大河原克行のキーマンウォッチ

Dropbox Japanが推進する“バーチャルファースト”とは? 五十嵐光喜社長に2021年の展開を聞く

 働き方が大きく変化するなか、日本において、Dropboxを採用する動きが加速している。コンシューマ利用から始まったDropboxならではの使い勝手の高さや信頼性の高い各種機能にも関心が集まっているほか、2020年秋から提供を開始した電子署名ソリューション「HelloSign」も、問い合わせが殺到し、注目の高さを裏づける。

 その一方で、新たに「バーチャルファースト」を宣言。自ら新たな働き方に挑戦し、その成果を製品やサービスに展開するとともに、ノウハウや知見をユーザー企業と共有する考えも示す。

 Dropbox Japanの五十嵐光喜社長に、日本における2021年のDropboxの取り組みについて聞いた。

Dropbox Japanの五十嵐光喜社長

リモートワークが「なくてはならないもの」へと変化した2020年

――2020年はDropbox Japanにとってどんな1年だったのでしょうか。

 日本の政府は、新型コロナウイルスの感染拡大前から、東京オリンピック開催時の柔軟な働き方を実現するためにリモートワークを推奨し、私たちもそれにあわせる形で、セミナーなどを通じて、そのメリットを訴求してきました。

 そこでは、2019年10月に発生した台風19号の影響で、首都圏の交通がまひし、それにもかかわらず、何時間もかけて会社に行くことがどれだけ無駄なのかといった事例なども出しながら、働き方改革の重要性や、リモートワークのメリットを示してきました。しかし、それが理解されない状況が続いていたのが実態でした。

 ところが、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の発令によって、多くの企業が一気にリモートワークへと移行しました。政府が強く要請しても、私たちがリモートワークのメリットを訴求しても、なかなか通じなかったものが、コロナ禍でリモートワークに対する理解が一気に進み、働き方改革が企業にとって避けては通ることができないものになったのが2020年だったといえます。

 リモートワークが、「nice-to-have(あった方がよい)」ではなく、事業継続のために「must-have(なくてはならないもの)」に変わりました。こうした大きな環境変化のなかで、Dropboxにも数多くの問い合わせをいだたきました。これまで一度もリモートテレワークをやったことがない、ITリテラシーを持った社員がいないといった企業からの問い合わせも多かったですね。

――Dropboxのどんなところに関心が集まったのですか。

 ひとつは使いやすさです。もともとDropboxはコンシューマから生まれた技術であり、現在、全世界180カ国以上で、6億人以上のユーザーが使用しています。Dropboxを体験した人からは、「これならば現場でも使える」といった声を多くいただいています。
 2020年におけるIT導入が、これまでのIT導入と大きく異なる点がひとつあります。それは、従来はITを必要とする人や、ITを使わなければならない人にだけ導入すればよかったのに対して、2020年は全社員を対象にITを導入しなくてはならなくなったという点です。

 この結果、20代の社員も60代の社員も、どんな役職の人でも使えることが重視されました。この点でもDropboxの良さが再認識されました。「これならばすべての従業員が使える」といった、Dropboxの強みが生かされた1年だったともいえます。

 もうひとつはパフォーマンスの高さです。在宅勤務になると、家庭ごとにネットワーク環境が異なったり、使っているデバイスも多岐に渡ったりします。Dropboxは、さまざまな環境においてもパフォーマンスを維持し、スピードを発揮できるプラットフォームとしても評価をいただいています。

 また、教育現場での利用も促進されました。ここでは、Dropboxを単なるファイル置き場に使うというよりは、授業の一環として利用するケースが目立ちました。追手門学院大学では、従来の仕組みのままでは、学外からのアクセスに課題があったため、Dropbox Businessを採用し、学生が、いつでも、どこからでも、クラウドにアクセスして、講義資料やレポートの内容を確認できる環境を構築。効率的にリモート授業を行うことに成功しました。また、関西大学では、学生や教員が、ストレスなくデータの閲覧や共有ができる環境を実現する一方、ストリーミング授業でもDropbox Businessを利用しています。

基幹サービスであるDropbox Business

――Dropboxには、オンラインストレージの企業というイメージが長年ありましたが、このイメージも、この数年で大きく変化してきていますね。

 Dropboxは、単なるクラウドストレージの提供から、オープンなコラボレーションのプラットフォームを提供する企業へと進化してきたわけですが、もともと「口下手」なDropboxでしたから(笑)、伝えたいものが伝わらないという状況がありました。

