事例紹介

マイナンバーを軸に母子健康・学校情報を集約し、子育て支援~前橋市

ICT街づくり推進事業(3)

 総務省では平成24年度から「ICT街づくり推進事業」に取り組んでいる。雇用、高齢化、医療、防災・減災、コミュニティ問題など地域が抱える複合的な課題を解決するため、ICTを活用した新たな街づくりについて検証する実証プロジェクト。公募した自治体や事業者に委託し、全国各地で実証実験が進められている。未来の街はどうあるべきか、そんな「ICT街づくり」の最前線を追う。

 今回は、群馬県前橋市における「ICTしるくプロジェクト」。ICTを活用した「学びの場の創造」と「健康を支える環境づくり」をめざしたもの。マイナンバーを想定した共通ID認証基盤の上で、母子健康、学校、医療、交通、生涯学習などの情報連携を進めている。

ICTしるくプロジェクトの全体図

めざすは「子育てのしやすいまち」

左から前橋市政策部 参事の糸将之氏、前橋市政策部 情報政策課 情報政策係 副主幹の綱島勇生氏、前橋市総務部 情報政策課 主事の瀬古尚彦氏。

前橋市役所にて赤城山を背景に

 群馬県庁所在地で、関東平野の北西端、赤城山南麓に位置する前橋市。人口は約34万人。近代には全国有数の養蚕地として名をはせ、萩原朔太郎ら多くの文人を輩出したことから、県内で「行政と文化のまち」に位置づけられる。

 そんな前橋市での実証実験は、主に「母子健康」と「学校」の情報を一元管理し、マイナンバーを想定した共通IDの下で、市民ごとに最適化された情報を提供するというもの。母子健康には、妊婦~小学校までの情報が含まれ、医療機関や学校での健康診断結果などが、スマホで閲覧できる。さらに学校情報(時間割、提出物、献立、アレルギー、登下校など)も加え、母子ともに健やかに暮らすための情報基盤を整えている。

 めざすは「子育てのしやすいまち」。前橋市政策部 参事の糸 将之氏は「前橋市には進学校や拠点病院が多く、市民からは“子育てしやすい”という声がありました。せっかくそういった声があるのだから、ICTによってさらにその特色を生かしたい。そんな思いから、ICTしるくプロジェクトを始めました」と語る。

 2013年度に前橋市のみで始まったこのプロジェクトは、2014年度も継続され、沼田市・渋川市・藤岡市・富岡市・榛東村にも広げる試みがなされている。「電子母子手帳」「電子お薬手帳」「地域医療連携」「マイナンバー制度」など先進的なICT利活用が特徴で、内容は以下のように大別される。その詳細について、糸氏に聞いた。

取り組み内容
母子健康ポータル母子手帳やお薬手帳の電子化を軸に、妊婦~小学校までの母子健康情報を一元管理。PCやスマホで閲覧可能に
前橋マイページ市民ごとに用意される市民ページ。市政情報を配信するほか、子どもの学校情報もリアルタイムに提供。PCやスマホで閲覧可能に
ICTまちなかキャンパスまちの空き施設でさまざまな講座を提供する「まちなかキャンパス」(生涯学習)を電子化
共通ID認証基盤上記をポータルに集約し、マイナンバーを想定した共通ID認証で利用

(川島 弘之)