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「収集」「蓄積」「分析」で顧客のデータ利活用を支援――、NTT Com庄司社長が2018年度のサービス戦略を説明

 NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は10日、2018年度のサービス戦略について発表した。

 同社では、2020年度を最終年度とする中期事業戦略「ビジョン2020」に取り組んでおり、今回発表したサービス戦略は、同中期事業戦略の達成に向けて重要な意味を持つものに位置付けている。

 NTT Comの庄司哲也社長は、「データ利活用の時代に向け、当社はデータ利活用を支えるケーパビリティの強化・拡充を進め、データ利活用におけるプラットフォーマーを目指す。デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に向けた次世代インフラSDxの活用と、マネジメントを組み合わせたSDx+M(Software Defined Everything + Management)も、すでに100件の案件を積み重ねることができた」と話す。

 また、「今年は、ビジョン2020による進化をさらに具現化する1年になる。企業のDXの実現に貢献するために、デジタルデータ活用を支える安心、安全なインフラ基盤と、それを活用したサービスおよびソリューションを強化して、顧客のデータトランスフォーメーションを支援。顧客とわれわれのイノベーションを加速していく」と述べた。

NTT Comの庄司哲也社長

 同社では、さまざまなIoTデバイスから発信されるデータの「収集」、これらのデータを安心、安全に管理する「蓄積」、蓄積されたデータを組み合わせて新たな知見を生み出す「分析」という3つの観点から、データ利活用に向けた取り組みを進める。

データ利活用に向けた取り組み

 「収集」では、「増え続けるIoTデバイスの種類や所在に応じて、適切なセキュリティ対策と、大容量データの効率的な伝送が大切である」と前置き。2017年7月から香港でeSIM(embedded SIM)の実証実験を開始するとともに、大日本印刷と共同でセキュリティSIMを開発していることを紹介した。

 また、IoTセキュリティ基盤を活用したネットワーク環境における不正通信対策、製造現場のOT(Operational Technology)環境におけるセキュアな導入、運用サービスの提供などに取り組んでいることを示したほか、大容量のネットワーク環境の実現に向け、海底ケーブル「JUPITER」により、400Gbpsの高速ネットワークでアジアと北米を結ぶことができることも示した。

OT・IT環境でのIoTセキュリティ対策
JUPITERの敷設開始

 「蓄積」では、「データの重要度に応じて、さまざまなロケーションでのデータ蓄積と、データの機密性、匿名性の確保が大切になる」とし、「欧州でのGDPR(EU一般データ保護規則)の施行をはじめ、データをどこに蓄積するかがこれからは重要になる。当社では、2018度以降、新たに6つのデータセンターを開設する予定であり、これにより、提供するデータセンターは、20以上の国と地域をカバーし、40万平方メートル以上になる。また、昨日発表したDimension DataからのIaaS事業の移管により、クラウドサービスは、15の国と地域、35のデータセンターでクラウドを展開できる。さらに、Secure-24によって当社のリソースを集約するとともに、サービス提供機能の強化が図れる」と説明した。

【お詫びと訂正】

  • 当初、「Dimension Dataを買収」と記載しておりましたが、正しくは上記のようになります。お詫びして訂正いたします。

 新たなデータセンターは、2018年4月に東京第10データセンターを開設するのに続き、5月にはインド・バンガロールに、8月にはインド・ムンバイに設置。2018年度第4四半期にはオランダ・アムステルダムと、ドイツ・フランクフルトに設置。2019年度第1四半期には米国・バージニアに設置する。

データセンターのカバレッジ拡大
クラウドサービスのフットプリントを拡大

 また、データをセキュアに蓄積するための技術開発に取り組んでいることにも言及。秘密分散技術、秘密計算技術、匿名化技術といった領域で実績を持ち、これらの技術の提供を開始していることを示した。

データをセキュアに開発するための技術開発

 「分析」では、「多様な分析ニーズへの対応と、企業や業界を超えたデータ利活用の促進が求められており、これらを安全な環境で活用できる環境を提供することになる」と話す。

 ここでは、自然言語処理AIの「COTOHA(コトハ)」シリーズについて説明。「バーチャルアシスタントやチャット形式FAQ検索に加えて、3月からは新たにCOTOHA Translatorを提供している。25枚であれば2分で英訳し、その品質は、TOEIC 900点レベルを達成している。今後も高精度な翻訳性能を進化させていくことになる。また、COTOHAによる自然言語処理機能は、APIを通じてパートナーにも提供してもらうよう考えており、2018年度上期にも提供を開始したい。また、音声認識機能の提供を開始したい」とした。

 さらに、パートナーが持つ分析機能との連携ソリューションの提供も積極化。NTTデータおよびDataRobotとの連携による分析業務自動化ソリューション、Google Cloud Platformと組み合わせたログ解析ソリューションを提供することを発表した。

 また、Cloud Management Platform(CMP)によるデータの可視化も進めているほか、データ流通プラットフォームの開発にも取り組んでいくことを示した。

COTOHAシリーズの展開
パートナーが持つ分析機能との連携ソリューション例

 庄司社長は、「データを取り巻く環境は、技術面の進化だけでなく、法制度を含め社会環境から整備されつつある。データに関する調査によると、米国では約9割の企業がデータ活用を検討し、日本企業でも約8割の企業がデータを活用したいと回答。さらに、パーソナルデータを利用した利便性の高いサービス、アプリケーションに対するデータ提供許容度は約6割に達している。だが、その一方で、パーソナルデータの提供に対する不安感は、米国では約6割、日本では約8割に達しているという実態もある。不安や懸念を取り除いて、安心、安全な環境を作るのがわれわれの役割である。これにより、データ活用によるDXに貢献したい」と語った。

多くの企業がデータ活用を検討
データ活用への期待
一方で、パーソナルデータの提供に関しては不安を感じている人が多い

 また、自社ラグビーチームであるシャイニングアークスのクラブハウスを新設したことも紹介。同社が提供する最新技術を活用することで、スポーツ分野におけるデータ利活用などについても、検証を行っていくという。