事例紹介

マイナンバーを軸に母子健康・学校情報を集約し、子育て支援~前橋市

ICT街づくり推進事業(3)

学校の情報を集約する「前橋マイページ」

 もう1つの主要な取り組みが「前橋マイページ」。各種行政サービスへの個人認証の入り口となり、マイナンバーカードでログインすると、市民一人一人に最適化されたページが提供される。基本機能として、市からのお知らせ、アンケート回答、ゴミ収集日情報などを提供するほか、特に学校の情報を提供する仕組みとして検証した。

 小学生の子どもがいる世帯に「通学路情報」「交通事故注意地点」「登下校メール」「給食献立表」「アレルギーアラート」「時間割表」「学級通信」「行事スケジュール」などの情報を提供する。2013年12月から前橋市立城東小学校3・6年生の保護者をはじめ、計115名を対象に実証実験を行った。

 「アレルギーアラート」は、家庭で子どものアレルゲン情報を登録しておくと、アレルギー反応が予想される給食献立の前日に、「明日の給食は○○です」と注意喚起が届く。特に学校側の評価が高く、「生徒のアレルギー管理には先生方はかなり気を遣うようで、湿疹が出る程度だと家庭でも認識がなかったりするようなのです。その対応を自動化できるということで、校長先生や保健の先生から『ぜひやってほしい』との声をいただきました」という。

 「登下校メール」は、生徒が登下校の際に下駄箱に置かれたリーダーにICカードを読み取らせると、その時刻が保護者のケータイに届くというもの。保護者にとっては安心の仕組みだが、実証実験ではタッチしたのにメールが飛ばないケースがあったほか、「前橋市では集団下校をしていて、下駄箱でタッチしたあと校庭に集合して下校するため、実際の下校時間とタイムラグが発生してしまいました」。保護者からは「校門を出た時刻を通知して欲しい」との要望があり、対応を検討している。

アレルギーアラートと登下校メールの概要
城東小モニター事前説明会の様子

 中でも保護者の評判が最も高かったのが「学級通信」だ。提出物や宿題、行事スケジュールなど、先生が黒板に書いた内容をカメラで撮影し、「前橋マイページ」に掲出した。保護者からは「プリント紛失がなく安心」といった声が挙がったほか、緊急時の連絡にさらなる効果を発揮した。「2014年2月の大雪やインフルエンザ流行の際に、連絡網のように電話連絡のリレーが途切れることもなく、一斉に休講の案内ができたため、保護者には即座に状況が把握できたと好評でした」。

 アンケートでも保護者の約9割が「(改善含め)継続すべき」と回答し、14%が「幼稚園・中学校にも普及すべき」とするなどおおむね好評。学校側でも評価が高かったため、「2014年には国の補助金ではなく、市の予算での継続運用を決定。前橋市立宮城小学校でも再度実験を行い、今後はすでに導入済みの校務支援システムに統合する予定です」という。

マイナンバーを法定用途以外で活用するには?

 前橋市の取り組みは、2017年1月から利用開始されるマイナンバーをさまざまなサービスの個人認証に利用している点が特徴だ。今後、同じようにマイナンバーを活用する自治体は増えると思われる。元々マイナンバーは社会保障、税、災害対策の分野で法律で定められた行政手続きでの利用が想定されたものだが、これ以外の手続きやサービスに利用する方法も用意されている。

法律で定められたマイナンバーカードの用途(出典:内閣官房)

 その方法は大きく2種類。1つは、民間で利用したい場合に組織・団体として総務大臣の認可を受ける方法。認可を受けた業界団体などができれば、そこで認証に利用することが可能となる。もう1つは、自治体で条例を定め、カードそのものに新機能を実装するために用意された空き領域を利用する方法だ。空き領域にはソフトウェア機能を後付けできるようになっている。

 「前橋市でも条例を定め、マイナンバーカードを利用する方針で、今回の実証実験ではどのような条例が必要となるかを洗い出す意味もあります」と糸氏は語る。

前橋市で実施するサービス分類。医療健康分野ではJPKIを含め、医師会などとマイナンバーカードの利用について協議している。カードの多目的利用については現在、条例を検討中

(川島 弘之)