特別企画

ヤマハが“ハドルルーム市場”を開拓! ビデオサウンドコラボレーションシステム「CS-700」で取り組む新領域とは

新製品のCS-700

 ヤマハは2018年3月に、少人数向け会議室(ハドルルーム)に最適な遠隔地コミュニケーション用オールインワンデバイスとして、マイク/スピーカーやカメラを備えたビデオサウンドコラボレーションシステム「CS-700」を発売した。

 これはヤマハの製品ではあるが、2014年にヤマハが子会社化した米国Revolabs社との共同開発となっている。

 先日、そのRevolabsのプロダクトマネジャーであるHolger Stoltze氏に、CS-700の開発コンセプトや技術的な特徴などをうかがうことができたので、その詳細を紹介していこう。

CS-700を手にする、Revolabs プロダクトマネジャーのHolger Stoltze氏

少人数向け会議室に最適な機能を盛り込む

――今回発売される「CS-700」は米Revolabs社との共同開発製品だとうかがいましたが、どういった製品なのか教えてください。

 「CS-700」は新しく開発したビームフォーミング、エコーキャンセラー、広視野角HDカメラを搭載した遠隔地コミュニケーション用のオールインワン製品です。

 ハドルルーム、ハドルスペースに最適な音声会議システムになるようにヤマハとRevolabsで共同開発しました。

 ハドルルームというのは、最近米国ではやりの、4~6人で会議ができる小さめの部屋。一方ハドルスペースとは、部屋にはなっていないけれど、パーテーションなどで仕切られた小さなミーティングスペースのことです。少人数がサッと収まってすぐにミーティングができる場所を意味しており、これからの新しい働き方を実現するためのキーといわれています。

 このハドルルーム、ハドルスペースは小さいので、みんなでPCを置いてしまうと、すぐに机の上はいっぱいになってしまい、大きい機材は邪魔になる、といったケースが多い。そのため、小さい空間でも全員の顔が映るワイドカメラや、小さい部屋で最適に使えるようなオーディオ機能を搭載する形で、CS-700の開発を行いました。邪魔にならないよう、主に壁に設置する形を想定しています。

ハドルルームの壁に設置する形を想定している(Japan IT Weekでの展示より)

さらに進化した音声処理機能

――肝となる音声処理機能について、もう少し詳しく教えてください。

 収音に関しては、ビームフォーミングという技術を用いています。デジタル信号処理を用いており、話している人に向かってマイクがフォーカスするので、話している人の声だけをクリアに相手側に届けることが可能となっています。

 ただし話者が変わったような場合、ビームフォーミングにより、マイクが急に違う場所にフォーカスしてしまうと違和感が生じてしまいます。それを防ぐために、収音範囲をいったん広げて狙ったところに再度フォーカスするような信号処理の工夫もしています。

 次にエコーキャンセラーは、従来のスピーカーフォンから世代交代した最新のテクノロジーを搭載しました。CS-700には4つのマイクを搭載し、精度が上がる仕組みになっています。

 もともと、ヤマハとRevolabsはエコーキャンセラーをそれぞれ別々に開発していましたが、両社の技術をコラボレーションさせたことによって、さらに精度が高く、学習時間の短くなったエコーキャンセラーを搭載することができました。。

ヤマハではマイク/スピーカーシステムを長年手掛けてきたが、音声処理機能を一新した現行世代の「YVCシリーズ」を、2014年にリリースしている。その際、エコーキャンセラーなど、ヤマハが培ってきた音声処理機能について詳細に取材しているので、詳しくはそちらをご参照いただきたい。なおCS-700には、さらに進化させた最新技術が搭載されている。

音に親しいヤマハだからこそ――、聞き取りやすい遠隔コミュニケーションを実現する「YVC-1000」
https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/special/715365.html

――スピーカーはどういったものになっているのですか?

 スピーカーは4つのユニットが搭載してあり、声の帯域に特化した聴きやすいサウンドになっています。声はモノラルで届けるのですが、テレビをつないで動画などを再生する際は拡張スピーカーとして使えるようになっていて、ステレオで出力できる仕組みです。学校などでテレビにつなぎ、そのスピーカーとして使うようなシーンを想定しています。

――そのほか、音声処理でCS-700ならではの技術はありますか?

 フル・デュプレックスと呼ばれる信号処理を強化しました。通常はどちらか片方の人が話す形になりますが、会議ですから、双方同時に話すようなケースも起こりえます。

 そうした場合、自分の声、相手の声、エコーが混ざりあって、信号上はなかなか複雑な状況になりますから、従来のシステムだとどうしても聞き取りにくくなってしまったり、エコーキャンセル処理がうまくできなくなったりしていたのですね。

 今回、その信号処理を効率よく、そして最適化して行うことで、自然に声を届け、双方の声を聞こえやすくしています。

 また、(ヤマハの従来のマイクスピーカーシステムのように)机の上に置くような製品ですと、机の音の反射があったのですが、CS-700は壁に設置する形を想定しているので、空間の音響特性が従来と異なります。そこでチューニングし直し、ハドルルームに最適な形になるようにしています。

――設置は簡単にできるようになっているのですか?