 ここ数年は、発信力を高めることに力を注ぎ、その結果、Dropboxの取り組みが少しずつ理解されはじめてきました。かつては、同様のサービスを提供している企業とともに、「十把(じっぱ)ひとからげ」でとらえられることが多かったり、ビジネスでの利用が多くても、コンシューマ向けサービスの会社という印象が強かったりという状況でしたが、その認識も大きく変化しています。

 さらに、リモートワークの浸透とともにDropboxに対する認知度が高まる一方で、Dropboxの強みがどこにあるのかが理解され、企業向けサービスとしても、信頼性が高く、専門性の高さを持った企業であるという認識が広がっていることを感じます。

 例えば、Dropbox Japanでは、Dropboxユーザー同士の会話を醸成する取り組みに力を入れています。同じ業界の企業同士が、活用メリットを共有できる場を提供し、ユーザー各社が持つ知見を活用できるというものです。ここにメリットを感じてもらえるユーザーも多いですね。現在、「建築・土木」、「教育」、「メディア・エンターテインメント」の3つの業界を対象にコミュニティを運営していますが、今後、業種の幅を広げていきたいと思っています。

 Dropboxが目指しているのは、「新しい働き方を提案する会社」です。2020年は、その実現に向けて、大きな一歩を踏み出せたと考えています。

 しかし、その一方で、Dropboxの基盤ともいえるFile Sync and Share(FSS)に対しても、ますます強化をしています。ビジネスコンテンツの管理性を高め、パフォーマンスを高め、さらにセキュリティを高きます。個人を特定するようなPII(Personally Identifiable Information)データを検出したり、シェアしてはいけないところとシェアしようとしたりしたらアラートを出す、より大容量のファイルや多くのファイルを扱えるようにする、といった強化をしていきます。

製品の強化、ポートフォリオの拡充、マーケットのデマンドが重なった年に

――外から見ていると、2019年には日本における製品の強化やサービス体制の強化などが進み、その上で、2020年の大きな市場変化の時期を迎えたように見えます。

 2019年は、Dropbox Businessをはじめとした製品の強化、AWSの東京リージョンによる国内ホスティング環境の運用開始、LINE WORKSなどの日本でよく利用されているツールとの連携推進などを進めてきました。

 確かに、2020年はそれらが必要とされる状況が生まれたともいえます。製品の強化、ポートフォリオの拡充、マーケットのデマンドが重なったのが2020年であり、Dropbox Japanのビジネスに一層加速がつきました。

 新型コロナウイルスの感染拡大前からDropboxを導入していた企業からは、「導入しておいてよかった。助かった」という声も数多くいただきました。また、新たにDropboxを利用した企業からも、新たな働き方に移行するのに有効なツールであったという評価をいただいています。

 最近では、DropboxとSlack、DropboxとZoom、Dropboxと業務アプリケーションといった連携利用が飛躍的に増えています。

――2020年11月には、バーチャルワークスペースである「Dropbox Spaces」の進化も発表しました。

 Dropbox Spacesはコラボレーションのためのワークスペースであり、現在、2.0のβ版を提供しています。チーム作業の効率化、日々の作業の優先順位づけ、仕事を円滑に進めるためのチーム連携機能を提供し、情報整理や共同作業、場所を問わない安全な作業を可能にする複数の新機能も搭載しています。

 Dropboxの共同作業機能が1カ所に集約されているため、チームが共同でプロジェクトを管理することができます。コラボレーションツールというと日本ではぼんやりとした形になってしまいますが、Dropbox Japanでは、これをプロジェクトのためのツールであることを前面に打ち出し、プロジェクトの完遂までをしっかりと支援することを目指します。

 コロナ禍において、日本のお客さまからは「プロジェクトの遂行時にタスクを見える化したい」という声を数多く聞きます。これまでは、社員などとの直接会話をもとにして進捗管理や時間管理をしていたものが、リモート環境になって、どこに何があるのかわからない、誰が何をしているのかわからないという状況が生まれています。

 Dropbox Spacesによって、誰が、どこに向かって、何をしているのか、どんなタスクが進行しているのか、何が遅れているのか、ということがわかるようになります。新たな環境のなかで、管理者が課題と思っていることを解決できるツールになると思っています。日本のデジタルシフトに貢献できる製品だと位置づけています。

