特別企画

130年以上にわたるイノベーションを肌で感じる――、ヤマハの企業ミュージアム「INNOVATION ROAD」見学レポート

 ヤマハの創業は1887年。創業者の山葉寅楠氏が静岡県浜松市で壊れたオルガンの修理をしたことがきっかけであった。同年11月にはオルガンの製作に成功、1889年にはヤマハの前身となる合資会社山葉風琴製造所を設立――。それから130年、ヤマハはさまざまなイノベーションを起こし続けている。

 INNOVATION ROAD(イノベーションロード)は、ヤマハのDNA、現在と未来への挑戦を「見て・聴いて・触れて」体感できる企業ミュージアムだ。ヤマハが挑戦し続けてきた歴史の足跡と、それらを経てこれからも未来に向かって歩み続けるヤマハの“道のり”をシンボライズしている。オープンしたのは2018年の7月だが、ようやく訪れる機会を得たので見学させてもらった。なお、見学は無料で可能だが、予約制のため事前の申し込みが必要だ。

ヤマハ本社事業所の21号館。遠州鉄道八幡駅からすぐ、JR浜松駅からタクシーなら10分ほど
21号館前(構内)にはピアノの鍵盤を模した横断歩道が。ヤマハらしい遊び心だ

 INNOVATION ROADは、静岡県浜松市中区のヤマハ本社事業所21号館内に設置されている。21号館に入ってすぐのところに入り口がある。

 ミュージアム内には、さまざまな製品やサービスが12のエリアに分かれて展示されている。“楽器や音・音楽を愉しむ新しいカタチ”など、ヤマハならではのコンセプトを提案する「コンセプトステージ」から、歴代の名器から現行製品まで、見て、触れて楽しめる「楽器展示エリア」、ヤマハが歩んできた挑戦やイノベーションの歴史を紹介する「イノベーションロードマップ」、創業当時のオルガン、ピアノから、現在に至るまでの歴代の革新的製品など200点を超えるアイテムを展示する「ヒストリーウォーク」など、順路に沿って見学、体験していくことで、製品やサービスに対するヤマハのこだわりや取り組み姿勢を体感することができる。

入ってすぐの「コンセプトステージ」に展示されていたピアノ。自動演奏で音楽が再生されるデモや、鍵盤をたたいた位置にあわせてカラフルな映像を映し出すデモなどが行われていた
「楽器展示エリア」には、ピアノをはじめとした、ヤマハがこれまでに手がけてきたさまざまな楽器が並ぶ。このピアノは演奏可能で、多くの見学者が弾いていた
50年以上前のアコースティックギターから最新のモデルまで、さまざまなギター、ベースが並ぶ
全国の学校の吹奏楽部などでよく使われている管楽器や打楽器なども展示されている
「ものづくりウォーク」エリアでは、楽器ができるまでの工程や部品なども詳しく紹介されている

 楽器ばかりではない。オーディオ機器や業務用音響機器、ゴルフクラブ、自動車用の内装部品、もちろんネットワーク機器も展示されている。ネットワーク機器は、クラウド Watchの読者にとっては一番なじみが深い製品だろう。

1995年発売のISDNリモートルータ「RT100i」。ヤマハネットワークのパイオニア的製品だ
1998年発売のISDNリモートルータ「NetVolante RTA50i」
2002年発売のイーサアクセスVPNルータ「RTX1000」

 過去の製品だけでなく、現行の製品やサービスもしっかりと紹介ビデオ付きで見学できる。

ギガアクセスVPNルータ「RTX830」やスタンダードL3スイッチ「SWX3200-28GT」、シンプルL2 PoEスイッチ「SWX2100-5PoE」、無線LANアクセスポイント「WLX313」などの現行製品が紹介されている
ビデオサウンドコラボレーションシステム for Huddle Rooms「CS-700AV」を活用したビジネスコミュニケーションソリューションの紹介
スピーチプライバシーシステム「VSP-1」の紹介。人の声から合成した「情報マスキング音」が会話の音声情報を包みかくすソリューションを体験できる
ふと天井を見上げれば、そこにはヤマハの無線LANアクセスポイントが。機種はおそらくフラッグシップの「WLX402」だ

 こうした機器やサービスの展示、体験に加え、立体音響技術「ViReal(バイリアル)」による108.6チャンネルシアター「スーパーサラウンドシアター」、バーチャル映像と連動した楽器の自動演奏により、コンサート会場さながらのライブ演奏を楽しめる「バーチャルステージ」などもあり、迫力ある映像や臨場感あふれる音響を体感できる。

 INNOVATION ROADでは常設展示だけでなく、コンセプトに基づいた特別展も実施。ちょうど見学に行ったときには「未来をカタチに -ヤマハデザインの流儀-」と題された特別展が開催されていた。

「未来をカタチに -ヤマハデザインの流儀-」の展示の一部。後ろにちょっとだけみえるバイクは、お互いにデザインアイテムを交換してみようというヤマハ発動機との共同実験でヤマハによるデザイン。楽器のデザイナーがバイクをデザインしたら?という面白い取り組みだ

 早くからデザインの重要性に着目し、1963年にはデザインの専門組織を設置したヤマハ。「本質を押さえた上で、革新的であること。本質を美しく表現しつつ、過剰な装飾は控えること。そして社会との調和を目指すこと。」という理念のもと、特別展ではそのデザイン理念を具現化するための取り組みの系譜や姿勢が紹介されている。

 見学前は、ちょっとしたショールームくらいの規模だろうと思っていたのだが、一通り見学すると1時間以上たっていた(楽器好きの人ならもっと長時間になるだろう)。

 なお、20名以上の団体や学校行事、福祉、介護団体での見学の場合は希望に応じてスタッフが館内を案内してくれる。ちなみに今回は特別に案内してもらったのだが、説明は実に分かりやすく、楽器や音楽には詳しくない筆者でも楽しく、興味深く見学することができた。

 ことネットワーク機器に限れば、「昔の機種なんて見る必要ある?」と考える人もいるかもしれない。たしかにネットワーク機器に求められるのは現在のスペックであり機能であろう。だが、その源流に触れ、製品に息づく精神を垣間見ることで、さらに製品に対する理解が深まることもある。浜松に訪れる機会があれば、見学する価値は十分にあると思う。