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「問い合わせない」が6割超、ECサイトの不具合が即離脱に――New Relicが調査結果を発表
スマホ操作再現機能「Mobile Session Replay」を新たに提供
2025年12月19日 06:15
オブザーバビリティ(可観測性)プラットフォームのNew Relic株式会社は18日、「ネットショッピングのトラブル」に関する調査結果を発表した。ネットショッピングにおける応答速度の遅延やエラーなどの問題が、消費者の行動にどのように影響するかを調査したものだ。
また同日、スマートフォン上のユーザーの操作履歴を、動画を再生するようにプレイバックする新機能「New Relic Mobile Session Replay」も発表した。これによって、ユーザーの問題を再現して症状の特定を容易にし、迅速な解決につなげる。すでにパブリックプレビューとして使用できる。
この2つの発表について、New Relicは12月18日に記者発表会を開催。発表内容について説明するとともに、11月26日に発表されたエージェンティックAIの監視機能「New Relic Agentic AI Monitoring」についても説明した。
ショッピング中にECサイトに問題があった時に「問い合わせがない」63.4%、「他社に乗り換えたことがある」43.2%
調査は、New Relic株式会社が調査主体となり、株式会社インテージが実施した。これは、マイティモニターからランダムに抽出したモニターに対するインターネット調査だ。日本全国18~79歳男女個人で、ネットショッピングを「2~3カ月に1回以上利用している」、ネットショッピングにおけるトラブル経験が「たまにある」「非常によくある」という条件により、1052件の回答を得た。調査期間は8月1日~8月4日。
記者発表会で、小売のEC市場が堅調に成長しており、それによってECサイトにトラブルがあると即ビジネスに影響するようになっていると、New Relicの齊藤恒太氏(技術統括 コンサルティング部 兼 プロダクト技術部 部長)は、調査の背景として説明した。
調査結果の中でも特筆すべき点として、ECサイトでの購入で問題が起きたときに問い合わせるかどうかについての質問に、63.4%が「問い合わせない」と回答した(「まったく問い合わせない」39.4%、「普段は問い合わせないが過去に1、2回問い合わせたことがある」24.0%)ことを齊藤氏は取り上げた。
また、問い合わせをしない理由としては、「そのまま利用をやめる(離脱する)から」が42.3%と最も多く、次いで「問い合わせるのが面倒だから」が39.9%、「回答が得られるのに時間がかかるから」が26.6%だった。
齊藤氏は、離脱につながるなどネットショッピング企業にとって大きな機会損失であり、また問い合わせがないことによって問題が解決されないため、ほかの顧客にも影響が及ぶ、と語った。
トラブルがどのぐらい続くと利用を中止するかについては、「時間に関係なく利用しない」「3時間以内」の合計が72.4%にのぼった。
それに対し、トラブル解決までの所要時間が「3時間以内」なのはわずか11.9%だった。
トラブル体験によって消費者がどう感じるかについては、ブランド信頼度が「非常に下がる」「やや下がる」を合わせて、75.5%が「下がる」と回答。トラブルによってその後の購買意欲に大きな影響を与えることがわかる。
また、トラブルによってECサイトを乗り換えた経験が「ある」という人は43.2%にのぼった。
齊藤氏はさらに、悪い体験はSNSなどで拡散されやすいこと、そして多くの人が口コミを購買の判断に利用することも取り上げた。
これらをまとめて、ECサイトのUX(利用体験)の毀損と、対応の遅さが問題だと齊藤氏は指摘。New Relicによるフルスタックオブザーバビリティとオブザーバビリティの民主化が解決策になると語った。
信頼性とUX、対応速度の問題の原因として、対応の部門ごとのサイロ化を齊藤氏は挙げる。ECサイトで消費者が受けたトラブルをカスタマーサポートが受けたときに、ビジネス部門やフロントエンド開発、バックエンド開発、インフラ運用など各ロールにたらい回しとなり、対応が遅れる。また解決のためのデータやツールもロールごとにサイロ化され、自分の担当範囲内の情報だけを見るため、事前の検知や事後の対応が遅れるという。
これに対しNew Relicは、ユーザー体験からインフラまですべてをリアルタイムに追跡するフルスタックオブザーバビリティのプラットフォームであり、さまざまなロールの人が同じデータを見て対処できる“コミュニケーションハブ”になると齊藤氏は説明した
モバイルアプリのユーザー操作をビデオのようにリプレイして症状を把握する「Mobile Session Replay」
New Relicの機能の1つに「Session Replay」がある。Webアプリケーション上のユーザーの操作とアプリケーションの動作を記録し、ビデオを再生するかのようにリプレイするものだ。これによってトラブルが起きたときに、ヒアリングベースでの不正確さや症状の再現性の問題から脱却して何が起こったかを把握できる。
同様の機能をモバイルアプリ操作にまで広げたのが、今回発表された「Mobile Session Replay」だ。企業がユーザーに提供するモバイルアプリに、New Relicの用意したソフトウェアを組み込んでおくことで利用できる。
Mobile Session Replayでできることを、齊藤氏はデモ動画で紹介した。New RelicのWebコンソール上に、スマートフォンの画面を模したものが表示され、そのときのユーザー操作や、そこで起こったイベントの履歴、ログがリプレイされてわかるようになっている。ここでエラーが発生したときには、その内容を掘り下げて、すぐに把握できる。
「ユーザーがどういう体験をしているかわらない、問題が起きたと言われるが原因がどこにあるかわからない、といった問題について、Mobile Session Replayによってすぐ把握できるようになる」と齊藤氏は説明した。
エージェンティックAIのシステムを見える化する「Agentic AI Monitoring」
11月26日に発表されたエージェンティックAIの監視機能「New Relic Agentic AI Monitoring」についても、齊藤氏は説明した。
背景としては、AI時代になって、消費者がAIツールに商品について相談するようになったことと、ECサイトにAIアシスタントが組み込まれてきていることの2つの点を齊藤氏は挙げた。
前者については、自社の製品がAIツールに取り上げられなかったり、AIツールの情報が正しくなかったりする課題がある。これに対して、LLMO(LLM最適化)に注目が集まっている。
LLMOの代表的な施策の中でも、齊藤氏は、「サイトの品質向上」「口コミによる評価」「第三者の言及」を取り上げ、「AI時代もサイト信頼性と顧客評価が重要だというのは、これまでと同じ」と語った。
後者のAIアシスタントの問題としては、AIのブラックボックス化、新しい技術スタックの把握、AIの確率的な動作による不確実性を齊藤氏は挙げる。これに対して、AIを含めたシステムのオブザーバビリティを高め、正常に動作しているか追跡していくことが必要だと述べた。
これを実現するのが「Agentic AI Monitoring」だ。AIのシステムを見える化して、AIアプリケーションのパフォーマンス、品質、コストの最適化を可能にするという。
齊藤氏はNew Relicの調査レポートから、企業のAIモニタリングの導入率が2024年の42%から2025年の54%へと成長する見込みであること、今後必要と考えている企業が96%にのぼることを紹介した。