Dropbox Spaces

――リモートワークでは、ハンコの弊害が指摘されています。Dropbox Japanが2020年秋に発表した電子署名ソリューション「HelloSign」にも注目が集まっているようですね。

HelloSign

 日本で正式に製品発表をする前から問い合わせをいただいていたほどで(笑)、問い合わせの数は、私たちが想定していた以上のものになっています。しかも、業種や企業規模を問わず、あらゆる企業から関心をいただいていますし、パートナー企業からも、HelloSignの話をもっと聞きたいという要望があります。

 HelloSignはDropboxの機能の一部としてシームレスに組み込まれているため、Dropboxから直接、重要なドキュメントの送信や署名が可能となり、それらを1カ所に整理して保存することができます。署名が完了すると、署名済みコピーが自動的にDropboxに保存され、電子署名の実行やドキュメントが共有できます。そして特徴的なのは、これらのすべての署名プロセスを日本のなかで完了し、ドキュメントをそのまま日本国内に保存できる点です。

 電子署名を行うには、紙のデジタル化が必須です。デジタル化においては、デジタルの書類を保管しなくてはならず、サインする前、サインをするとき、サインをしたあとのプロセスを、ビジネス上、意味のある形で進める必要があります。具体的には、法的拘束力のある電子署名によって、安全なハンコレスやペーパーレスを実現しなくてはならない。HelloSignはそれを実現できます。

 また、API機能であるHelloSign APIでは、システムのなかにHelloSignを組み込み、シームレスに電子署名ができるようになります。SaaSなどで提供されているアプリや、社内システムにも活用できます。これにより、電子署名のために新たなワークフローを導入するのでなく、いままで慣れ親しんだワークフローのなかで電子署名を活用できるというわけです。すでに、開発パートナーのキャップドゥが、サイボウズのクラウドツール「kintone」と連携する「Dropbox HelloSign for kintoneプラグイン」を提供するといった動きもあります。

 それとHelloSignでは、ホワイトラベリングとしての導入も可能です。つまり、HelloSignやDropboxのブランドが表に出ない形で、HelloSignの電子署名の仕組みを組み込むことができます。アプリの開発者が、電子署名をひとつの機能として付加しやすくなりますから、ここに興味を持つデベロッパーも多いと思います。

 今後、国産ソフトウェアやアプリケーションとの連携をさらに推進することで、組織の業務効率化に貢献していきたいと考えています。

 電子署名の実現において、Dropboxはユニークなポジションにあります。2021年には、日本における具体的な活用事例を紹介できると考えていますし、Dropbox Japanにとっても、大きく成長し、飛躍するビジネスになると期待しています。

――Dropbox Japanのビジネス成長は、どんな勢いを見せていますか。

 地域ごとの業績は公開していないのですが、Dropbox Japanの成長率は、グローバルでトップ5に入っており、非常に高い成長率となっています。

 日本のユーザーは、一度導入すると解約が少なく、その低さも圧倒的です。サブスクリプションモデルは、使ってもらうことでビジネスが成長します。Dropbox Japanのユーザーは、ライセンスをしっかりと使い切ってもらい、さらに拡張していただくというケースが多いですね。使いやすさを感じていただいていること、使うことでビジネスバリューを生み出すことを認識していただいていることが、日本ビジネスの成長のベースにあります。

 そして、こうした製品の良さに加えて、日本のお客さまに満足してもらえるサポートを提供することに力を注いでいます。ここにも高い評価をいただいています。ここ数年は、社員数は倍増し続けており、それによってサポート体制や営業体制を強化し、顧客満足度の向上につなげています。

「バーチャルファースト」企業を目指す狙い

――Dropboxでは、2020年10月に、「バーチャルファースト」企業になるという宣言を打ち出しました。これはどんな狙いを持ったものになりますか。

 バーチャルファーストは、Dropboxのミッションである「スマートな働き方を創造する」ことや、モットーやポリシーを具現化するものとなります。

 いままでのDropboxは、新しい働き方を具現化するための製品開発を行う企業でした。これは変わりません。仮に、この取り組みを「右手」とすれば、バーチャルファーストの取り組みは「左手」だといえます。われわれ自身が、バーチャルファーストの企業になることを体現して、それを、お客さまやパートナーに伝えていくのが、この宣言の意味です。

 プロダクトベンダーとしてのDropboxにとどまらず、経験をシェアして、それによって市場をリードしていくことができる企業になることが、バーチャルファースト企業宣言だととらえてもらうといいと思います。

