな企業、さまざまな部門で、AWSのさまざまなサービスが活用されており、幅広いお客さまに利用していただいているところは、AWSらしい部分だといえます。

 そして最も大きなことは、クラウドの価値を多くの企業が実感として理解できたことだといえます。日本の企業は、リフト&シフトによってクラウドを活用し始めるケースが多いのですが、そこまでやって満足してしまうということも少なくありませんでした。

 しかし、クラウドの最大のメリットであるスピードを生かすためには、クラウドに持ち上げてシフトするだけでなく、クラウドネイティブアプリケーションの開発に移行し、マネージドサービスを活用することが大切であることに気がつき始めた企業が増えてきました。ここまできて、初めて、クラウドのメリットを100%以上得ることができます。

 そして、クラウドを使いこなすためには、従来の仕組みのままでは限界があり、社会の変化に追随できるような考え方や組織体制へと変えていく必要があることも理解されるようになった。これは、外部環境の変化によって、多くの企業が感じていることであり、この1年の大きな変化のひとつだったといえます。

速度を上げて、二人三脚で並走する

――2021年は、AWSにとってどんな1年になりますか。

 ひとことでいえば、「お客さまと並走をしていく1年」になります。これは、これまでにもAWSが掲げてきた言葉ですが、その役割がより重視される1年になると考えています。クラウドが、従来のハードウェアやソフトウェアと異なるのは、導入して終わりではないという点です。

 実際、クラウドの多くは、スモールスタートではじめて、そこでクラウドの良さやメリットを理解してから、それから本格的に使い始めるというお客さまがほとんどです。使ってもらって終わりではなく、クラウドを利用してもらってから、本当の関係が始まるのです。

 ソリューションの活用方法やアーキテクチャの構築手法などを提案し、お客さまと並走し、お客さまを成功に導くことが私たちの役割です。クラウドを導入するのが目的ではなく、クラウドを導入して成功をしてほしい。もし、そこで失敗をするとお客さまにも大きな損失が生まれます。それは絶対に避けなくてはなりません。

 2020年は、多くの企業が劇的な変化に対応することに追われましたが、2021年は、この1年に蓄積し、構築してきたものをどう加速するかが大切になります。そこの支援に力を注ぎたいですね。

 これまでAWSを活用していただいているお客さまに加えて、新しいお客さまが増えています。これまで以上にお客さまとしっかりと並走していくことが、いまのAWSには求められていることだと思います。動きは加速しなくてはなりませんから、並走する速度も少し上げなくてはならないですね(笑)。そして、二人三脚による結びつきも、より強固なものにしたいと思っています。転ばずに、速度を上げて、二人三脚で並走するのがAWSの役目です。

顧客に並走し、クラウドジャーニーの加速を支援するという

――2021年の注力領域はどこになりますか。

 ひとつめは、業種ごとにあわせたソリューション提案の取り組みを強化していくことです。製造、自動車、メディア、金融、ゲーム、ヘルスケア、通信、小売に加えて、公共分野を重点業種として、業種ごとのワークロードに最適化したソリューションを提供していきます。

 例えば製造業向けには、コンピュータービジョンを使用して視覚表現の欠陥や異常を発見する「Amazon Lookout for Vision」、ヘルスケア業界では、医療データを保存、変換、クエリ、分析するのに適した「Amazon HealthLake」、通信業界では5G デバイスのための超低レイテンシーアプリケーションを提供する「AWS Wavelength Zone」といったソリューションを提供していくことになります。

 こうした、業種ごとに最適化したソリューションが増加しているのに加えて、日本では重点業種ごとに専門特化した組織を編成し、さらに、業種ノウハウを持ったパートナーとの連携を強化しています。また、スタートアップ企業はAWSにとっては重要なユーザーであり、ここにも継続的にサポートを強化してきます。

