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中小企業の46%がいまだ「アナログ業務」を継続、kubellが調査結果を発表 人手不足を解消する「BPaaS」戦略を強化
2025年12月19日 08:00
株式会社kubell(旧称:Chatwork株式会社)は18日、中小企業の経営者・管理職にバックオフィス業務に関するアンケートを実施したと発表した。それによると、現在でも「日常業務の取引や情報管理にデジタルではなく、口頭やメール、紙を利用している」と答えた企業が46%と、依然としてアナログで業務を行い、経営効率化が進まない中小企業が多いことが明らかになった。
デジタル化をはじめとした生産性向上が進まない理由は、「人手不足・採用難」が41%、「デジタルが使いこなせる人材・スキル不足」が30.9%と、人的リソースの不足が生産性向上を妨げる要因となっているとの回答が高い割合を占めた。
なお、kubellでは、人材がいない中小企業をサポートするためにBPaaS事業を業務とする「株式会社kubellパートナー」を傘下に持っているが、そのkubellパートナー 代表取締役社長の岡田亮一氏は、「BPaaSが中小企業の生産性向上の解決策になる」とアピールする。
中小企業向けBPaaSを展開する場合、効率良く業務支援を行うことが鍵となるが、kubellのもともとの事業であるビジネスチャット「Chatwork」を活用し、顧客支援を行うことで、「電話や対面に比べ、非同期コミュニケーションによる支援が可能になることが強みだ」という。
これまではChatworkユーザーにBPaaS導入を進めてきたが、岡田社長は、「今後は他社のビジネスチャットユーザーの獲得も狙いたい。金融機関、士業を展開するパートナー経由で顧客獲得ができれば」と述べ、新規顧客獲得を狙っていく方針を示した。
根強く残る「アナログ業務」とデジタル化の現状
kubellでは、2025年11月17日から19日までの期間でアンケートを実施。従業員数が10人から299人までの企業の経営者、管理者、バックオフィス担当者、合計1093人から回答を得た。
そのアンケート結果によると、中小企業の生産性向上の課題として最も回答が多かったのは「人手不足・採用難」で41.0%であり、これは従業員規模を問わず最多の回答だった。
生産性向上の打ち手として最も多かったのは「仕事の簡素化・不要な手順の廃止」で37.7%、次いで「働き方の見直し・改善」で36.3%となった。一方、「デジタルツールやクラウドサービスの導入」は20.5%、「AIの活用」は15.3%にとどまっており、デジタル活用による取り組みを実践している中小企業は決して多くない。
また、「日常業務の取引や情報管理の多くにデジタルを使わず、口頭やメール(電話・FAXを含む)、紙を使用している」という回答は46.0%に上った。何らかのデジタルツールを活用し、業務改善に取り組んでいるという回答も50%を超えているが、半数弱が依然としてアナログ業務を利用していることになる。
システム担当者の有無については、「専門部署がある」が12.7%、「専任担当者がいる」が12.9%となっているものの、「システム担当を兼務している社員がいる」が最も多い37.8%、「業務委託で他社が担当している」が2.7%、「業務委託で社外の人が担当している」が6.3%となっている。
ビジネスプロセスをアウトソーシングするBPOについては、「導入している」が2.7%、「導入を検討している」が5.9%とまだまだ少なく、「導入していないし、予定もない」が91.4%を占めている。
この結果について、アンケートを担当したkubellのピープルディビジョン ブランドエクスペリエンスユニット長、時田あゆみ氏は、「そもそも中小企業向けBPOサービス展開がまだまだ少ないこともあり、検討にすら至っていない、存在すら知らないといった中小企業の方がまだ多いことが現状と推測される」と分析している。
なぜ中小企業にBPaaSが必要なのか?
中小企業でも利用できるBPOとして注目されているBPaaSは、ビジネス・プロセス・アズ・ア・サービスの略で、SaaSによるソフトウェア提供にとどまらず、業務プロセスそのものを提供するサービスだ。簡単に言えば、SaaSとBPOを合わせたもので、SaaSにBPOの業務オペレーション、さらに企業のDXを支援する人材サービスをプラスしたものとなる。
kubellでは、アンケートで明らかになった、アナログな業務を行っている企業や、人材不足でデジタル化・生産性向上が進まない企業をサポートするために、BPaaSを提供している。
kubellパートナーの岡田社長は、「ITシステムは、大企業中心にスクラッチ開発されたシステムを動かしていたが、ここ十数年、SaaSが浸透し、中小企業の利用も増えてきた。BPOについても、大企業中心にオーダーメイド型BPOが先行し、その企業のやり方をそのままコピーし、国内の地方や海外に業務を移管し、コスト削減を進めていた。その後に、クラウドソーシングのような概念で、細かく分けて業務を遂行するパターンも登場している。ただし、クラウドソーシングの手法を取り入れたBPOについては、ディレクションというのか、全体を管理していく作業を依頼者側が行わなければならないため、コストは下がっても、中小企業が活用するのは難しいのが現状ではないか」という点を指摘。
「そこで我々は中小企業でも利用しやすいBPaaSを進めていく。この分野はホワイトスペースであり、社内では生産性向上の取り組みを実践するのは難しい中小企業の方にとって明るい材料になればと考えている」と述べた。
もちろん中小企業でも、SaaSを導入し自社でDXによる業務改善を進められるところもあるが、SaaSの導入や活用が自社では難しい企業をBPaaSの対象と想定。依頼する業務を業務プロセスごとに分けることで、低コストで導入することを想定している。
こうした実情を鑑み、kubellパートナーが提供するBPaaSは、Chatworkを提供する企業の傘下であることを生かし、「ビジネスチャットを最大限に生かしたBPaaS」であることが特徴のひとつとなっている。
中小企業を支援する業務を展開する場合、手離れの悪さと価格が見合わないことが問題となることが多いが、チャットを活用することで現地に行かず支援が可能になるのだ。「チャットは、電話やメールに比べ、非同期で対応できることが大きなメリットとなる」(kubellパートナーの岡田社長)。
また、主力サービスである「タクシタ」は、経理、事務、総務、採用といった業務において、月に10時間からの小ロットで依頼可能。もう1つのサービス「MINAGINE」は、勤怠管理システム・給与計算など労務に対する業務を一括で対応する。
Chatworkを通じ依頼を行うと、非専門領域はタクシタで、専門領域はMINAGINEで担当し、中小企業のバックオフィス業務をワンストップで請け負って課題解決を実現する。
「中小企業を支援する場合、専門領域だけを請け負うのでは不十分で、非専門領域についてもサポートしていくことで、ワンストップでの課題解決につながる」(kubellパートナーの岡田社長)。
今後はAI、AIエージェントの進化によって、人間を介さずに業務を進める工程を増やしていき、さらに中小企業の生産性向上につなげていくための開発を進めている。
なお同社ではこれまで、Chatworkのユーザー向けに営業を行ってきたが、今後はChatwork以外のチャットツールを使っているユーザーに対しても営業を進めていく計画だ。kubellパートナーの岡田社長は、「新たな顧客獲得の際には、金融機関、士業のパートナーとの連携を行うことを予定している。これまでのケースでは、社員の退職など社内体制に変更があったものの、新規人材獲得が難しい場合に導入につながるケースが多い。人材確保に困っている中小企業に導入を呼びかけたい」と話している。











