特別企画
AWSのアンディ・ジャシーCEOが語った、トランスフォーメーションを成功させる6つのポリシー
20を超える新サービスをAWS re:Invent 2019キーノートで一挙公開
2019年12月13日 06:00
Moving Out:レガシーからの脱出
「あなたのお金で得られるものはそれがすべてなの?(Is that all you get for your money?)」――。
ジャシーCEOは、3曲目として紹介したビリー・ジョエルの「Movin' Out」の一節を引用し、IBM、Oracle、MicrosoftなどクラシックなITベンダーが提供してきたレガシーとそのコストから、自分自身を解放すべきだと語る。
ジャシーCEOは毎年、re:Inventのキーノートにおいて競合への痛烈なバッシングを行うのが通例だが、今回も「トランスフォーメーションを達成するには、誰もメンテナンスできないメインフレーム、古くさくてトリッキーなRDBMS、制約だらけのライセンスから離れていく(Movin' Out)必要がある」と訴えかけ、AWSがクラウドへの“Movin' Out”に向けた、さまざまなソリューションやエコシステムを用意している点をあらためて強調している。
Too Much:データアナリティクスへの飽くなきチャレンジ
4曲目にピックアップしたのはデイヴ・マシューズ・バンドの「Too Much」で、ジャシーCEOは「渇望が成長を促進する(The hunger keeps on growing)」という一節を引用し、人々がデータを扱いやすくしたいということに関して飽くことのない“渇望”を抱いているとしながら、オブジェクトストレージのAmazon S3やクラウドデータウェアハウス(DWH)のAmazon Redshiftの登場が、データサイロからデータレイクへの移行を促してきたかを説明している。
ジャシーCEOはここで、データソリューション関連の6つのアップデートを明らかにしている。
・S3上にある共有データセットにアクセスするアプリケーションの管理を容易にする「Amazon S3 Access Points」。データセットにアクセスするポリシーを、アプリケーション単位で任意に記述できるアクセスポイント(一意のホスト名)。
・RedshiftのデータをApache Parquet形式でS3にエクスポートできる「Amazon Redshift DataLake Export」と、RedshiftからAmazon AuroraやRDSにダイレクトアクセス可能な「Amazon Redshift Federate Query」
・Redshiftのコンピュートとストレージを分離したインスタンス「Amazon Redshift RA3 Instances with Managed Storage」。Nitroシステムを利用し、既存クラウドデータウェアハウスの3倍の性能を実現するコンピュート部分と、最大8PBまでのワークロードをサポートでき、自動で容量を拡張できるストレージ部分を別々にスケールできるため、Redshiftのコストをより最適化可能になっている(既存のRedshiftは「DC2」インスタンスに)
・Redshiftのコンピュートとストレージを分離し、ストレージ(S3)にコンピュート機能を載せることで、コストの増加なしに10倍の高速化を実現するアクセラレータ「AQUA for Amazon Redshift」。RA3インスタンスをベースに、S3ストレージ上にアナリティクス専用のカスタムチップを実装することで、高速なキャッシュを実現。データアナリティクスにおけるフロント処理を大幅に削減する(2020年提供予定)
・Amazon Elasticsearch Service専用の低コストでスケーラブルなウォームティア(Warm Tier)のストレージ「UltraWarm for Amazon Elasticsearch Service」。既存のオプションに比べて、約90%のコスト削減と最大900TBのストレージ容量を提供する。UltraWarmのリリースにより、既存のストレージレイヤは「ホット(Hot)」に変更(プレビュー提供)
・Apache Cassandraと互換のサーバーレスなマネージドサービス「Amazon Managed Apache Cassandra Service(MCS)」。アプリケーショントラフィックに応じてテーブルを自動的にスケールアップ/ダウンが可能。サーバーレスなのでサーバーの管理やプロビジョニング、保守などは一切不要に。既存のApache Cassandraユーザーはアプリケーションの変更なしで利用可能となった
なお、2012年に行われた最初のre:Inventで発表されたAmazon Redshiftは、クラウド上でデータウェアハウジングを可能にした最初のサービスとして大きな衝撃をもたらしたが、リリースから7年たっても進化が止まる気配はなく、今回も多くのアップデートが追加された。
特にコンピュートとストレージを分離したRA3インスタンスを用意し、さらにそれを拡張するAQUA(Advanced Query Accelerator)のリリースは、「データアナリティクスのボトルネックは、ストレージではなくコンピュートに移っている」という判断を反映したアップデートとして興味深い。
既存の常識にとらわれずに、顧客の声を丁寧に聞くことで得られた知見をアップデートにつなげていくところにAWSらしさがあらわれている。