――2021年は、特に、金融業界に特化した組織を強化することを発表していますね。

 金融分野は、これまで以上に力を注いでいく領域のひとつになります。営業、技術、プロフェッショナルサービスの人員を配置し、金融業界の経験者も採用しています。また、Fintech、地銀、メガバンクまで、多くの金融機関に対して、ミッションクリティカルなワークロードを、クラウドへと移行できるベストプラクティスを提案しています。

 いま金融機関に求められているのは、コストダウンではなく、イノベーションです。テクノロジーによって課題を解決したり、顧客接点においてもデジタルの力を活用したりすることを、多くの金融機関が真剣に考えています。また、Fintechと基幹システムとの連携が、2021年以降は一気に加速することも想定されます。そうしたニーズに対応するための組織をしっかりと整えます。また、金融分野におけるスペシャリストがグローバルにいますので、そうした知見も生かしたいですね。

 そして、セキュリティでも強みがあります。日本でもFISCの認証などを取得していますが、グローバルでもさまざまな認証を取得している実績は、競合他社よりも一歩進んでいますし、これが、金融機関が安心して採用していただけるクラウドプラットフォームを提供できる素地(そじ)になると考えています。

 そして、AWSが持つスピード感やイノベーションカルチャーも一緒に提案をしていきたいですね。AWSでは、金融ビジネス戦略「Vision 2025」を新たに掲げました。これを軸に金融分野向けの取り組みを促進していきます。

――公共分野においては、総務省による第二期政府共通プラットフォームに、AWSが採用されました。これは、どれぐらいのインパクトがあるものだと考えていますか。

 AWSが、政府の共通プラットフォームがAWS上で稼働することは、とても光栄なことです。政府が、クラウド・バイ・デフォルトの方針を出し、2020年にデジタル・ガバメント実行計画を策定し、2021年秋のデジタル庁の創設に向けた取り組みを開始しているなかで、AWSが採用されたという点では大きな注目を集めていますし、政府だけでなく、地方自治体でも、AWSに対する関心が高まっています。

 AWSでは、行政の方々と緊密に話し合いを行う場を設けています。もし足りないものがあれば、その解決に向けても、耳を傾けていく考えです。政府と並走していくという姿勢は、日本の企業に対する姿勢と一緒です。政府のデジタル化はまだ始まったばかりですし、スピード感を持って取り組んでいかなくてはならないという状況にあります。

 AWSの強みを生かして、政府のデジタル化を成功に導き、貢献をしていきたい。その結果、長く使っていただき、さらに作っていただく領域を増やしてもらいたいと思っています。パートナーと一緒になって、政府のデジタル化を支援していきたいと考えています。

 そして、これは公共分野だけでなく、日本におけるAWSのビジネスにとって大きなインパクトをもたらすものだといえます。日本のお客さまは新たなソリューションの導入には慎重であり、導入実績や導入事例を重視する傾向があります。数年前から、三菱UFJフィナンシャル・グループやソニー銀行など、金融分野における導入実績が生まれ、そこから日本の金融分野ではAWSを採用する動きが増えています。

 また、この実績が、これからクラウドを導入したいと考えている日本の企業において、AWSを検討する動きを後押しすることにつながっています。昨年、第二期政府共通プラットフォームに、AWSが採用されたことは、これと同じインパクトがあるといえます。

 クラウドテクノロジーは業種をまたぐものです。その一方で、ソニーがクルマを作り始めるなど、産業の枠を超えた動きも始まっています。まずは、業種や業界のことをしっかりと理解し、その上で、クラウドやデータを活用することで、さまざまな業種が結びつく流れをとらえたい。そこにAWSが培ってきた経験やノウハウが生き、AWSならではの提案が行えるようになると思っています。

日本の企業のマイグレーションを支援

――2021年における2つめの注力領域はどこになりますか。

 2つめは、日本の多くの企業が取り組み始めている基幹系システムのマイグレーションです。これは簡単なものではなく、時間もかかりますが、いかにスピード感を持ってAWSに移行することを支援し、成功に導くことができるかが重要なポイントになります。