 これを全社で推進し、その経験も製品に組み込んでいくことになります。言い方を変えれば、新型コロナウイルスによる環境変化によって、Dropbox自らが、「左手」の重要性に気づくことができたともいえます。

 Dropboxというクラウドツールは、どこにいても仕事ができるように作られています。また、リモートワークを行うというDNAが社内にあり、会議をする場合にも、それぞれの社員が働きやすい場所から参加するといったことが行われていました。

 しかし、基本的には、ほぼ全社員が毎日出社しており、会議を行うにも暗黙的に対面で行うことが前提となっていました。これに対して今後のDropboxでは、すべての仕事をリモートでやるにはどうするかといったことを、まず考えます。Dropbox Japanでは、お客さまのもとに出向いたり、イベントを行ったりといったように、外にかかわる時間が多かったのですが、これについても「リモートワークであればどうするか」ということを考えていくことになります。

 Dropbox Japanでは、新型コロナウイルスの感染が日本で広がる前の2020年2月18日から、全従業員が在宅勤務体制へ移行しました。米本社や欧州では、まだそこまでやっていないタイミングで日本が先行したのです。それ以来、日本でのオフィスへの出社率は0%です。現在、2021年6月まで継続することを発表しています。

 先に触れたように、Dropbox Japanの陣容拡大に伴い、2019年9月には広いオフィスに移転し、より快適なワークスペースを準備したのですが、いまは社員と社員の家族の健康が最優先ですから、オフィスへの出社はまったくありません。

 在宅勤務を徹底し、それをベースにして、バーチャルファースト企業へと移行する期間であると位置づけています。2021年7月からのバーチャルファーストの本格運用に向け、準備を進めているということになります。

――バーチャルファーストとリモートワークは、同じ意味ではないのですか。

 リモートワークは、バーチャルファーストを構成するひとつのピースです。バーチャルファーストで実現しようとしているのは、バーチャルでできることはやるというものであり、すべてをバーチャルでやり切る、というものではありません。

 新型コロナウイルスの感染状況や、社会環境の変化をとらえながら、対面でのミーティングや、対面でワークショップを行う必要があるところは、それを行うことも視野に入れます。社内のコラボレーションやディスカッション、チームビルディングといった活動を、オフィスで行う必要があれば、それも行う。対面で行う、リモートで行うということに振り切るのではなく、ベストオブブリードのなかから、最適なものを使い分けていくのがバーチャルファースト企業の姿です。

 それぞれの国に最適化したバーチャルファースト企業の姿を検討しており、Dropbox Japanにおけるバーチャルファーストの姿もデザインしているところです。

――Dropbox Japanがバーチャルファースト企業を実現する上で、すでに、いくつかの施策が進んでいるのですか。

 ひとつは、物理的に人が集まって共同作業を行うスペースである「Dropbox Studios」の設置を検討しています。これは、グローバルで展開しているもので、日本でも2021年7月までに開設することを目指しています。Dropboxの既存施設や社外の多目的スペースを利用して、対面での共同作業やチームミーティングが実施できるようになります。

 日本ではどういう形のDropbox Studiosにするのか、そこでどんなアクティビティをするのかといったことを検討しています。いまの本社のなかに作るのか、別のところに作るのか、国内にいくつ開設するのかといったことを含めて、ゼロベースで考えているところです。Dropbox Studiosが完成しましたら、ぜひ多くの人に見ていただきたいと思っています。

 また、Dropbox Studiosによる共同作業の場を提供する一方で、一人ひとりがストレスなく仕事ができる環境づくりにも取り組んでいます。在宅勤務が広がったことで顕在化したのは、家のなかは仕事をするのに適したスペースではないという点です。

 特に日本では、住環境の問題もあり、仕事をするスペースが確保できなかったり、同じ部屋に子供がいたりといった環境もある。さらに、家庭内でのソロワークが増えたことによって生まれるメンタルケアの課題もあります。Dropbox Japanでは、在宅勤務のサポートとして、ベビーシッターの利用に関する費用面での支援や、メンタルケアのプログラムも提供している。これからの働き方なかでは、こうしたことも重要な要素です。

 今後、バーチャルファーストの取り組みが本格化したときに、自宅近くのコワーキングスペースを利用できるようなサポートや、人に会ったあとに、近くのシェアオフィスを利用できるといった仕組みも用意し、いつでも、どこでも、自分の生産性を最も上げることができるソロワークの環境を作ることを考えています。

