特別企画

AWSのアンディ・ジャシーCEOが語った、トランスフォーメーションを成功させる6つのポリシー

20を超える新サービスをAWS re:Invent 2019キーノートで一挙公開

I'm gonna be (500 miles):マシンラーニングの歩みを止めない

 5曲目は、ザ・プロクレイマーズの「I'm gonna be (500 miles)」で、ジャシーCEOはここでAWSのマシンラーニングのコア製品である「Amazon SageMaker」に関連する発表を続けて行っている。

 ここでカギになるアップデートは「Amazon SageMaker Studio」で、以降の機能はStudioのもとで一元的に管理可能となっている。

・マシンラーニング開発に必要なすべてのツールを統合した開発環境「Amazon SageMaker Studio」。WebベースのIDEで、1カ所ですべての管理が可能(オハイオリージョンでGA)

SageMakerをひとつ上のステージへと押し上げる統合開発環境「Amazon SageMaker Studio」が登場。3つの主要なMLフレームワークであるTensorFlow、PyTorch、mxnetをサポートし、関連ツールを使いやすく統合、マシンラーニングにおける開発効率を大幅に向上する

・Jupyterベースのワンクリックノートブック「Amazon SageMaker Notebook」。SageMakerのノートブックインスタンスを起動する必要なく、Studioの機能としてノートブックを呼び出し、インタラクティブな開発を実現。チーム内でのノートブック共有もワンクリックで可能

・マシンラーニングにおけるモデルバージョンの整理/追跡/比較/評価を行う「Amazon SageMaker Experiments」。マシンラーニングのモデルトレーニング中の入力パラメータや構成、結果などを自動でキャプチャし、それらを「実験(experiments)」として保存、マシンラーニングの反復に活用。Studioのビジュアルインターフェイス内で作業

・マシンラーニングのトレーニングジョブで発生する問題を自動的に識別し、トレーニングプロセスを透明化する「Amazon SageMaker Debugger」

・本番環境にデプロイしているモデルを長期間に渡ってモニタリングし、問題が発生したら通知する「Amazon SageMaker Model Monitor」。モデルを作成したときとは異なる外的環境の変化にも対応し、モデルのクオリティを常にチェックする

・モデルに対する完全な制御と可視性でもって自動トレーニングを実現する「Amazon SageMaker Autopilot」。生データの検査、データの自動変換、最適なアルゴリズムの選択、最大50までの複数モデルのトレーニング、モデルどうしの比較などを数クリックで実現。インスタンスとクラスタを自動でサイズ選択

 前述したように、これらのSageMakerのアップデートは統合開発環境であるSageMaker Studioのもとで利用できる。SageMakerがリリースされたのは2年前のre:Invent 2017だったが、それから約2年で、マシンラーニング市場で大きなシェアを占めるに至っている。

 今回のSageMaker Studioを中心とする細かなアップデートは、SageMakerが次のフェーズに入ったことを示しており、特にチームでデータサイエンスを行うような組織にとって、マシンラーニングの生産性を向上するという意味で有用な機能が多い。

 なお、ジャシーCEOはSageMakerのアップデートに続き、AWSのマシンラーニングの知識とスキルを結集したサービスとして以下の4つを新たに発表している。

・不正の可能の高いオンラインアクティビティ(オンライン支払い詐欺、不正アカウント作成など)をより速く正確に検出するマネージドサービス「Amazon Fraud Detector」。Amazonが20年に渡って蓄積した、マシンラーニングによる不正検出のノウハウを投じたマネージドサービス。マシンラーニングの知識や経験がなくても導入でき、不正検出モデルの作成も可能(プレビュー)

Amazonの20年に渡るマシンラーニングとオンライン不正に対する知見・経験を凝縮して実装したマネージドサービス「Amazon Fraud Detector」。マシンラーニングで不正行為をリアルタイムに検出できるサービスとして、金融やECサイトでの利用が見込まれている

・コードレビューの自動化とアプリケーションパフォーマンスの推奨事項を提供するマシンラーニングサービス「Amazon CodeGuru」。コードの品質やアプリケーションのパフォーマンスに対してマシンラーニングによるインテリジェントなアドバイスを提供。Amazonは社内の8万5000のアプリケーションでCodeGuruを使用し、プライムデーでは39%のコスト削減が実現したという報告も(プレビュー)

・コンタクトセンターソリューション「Amazon Connect」を強化する「Contact Lens for Amazon Connect」。マシンラーニングを活用した一連の分析機能(連絡先検索の強化、コンタクトトレースコードの強化、テーマの検出、リアルタイムなスーパーバイザ分析/アラートなど)をAmazon Connectのエクスペリエンスとして提供(プレビュー)

・非構造化データが多い社内ドキュメントに対応したエンタープライズ向け検索サービス「Amazon Kendra」。AWSに保存されているすべての非構造化データにマシンラーニングベースの検索機能を提供、マシンラーニングのアルゴリズムがコンテキストを理解し、もっとも正確性の高い結果を返答

 これらはいずれもマシンラーニングの専門的なスキルや経験を必要としないサービスである点が大きな特徴だ。SageMakerのアップデートにおいてはデータサイエンティストやMLエンジニアといったプロフェッショナル向けの機能を拡充し、その一方でビジネスユーザー向けにマシンラーニングのパワーを結集した、マシンラーニングのスキルを必要としないサービスを提供する。

 これもAWSのアップデートにおいてよく見かける光景であるが、“500マイル”ごとに確実に、マシンラーニングの歩みを決して止めないというAWSの決意があらわれている。