ランキングで振り返る、エンタープライズ/クラウド業界動向(9~12月)
Enterprise Watch/クラウド Watchで今年一年間掲載した記事の中から、アクセス数をもとに月別の10大ニュースを選出して紹介する。個人ユーザーでも関心が持てる記事へのアクセスが高くなりがちではあるが、ランキングを通じて業界全体の動きを振り返ってみる。
今回は、9月から12月までのランキングを紹介する。
■【9月】「HP ProLiant」新製品に高い関心
1位には、日本HPが「ProLiant史上最小」をうたう、マイクロサーバーの記事がランクインした。特集記事のためニュースのランキングからは外れているが、「マニア心をくすぐる『HP MicroServer』を試す」と題して掲載した特集は、3回とも多くのアクセスを集め、注目の高さを伺わせた。小型で静音、低価格ながらも、十分な性能と拡張性を持つことが、人気の理由だろうか。
7位にも、デルのエントリーNAS製品「PowerVault NX200」などの発売を報じる記事が入った。こうしたエントリーのサーバー、NASなどは、実際に導入しやすいからか、上位に入るケースが多く、たくさんのアクセスを集めていた。
4位には、「ITパスポート試験」のCBT(Computer Based Testing)を報じる記事がランクイン。国家試験としては初の試みとなる。受験がより身近になるのは、業界にとってプラスに違いない。今後、ほかの試験でもCBTを採用する流れとなるか。
■【10月】どれだけ大きなニュースも「癒し」には勝てない?
10月の1位は、日本オラクルの4代目社員犬「キャンディ」の、入社式の様子を報じた記事。子どもと動物には勝てない、というのは、エンタープライズ業界でも同じなのかもしれない(笑)。
一方、2位に入ったのは、Windows OSのダウングレード条件を整理した記事で、こちらはいわば正統派の話題。企業にとっては、古いOSが入手できるかどうかが、死活問題になることもある。10月22日には、ダウングレード権を利用したWindows XPプリインストールPCの工場出荷が終了したということもあって、高い支持を集めたのだろう。
7位には、NTTデータのOSSがランクイン。このHinemosのほか、HadoopやEucalyptusなど、クラウドを基軸としてOSSも存在感をさらに増した印象だ。
■【11月】1位と2位にAndroidの記事が、皮肉な形で
1位と2位にAndroid関連記事がランクイン。ただし、1位は新製品発表の明るい記事で、2位はAndoridの脆弱性に関する暗いものと皮肉な結果に。
3位に入ったのは、クラウドERP/CRMアプリケーションを手掛けるネットスイートの新版提供を報じる記事。クラウドアプリケーションは数多くあるが、ネットスイートは古くからこの分野で活動しているベンダーの1つということもあり、注目している読者も多かったのではないか。
4位には、EMCによるIsilon買収を報じた記事がランクインした。2010年は本当にストレージベンダーの買収が相次いだ年で、この後、12月にも、DellによるCompellentの買収があり、業界の再編がさらに加速している印象だ。
10位には、パナソニックとNECの共同輸送の記事。パナソニックの家電をNECのIT製品を運ぶトラックに混載し、輸送を共通化しようという試みだ。自動車/航空機輸送を鉄道/船舶輸送で代替する「モーダルシフト」という方法もあるが、今後はこうした共同輸送の取り組みも増えるとみているが、どうだろうか。
■【12月】クラウド環境の運用管理市場にも賑わい
9月に圧倒的な注目度だったHP ProLiant MicroServerの新モデルが発売され、再び1位に返り咲いた。新モデルでは160GBだったHDDを250GBに増強するとともに、電源を200Wから150Wに小型化して最適化を図っている。ハードウェア関連ではこのほか、ロジテックのWindows Storage Server 2008 R2を搭載したキューブ型NASが7位に、富士通と米OracleのUNIXサーバー「SPARC Enterprise Mシリーズ」が11位に、日本HPの高密度サーバー「ProLiant DL2000」が18位に入っている。
3位には、元「Amazon EC2」開発統括者のクリス・ピンクハム氏らが開発したクラウドOS「Nimbula Director」の記事がランクイン。パブリッククラウドとプライベートクラウドの共存環境において、両方のリソースを効率的に管理できる運用管理システムだ。同様にクラウド管理に関する話題としては、富士通にOEMされたイージェネラ製PAN Managerをパナソニック電工が総代理店として販売すると報じた記事が19位に。ランク外だが12月16日には、デルも物理・仮想・マルチベンダー環境を一元管理する「AIM」を発表するなど、各社各様の取り組みが始まっている。
コンシューマにおけるTwitterの流行を受け、企業でもマーケティング活用への模索が始まる中、8位の米salesforce.comの無償コラボツール「Chatter Free」も、2010年のトレンドを反映した記事といえる。国産の企業向けTwitterクライアントを報じる記事も10位に入り、企業でのTwitter活用への関心の高さがうかがえる。