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NTT Com、2020年に向けた新中期事業戦略「ビジョン2020」

2020年度に売上高1兆5000億円、海外売上高6000億円目指す

 NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は13日、2020年に向けた新中期事業戦略「ビジョン2020」を発表し、2020年度に売上高1兆5000億円、そのうち海外売上高で6000億円を目指すことを明らかにした。

 また、「ビジョン2020」などに基づいて刷新した「Global Cloud Vision2016」を策定。ソフトウェア・ディファインド(Software Defined:SD)技術のさらなる活用や、マネージドサービスにおける管理・自動化機能の高度化により、グローバルシームレスサービスを強化、拡充する考えを示した。

 NTT Comの庄司哲也社長は、「ビジョン 2020は、当社が先進的なグローバルICTサービスプロバイダーを目指すものであり、成長要因は、グローバル事業の拡充になる。収益の4割をグローバルで獲得することになる。グローバル市場において、我々はチャレンジャーであるが、アジア地域では信頼性が高まっていると感じている。ローカル企業や、欧米の企業がアジアに進出する際にサポートするというビジネスも見込める。国内市場は、売上高成長よりも、収益性を高めることを重点としたい」と話す。

ビジョン2020
NTT Comの庄司哲也社長

 さらに「ビジョン2020」にあわせて、コーポレートスローガンを「Transform.Transcend.」とし、「時代を先駆けるカッティングエッジな技術サービスを提供することで、顧客のビジネスや社会、市場に対して、飛躍的進化とダイナミックな変革をもたらすとともに、期待や想像を超える新たな価値や、すべての垣根を越えてつながる世界を創造していくことになる」と述べた。

 毎年2000億円規模の投資を継続。このなかにはM&Aは含まれていないが、データセンタービジネスの拠点展開などにおいて、M&Aを推進していくことになるという。

 また、アクションプランとなるGlobal Cloud Vision2016では、「グローバルシームレスサービスを中心としたソリューションによって、ICT環境を最適化。デジタルトランスフォーメーションによる経営改革に貢献。日本の企業の収益拡大に向けたエンジン役を担うことになる」とした。

 SD技術を活用することで、柔軟性、オンデマンド性を強化すること、複雑なICT環境に対応した管理、自動化機能などを強化することを掲げ、「システムの基盤となるクラウド、コロケーション、ネットワークを、グローバルレベルで保有している企業は、世界でも限られている」と指摘。それらの分野をトータルにカバーできるNTT Comの強みを生かしたいとした。

 さらに庄司社長は、「クラウド時代に入り、NTTグループ内のアセットをいかに選択と集中するかは課題となっている。持株会社のもとに、グループ横断で3つのワーキンググループを立ち上げており、どんなフォーメーションを取るべきかを検討しているところである。我々が持つ技術やサービスを確固たるものとし、これをグループ企業にも提供していきたい」とした。

Global Cloud Visionとは
Global Cloud Vision 2016
コーポレートビジョンとサービスビジョンの関係

SD技術を活用した13のグローバルシームレスサービスを提供

 一方、NTT Comの現状についても説明した。

 庄司社長は、「現在、SD技術を活用した、13のグローバルシームレスサービスを提供している。また、グローバルシームレスサービスを支えるインフラとして、世界全体で7.6TBの容量を実現した通信ケーブルを運用しており、日米間、日アジア間の容量拡充に取り組んでいる。さらに、196カ国で利用できる(VPNサービスの)Arcstar Universal Oneは、4つのシンプルなプランから選択が可能であり、NTT Comと他の事業者のクラウド間をセキュアに接続できるマルチコネクトサービスを提供。Arcstar Universal Oneで提供されるアドバンストオプション仮想アプライアンスタイプでは、ファイアウォールやアプリケーション高速化機能をネットワークで提供して、機器管理コストを削減。さらに、安価なバックアップ回線や迅速な海外拠点展開に活用できるワイヤレスアクセスサービスも提供している。これは、3月までに欧米27カ国で展開。来月以降には、APACでも展開する予定である」とした。

13のグローバルシームレスサービス
グローバルに展開する通信ケーブル
Arcstar Universal One
アドバンストオプション仮想アプライアンスタイプ

 また、グローバルデータセンターのサーバールーム面積は、現在、36万7000平方メートルとなっており、「海外のサーバールーム面積は、日本の2倍以上になっている。自社建設やM&Aにより、昨年以降、7万平方メートルの拡張を行っている」という。

 これらのグローバルデータセンターを活用して提供しているのがクラウドサービスの「Enterprise Cloud」で、SDNを活用した専有型および共有型クラウドと、豊富なAPIを提供。基幹システムからクラウドネイティブなアプリケーションまで対応できるという。Enterprise Cloudは、12カ国15拠点で展開していくことになるという。