 このように、バーチャルファースト企業の実現に向けて、働き方をゼロベースで考え直すことになります。

 バーチャルファースト企業の最初のステップとして、「バーチャルファーストツールキット」を用意しました。これは、Dropboxが社内でバーチャルファーストに取り組む際のノウハウ集、ガイダンス集といえるもので、将来的には、お客さまに提供していくことも考えています。ここでは、コアタイムを設定してミーティングを行うなどのベーシックな仕組みづくりや、効果的なミーティングを行うための手法などを提示しています。

 例えば、会議を設定する際にも、リモートワークでは、子育てをしていたり介護をしていたりする社員に配慮することが大切であること、異なるタイムゾーンの社員同士が働く際にも時間帯を配慮する重要性などを示しています。

 現場では、子育てがあって会議に出られないが、それをなかなか言い出せないという状況も生まれています。そうした弱者の立場に配慮することが、リモートワークを実施する上ではとても重要であること、また、効果が高い会議をするにはDACI(Driver、Approver、Contributors、Informed)を決めて議論をすることが大切であることなども示しています。

バーチャルファーストツールキット

――バーチャルファーストへの取り組みでは、顧客向けのアプローチも用意していますね。

 Dropbox Japanでは2020年10月末に、「新しい働き方ご相談窓口」を開設しました。これは、リモートワークに関する悩みを抱える企業が多いことに着目し、Dropbox Japanが蓄積してきたリモートワークのナレッジを、少しでも多くの皆さまに共有したいと考え、開設したものです。

 これまでにも多くの問い合わせをいただいていましたから、それに対応するために専用窓口として用意し、Dropboxの製品の話に限らず、リモートワークをはじめとする新たな働き方に関する悩みに相談できるようにしています。

 気持ちとしては先に進みたいが、何をしていいかわからないといった企業に対して、Dropbox Japanでは、こんな課題に対して、こんなことをし、この成果が生まれた、あるいは、まだ解決できていない部分がここで、こんなことに継続に取り組んでいるという体験を提供したいと考えています。

 実際、社員労務や業務進捗の管理をどうしているのか、どのようなツールを利用して在宅勤務を実現しているのか、といった質問も多く、地方の企業からは、クラウドの採用に関する基礎的な問い合わせも増えています。

 新しい働き方ご相談窓口は、Dropboxの製品を販売する窓口ではなく、新しい働き方へのシフトにおいて、困っている企業を支援するものとなります。この窓口を通じて、バーチャルファースト企業で目指すなかで、経験をシェアする企業としての役割を果たしたいと思っています。リモートワークや新しい働き方で困っている企業の方々は、ぜひ一度利用していただきたいですね。

お客さまとともに日本の新しい働き方を創造していく

――2021年は、Dropbox Japanにとって、どんな1年になりますか。

 2021年は、製品面ではHelloSignが注目を集める1年になるでしょうし、Dropbox BusinessやDropbox Spacesの提案もしっかりとやっていきたいですね。

 また、必要に応じて国内ホスティング環境をさらに強化したり、ネットワーク環境を強化したりしていくなど、インフラの強化にも取り組みます。現在、国内でギガビットクラスのネットワーク網を2本敷いていますが、これは競合他社にはないものです。これをより太くしたり、回線を増やしたりといったことも考えていきます。

 さらに、パートナー戦略も強化していく考えです。2020年には、日本ヒューレット・パッカードやレッドハットでパートナービジネスを率いた経験を持つ、玉利裕重をパートナー事業部長に迎え、パートナーとの連携体制を強化しました。

 パートナーとともに新規顧客の獲得にも積極的に乗り出し、HelloSignのような新たな提案では、新たなパートナーと連携するといったことも進めていく考えです。Dropbox Businessでは、FSS機能をよりディープにインテグレーションできるパートナー、Dropbox Spacesの使い方を深堀した提案を行えるパートナーなどとの連携も強化していきます。パートナーの力を発揮できる関係を日本で構築したいですね。

 2021年は、Dropbox Japanにとっても、新たな1年になり、新たな働き方の環境を提供していく1年になります。電子署名を含めたエンドトゥエンドのデジタルコンテンツプラットフォームと、Dropbox自身が経験し、リードするバーチャルファーストの働き方からの知見をもとに、お客さまとともに、日本の新しい働き方を創造していきます。