 ただ、マイグレーションの中身というのは、お客さまによって大きく変わります。例えば、まずはSAPを移行するというマイグレーションもありますし、データレイクをフロントシステムと結んで活用するために、基幹システムをAWSに移行するというものもあります。海外でマイグレーションをやってみて、その成果をもとに日本でもやってみるというケースもあるでしょう。

 この取り組みのなかで中核になるのが、AWS Migration Acceleration Program(MAP)です。MAPでは、専任のカスタマーサクセスマネージャー(CSM)が、企業のクラウドジャーニーをサポート。クラウドの推進や、定着する仕組みの提供、継続利用のための追加支援の3点を柱として、さまざまな施策を用意しており、大規模なクラウド移行に取り組む企業や組織を、計画、移行準備から実行までを加速して、お客さまを成功に導くための包括的なプログラムとなります。大規模になればなるほど、複雑になればなるほど、MAPは効果を発揮すると思っています。

 AWSはグローバルでさまざまなマイグレーションを行い、数多くの知見を蓄積しています。どうすれば成功するのか、どこでつまずきやすいのかといったことを理解しています。ただ、これまでは、それぞれの知見やノウハウがバラバラになっていました。それをひとつにまとめたのがMAPとなります。シンプルな構成であり、パートナーも、お客さまも、理解しやすい体系として提供することができるようになります。

AWS Migration Acceleration Program

大阪リージョン稼働のインパクトは?

――いよいよ2021年3月から、大阪リージョンが本格稼働しました。2011年3月の東京リージョンのスタート、そして、2018年2月から大阪ローカルリージョンを稼働していたことを考えるとからみると、ちょっと時間がかかっていませんか(笑)

 お客さまからもそういうご指摘をいただくとこもあるのですが、なかには「思ったよりも早かったね」と言われることもありますよ(笑)。東京リージョンと大阪リージョンは400kmの距離にありますが、実は、この距離で2つのフルリージョンがあるというのは日本だけなんです。

 日本のユーザーにとっては、国内に2つのフルリージョンが設置されたことで、AWSの活用の幅が広がったといえます。特に、日本からデータを外に出したくないというユーザーにとっては大きなメリットがあります。ディザスタリカバリの際にも、日本だけで完結することができるようになります。また、低遅延の環境が広がり、サービスによって、リージョンを選択するということもできます。

 東京リージョンのなかには、複数のアベイラビリティゾーンがありますので、耐障害性や災害対策という点でも、優れた環境を用意していました。それと同じものが大阪リージョンにも用意されたことで、より安心、安全な環境で、AWSをすぐに利用することができます。

2021年3月から大阪リージョンが本格稼働

パートナーのスキル向上に継続的に取り組む

――パートナー戦略の強化も、2021年は重点戦略にひとつに掲げていますね。

 日本のクラウド活用を次のステージに押し上げるためにはパートナーの協力が欠かせません。現在、国内345社のコンサルティングパートナー、360社のテクノロジーパートナーとともに、クラウド活用のあらゆる局面にある企業や組織に対して、専門知識を持ったAWSパートナーが、クラウド導入をサポートすることになります。

 ワークロードに特化したり、業種に特化したりといったコンピテンシープログラムを用意し、厳しく、細かい審査を行い、それをクリアしたパートナーだけを認定しています。ここは10年以上、投資を強化し続けてきた領域です。決して、パートナーの数を増やすことを追っているのではなく、むしろクオリティを求めています。

 パートナー制度は、スタンダード、アドバンスド、プレミアという3つに分かれており、それぞれのパートナーが持つユーザー数や事例の数、認定技術者の数をもっとスキルを高めるための支援を行い、ユーザー企業から、「さすがAWSのプレミアパートナーだ」、「AWSのアドバンスドパートナーはしっかりと期待に応えてくれる」といってもらえる環境を作りたいと思っています。

