特別企画

大阪ローカルリージョン、Nitro、Kubernetes――、進化を続けるAWSクラウドインフラストラクチャを解説する

大阪ローカルリージョン――DRよりもコンプライアンス重視

 グローバル全体のリージョンおよびAZ(アベイラビリティゾーン)に関するアップデートでは、2月13日に一般提供開始(GA)となったAWS初のローカルリージョン「大阪ローカルリージョン」への質問が集中した。

 大阪ローカルリージョンは、基本的に、すでに東京リージョンでサービスを契約しており、かつAWSによる審査を通ったユーザーのみが利用することができる。つまり、大阪ローカルリージョンの現在の位置づけは、あくまで東京リージョンを補完する存在だといっていい。

 東京~大阪間の距離は約500kmで、AWSのリージョン間でこれほど近い距離はほかに存在しない。またAWSのリージョンは耐障害性を高めるため、いずれのリージョンも複数のAZで構成されており、東京リージョンの場合は4つのAZで構成されているが、大阪ローカルリージョンは現在、シングルAZの構成を取っている。この点から見ても、大阪がほかの18のリージョンとは異なる位置づけであることがわかる。

 では、大阪ローカルリージョンはどういったニーズのもとで開設されたのか。

 岡嵜氏は「金融、通信、そして医療など、コンプライアンス順守の観点から海外のリージョンにデータを移しにくい、または移すことができない顧客からの強いニーズに応えた」とコメントしている。

 AWSの国内ユーザーの中には、以前から「ディザスタリカバリ(DR)先として東京以外にも国内リージョンが欲しい」と要望する企業が少なくなかったが、岡嵜氏は「大阪ローカルリージョンはディザスタリカバリに特化するために開設したわけではない。ディザスタリカバリだけであれば、地震などの災害対策も含め、東京リージョンの4つのAZ構成でも十分に完結できると考えている」(岡嵜氏)としており、コンプライアンス順守のニーズに応えたことをあらためて強調している。

 特に、日本の機密文書の定義(極秘/秘/社外秘の3区分)が世界的に見ても極めて特殊であることから、データを国外リージョンに移しにくい企業が多く、そうした規制に悩む企業を大阪ローカルリージョンでサポートすることが主な目的だとしている。

2月13日にオープンした大阪ローカルリージョンは「コンプライアンス」にフォーカス

 なお、大阪ローカルリージョンの料金体系は東京リージョンと同じだが、提供されるサービスの数は東京より少なく、EC2やS3、RDSなど基本的なインフラサービスが中心だ。AWSとしても初の試みとなる「リージョンを補完する存在としてのローカルリージョン」がどんなユースケースを生み出すのか、グローバルでも注目が集まっている。

ネットワーク――東京に2つ目のDXロケーションが開設

 AWSクラウドを構成するAZ内およびAZ間、さらにリージョン間を構成するネットワークに関しても、Direct Connect(DX)を中心にいくつかのアップデートが紹介された。

 東京リージョンにおいては、2017年10月に高速コンテンツ配信サービス「Amazon CloudFront」の100番目(東京では5番目)となるエッジロケーションが開設、また2017年2月には、2つ目のDXロケーションがアット東京に開設されている。

 これまで国内のDXロケーションは東京(Equinix)と大阪の2カ所だったが、「Direct Connectの接続ポイントとしては距離が離れすぎている」(岡嵜氏)ということから、東京に2つ目の拠点がオープンする運びとなった。

東京にDirect Connectの2つ目の拠点が開設へ

 その他の主なネットワーク関連のアップデートは以下の通り。

・顧客のオンプレミス環境と複数のAWS VPCの中間に位置するハブとして利用可能な「Direct Connect Gateway(DXGW)」

・異なるリージョン間のVPC接続を可能にする「インターリージョンVPCピアリング」(2/20から東京リージョン含めて利用開始)

・VPCエンドポイントを利用した柔軟なアクセスや顧客へのSaaSサービス提供を可能にする「AWS Private Link」の拡張

Direct Connect GatewayはオンプレミスとVPCの間に置くハブ的なゲートウェイ。1つのコネクションで複数リージョンのVPCを接続できる