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AWS re:Invent 2018レポート、ジャシーCEOが発表した20の新サービスを一挙に解説
AWSクラウドは“ビルダー”をレガシーから解放し続ける――
2018年12月7日 06:00
「われわれはひとつのツールが世界を支配できるとは信じていない。われわれはすべての人々がその仕事に最適なツール(the right tool for the right job)を使えることを望んでいる」――。
11月28日(米国時間)、米ラスベガスで開催されたAWSの年次カンファレンス「AWS re:Invent 2018」(11/26~11/30)のキーノートに登壇したAWSのアンディ・ジャシーCEOは、5万人を超える聴衆を前にAWSクラウドのミッションを語ったが、この”the right tool for the right job”は、今回のキーノート中にジャシーCEOが何度も引用したフレーズである。
いまだに膨大なレガシーの鎖につながれたままの状態にある人々を、クラウドでもって解放していく、それはAWSがサービス提供を開始した2006年から訴えてきたことではあるが、今年はその解放のスピードをさらに加速するかのように、ジャシーCEOは20ものサービスをキーノートで発表している。
本稿ではその概要を紹介しながら、AWSがあらためて挑もうとしている“レガシーからの解放”について検証してみたい。
I want it all and I want it now -“すべてを、いますぐ”をかなえるストレージサービス
昨年のキーノートでジャシーCEOは、AWSがフォーカスする5つのテーマごとに、それぞれを象徴する楽曲を最初にハウスバンドが演奏し、新サービスを紹介するというかたちで発表を行ったが、今回のre:Inventでも同じアプローチを用いている。
最初のテーマは「ビルダーたちが求めるものはなにか(What do builders want?)」、そしてハウスバンドが演奏した曲はクイーンの「I Want It All」――。
ジャシーCEOは「I want it all and I want it now(すべてが欲しい、いますぐ欲しい)」という歌詞になぞらえ、「ビルダーたちはいますぐすべてが欲しいのであり、AWSはその要望に応えていきたい」として、ストレージ/ファイルシステム関連の3つのアップデートを発表している。
Glacier Deep Archive
オンプレミスのテープより低価格で容易にコールドデータを管理できる、フルマネージドのアーカイブサービス。99.999999999%(ナインイレブン)の耐久性と1Gbあたり月額0.00099ドルという低コストで、2019年より全リージョンで提供開始
Amazon FSx for Windows File Server
ネイティブWindowsファイルサーバー上に構築された、フルマネージドなWindowsファイルシステム。ほかの管理用のハードウェア/ソフトウェアを一切必要としない。ファイルシステムあたり最大2GB/秒のスループットと、サブミリ秒のレイテンシを備えた高速性に加え、データ保存時および転送中に自動で暗号化される安全性も提供。全リージョンですでにGA
Amazon FSx for Lustre
HPCやマシンラーニング、メディアデータ処理など処理負荷の高いワークロードに適したフルマネージドなLustreファイルシステム。数百GB/秒のスループット、数百万IOPS、サブミリ秒のレイテンシという高速性で大量のデータセットを処理する。S3と統合されているため、S3データへのアクセスが容易なほか、Direct ConnectやVPN経由でのFSxファイルシステムにアクセスすることも可能。全リージョンでGA
データがどこに、どんなかたちで保存されていようとも、いますぐそれを取り出したい、しかもできるだけ、安く、簡単に、安全に――。これらのサービスは、そうしたユーザー(ビルダー)のリクエストに対するAWSからの回答となる。
注目したいのは、低価格で高速であることはもちろんのこと、すべてフルマネージドで提供されているという点だ。AWSはここ数年、上位レイヤのサービスを、ユーザーが容易に利用できるフルマネージドの形態で提供することに注力しており、これら3つのストレージサービスもそうした流れをくんだものといえる。