グローバルデータセンターのサーバールーム面積
Enterprise Cloud

 また、世界8つの都市エリアにおいて、同一エリア内の複数データセンターをひとつのデータセンターのように利用できるデータセンター間ネットワークの強みや、都市エリアや国をまたいで、世界30以上のデータセンターを閉域ネットワークで接続できるサービスなどの強みを強調。Cloud Management Platformにより、他の事業者のクラウドを含めたシステム稼働状況の一元管理が可能になることなどを示した。

Cloud Management Platform
データセンター間ネットワーク

 マネージドサービスでは、グローバルサービスデスクと、オペレーション自動化プラットフォームにより、顧客のICT環境の一元管理が可能な「Global Management One」、NTT Comが独自に開発したセキュリティ運用基盤とリスクアナリストによる運用監視を行う「WideAngle」、各種クラウドサービスや企業内システムへのセキュアなシングルサインオンやアクセス管理を実現する「ID Federation」によるサービスの特徴についても紹介した。

Global Management One
WideAngle

 「当社のサービスは、稲畑産業や三井物産、英国に本社を持つCath Kidstonなどの導入においても高い評価を得ているほか、調査機関のレポートにおいてもリーダーとして位置づけられている。我々が展開しているグローバルシームレスサービスが評価されているものと自負している」とした。

稲畑産業の事例
三井物産の事例

SD技術を用いた3つの新サービスを順次提供へ

 さらに、新たなSDxサービスソリューションとして、SD-WAN、SD-LAN、SD-Exchangeの3つサービスを開発。順次提供を開始することも明らかにした。

新たなSDxサービスソリューション

 2016年度下期から提供するSD-WANでは、SDNにより、Arcstar Universal Oneとインターネットへ通信を振り分け、ネットワークの混雑を回避。カスタマーポータルから、複数拠点のネットワーク機器に対する一元的な設定変更を、迅速に行えるようになるという。

 「VPN経由とインターネット経由のどちらのSDN通信においてもNFVを利用でき、DDoS攻撃により、通信が不安定になるといった影響を受けずに、インターネット経由の通信を可能にできるほか、日本のみならずグローバルでインターネットアクセスをNTT Comがワンストップで調達し、提供することができる。既存ネットワークとSD-WAN双方に対する一体的なマネージドサービスの提供も可能である。これらはNTT Comならではのものであり、グローバルな通信事業者としての付加価値を提供していくことになる」と述べた。

 SD-LANでは、カスタマーポータルからネットワークセグメント構成や、通信経路の設定を一元的に変更可能であるほか、LAN全体のネットワークセグメント構成や運用状況を可視化する。「新システムの導入や組織変更などに伴い、LANの設定変更がひんぱんに発生し、スパゲティ状態になっているのが現状。情報システム部門が抱える、設定作業の増加という問題を解決できる」とした。

 またSD-Exchangeは、システム間通信において、各システムが必要とする帯域や品質に応じ、SDNと既存ネットワークを組み合わせた最適なプランを柔軟に、オンデマンドに選択が可能になるという。

 「SD-Exchangeは、現時点では、コンセプトを紹介するに留まるが、10月に開催する予定のNTT Communications Forumにおいて、具体的に紹介したい。最適なシステム間通信を実現できるものになる」と説明した。

SD-Exchangeのコンセプト

 さらにCloud Management Platformの強化により、クラウドサービスだけでなく、新たなSDxサービスを含めた管理を可能にしたという。「欧州を中心にマネージドサービスを提供してきたAtlas社を、2016年4月からNTT Comの直接子会社として再編し、設計、設定メニューをグローバルに強化、拡充する。これも10月に詳細を発表したい」と語った。

Cloud Management Platformの強化

 そのほか、IoTサービスについては、IoTプラットフォームサービスを構築中であることに言及。「デバイスからデータ収集、分析プラットフォームまでをグローバルでワンストップで提供することを目指している。インーネットを経由しないセキュアな通信環境を、世界188カ国で利用でき、重要データの保管場所を世界140以上のデータセンターから選択が可能になっている。また、データ収集・分析プラットフォームと顧客の業務システムの連携に、データセンター間ネットワークを利用できる。現在、工場内の各種センターデータの収集、可視化、分析を行う製造業向け、車両の稼働状況などの分析を行う自動車向け、各種機器や製品、データ収集、可視化、分析を行う各種機器・製品向けをラインアップする予定であり、5月から順次提供する」という。

大河原 克行