 AWSは、サービスをどんどん改善し、新たなサービスを続々とリリースしています。2020年12月に開催した「re:Invent 2020」では、新たに27のサービスを発表し、2020年には、2757もの機能が追加されました。それに追いつくだけでもパートナーは大変かもしれません。

 しかし、クラウドのビジネスは、先にも触れたように、導入して終わりではなく、導入後が本番であり、導入後もさまざまな提案をしていくことが大切です。パートナーには新たなスキルやノウハウを身につけていただき、お客さまとともに進化していただかなくてはいけません。さびつかないようにブラッシュアップをしていかなければ、お客さまの成功を支援できません。ですから、自らスキルアップを続けるんだというマインドを持ったパートナーに対して、AWSはしっかりと支援をする体制を敷いていきます。

 リフト&シフトは一定の成果はありますが、クラウドのオペレーテイングモデルへの移行できませんし、クラウドの価値を最大限活用することはできません。先進的なパートナー企業はこれと同じ認識を持っています。リフト&シフトの提案もクラウドの価値は提供できます。しかし、お客さまがクラウドの価値を最大限活用し、成功していただくためには、その先の提案が必要になります。AWSは、そのために、パートナーに対する技術支援を強化し続けているのです。

――一方で、2020年には日本初のディストリビューターとして、ダイワボウ情報システムとのパートナー契約を締結しましたね。これはどんな狙いがありますか。

 地方都市を中心に、AWSが声を届けられていなかったお客さまに対してもアプローチすることが狙いとなります。ダイワボウ情報システムには、全国90拠点の地域密着型の営業体制と、約1万9000社の販売パートナーネットワークがあります。全国の企業や地方自治体、教育機関にAWSの価値を届けることができ、クラウドシフトを支援することになります。

 まずは、Amazon WorkSpacesなどを活用したリモートワーク支援という点での提案を進めることになります。ただ、AmazonEC2やS3を使いたいといった場合にも、きっちりと対応できる体制づくりのためのトレーニングを提供していきます。さまざまな要望に応えられる体制を構築し、関係を進化させていきたいと考えていきます。

――これまで日本では、AWS Outpostsについては、あまり言及することがなかったように感じます。ハイブリッドクラウドやエッジコンピューティングに注目が集まるなか、日本では、どんな展開を計画していますか。

 実は、AWS Outpostsは水面下で多くの引き合いをいただいています。日本でのローンチは2020年であり、まだ公表できる事例がないのですが、2021年中にはなにかしらの事例が公開できるのではないかと考えています。日本のお客さまには最適なソリューションだと認識しています。

人材育成にも力を注ぐ

――今後、日本におけるAWSのビジネスはどう進化していきますか。

 企業のIT支出に占めるクラウドの割合はわずか4%しかありません。しかし、日本のお客さまに話を聞くと、さまざまな業種の人たちが、ミッションクリティカルシステムをはじめとして、社内システムをマイグレーションしたい、そして、企業そのものをイノベーションしたいという流れが顕在化しようとしています。この流れをAWSがいかに支え、成功に導くかが重要になります。この姿勢は変わりません。

 イノベーションに対する機運が、過去にないほど高まっています。AWSには、それに応えられるテクノロジーがあります。しかし、その一方で、企業のなかには、それをいかに活用するか、どうビジネスに直結させるか、といったことを担える人材が不足しているという課題があります。こうした人材をしっかりと育成していかなくてはなりません。人材育成にはこれまでにも積極的に取り組んでいますが、2021年はさらにアクセルを踏んでいきます。

 日本のお客さまやパートナーがタイムリーに学ぶことができるように、日本に収録が可能なスタジオを設け、独自のコンテンツを配信できるようにしました。コンテンツの内容を充実させ、長期的な視点からも、日本のデジタル化が加速することを支援したいと思っています。