 設置の簡単さはとても重要だと考えています。例えば壁に設置する場合でも簡単に金具で付けられますし、ディスプレイスタンドを用いる場合でも、簡単に設置できるようにする予定です。

新たな分野、映像処理に取り組む

――一方で、CS-700は現行のYVCシリーズと違い、カメラを搭載しているのが大きな特徴ですが、これは何か特別な技術が使われているのですか?

 はい、このビデオ処理のために、Revolabsでは専門のエンジニア集団ともいえる精鋭の技術チームを作り、開発を行いました。

 CS-700はハドルルーム向けのシステムですから、カメラは近距離で全体をとらえる必要があり、魚眼レンズを使わざるを得ません。しかし魚眼レンズだと、どうしても画像がゆがんでしまうため、映像が見づらくなり、コミュニケーションツールとしては好ましくないのです。

 そこで魚眼レンズを使ってはいますが、カメラには広視野角のHDカメラを搭載すると同時に、広角カメラ特有の画面の歪みをなくし、普通のカメラでとらえたような画像に変換する信号処理を新たに開発して、搭載しています。

 この結果、とても見やすく、違和感のない映像でコミュニケーションを提供可能になりました。

筐体の中央にカメラを搭載している

――ところで、従来のヤマハ製品であるPJPシリーズやYVCシリーズと比較するとボタンのデザインが少し違うように見えますが、何か工夫などはあったのですか?

 基本的にボタンのデザインをそろえようとする動きはあります。誰にでも直感的に分かるデザインにし、すぐに手に取って使えるような、分かりやすい表示のユーザーインターフェイスとしています。

 また、カメラではプライバシーにも気を使っています。機能的には、ボタンでカメラのオン/オフを切り替えられるようにしているのですが、現在はプライバシーが非常に重要な時代で、確実に映らないことが求められます。

 そこで、ボタンによるオン/オフだけではなく、物理的にカメラをカバーで覆えるようにしているのです。このプライバシーに関する完全な配慮は、特に米国市場での要望によるものです。

米Revolabsとヤマハの技術を“いいとこ取り”

――ヤマハとRevolabsで技術を持ち寄ったとのことですが、どこの部分がヤマハの技術でどこがRevolabsの技術となりますでしょうか。

 少し繰り返しになりますが、基本的にビームフォーミングの信号処理はヤマハの技術を生かしながら、RevolabsでDSPのプログラミングを行っています。また魚眼レンズでとらえた映像を、歪みのないよう平面化するというカメラの技術は、Revolabsの技術を使っています。

 エコーキャンセラーは、両社が持っていたものを融合させました。ヤマハはフル・デュプレックスを得意としているので、そこにRevolabsが持っている、マイクを動かしてもエコーキャンセラーがしっかりと働く技術を入れ込むなど、それぞれの強みを組み合わせました。

――両社のコラボレーションによって、結果として、それぞれが単独のときではできなかった製品が完成したということですね。

 はい。両社の技術を組み合わせたのは、(国内ではヤマハが販売している)Revolabsのスピーカーフォン「FLX UC 500」において、新ファームウェアに搭載したエコーキャンセラーの強化が最初です。今回のCS-700はコラボレーションの第2作と、まだまだスタートしたばかりですが、今後も両社の技術を結集させて、さらに最適な製品開発を行っていきます。

――ヤマハとの共同開発において大切にしていたことはなんですか。

 今回のCS-700は、開発の観点でいうとRevolabsが主体ではあるのですが、ヤマハとRevolabsの持っているリソースのいいところを集め、より良い製品になるように努めて開発をしてきました。

 やはり、お互いに大切にしたのは、より良いクオリティの製品にする、ということです。一度導入すると長期間使う製品ですから、ヤマハの高い品質を維持しつつ、Revolabsとヤマハが持ち寄った新しい技術、高度な信号処理技術を搭載していくことをコンセプトに取り組んできたのです。

管理しやすいような工夫も

――市場にある、さまざまなWeb会議アプリケーションとの互換性は保証されているのですか?

 Web会議市場では、Skype(for Business)、Zoom、WebEx、Vidyo、Google(Chromebox for meetings)など、数多くのシステムがあります。そういった各種アプリケーションでしっかりと動く仕様になっています。国内のWeb会議システムとは、これから検証を行っていく予定です。

 中には特殊なAPIを持ち、相手側のWeb会議システムから遠隔操作できるようにするシステムなどもあります。こうしたものに対しても、汎用的に組み合わせてシステムアップすることが可能となっています。

 もちろん、そうした特殊なシステムと完全な互換性を持たせるためにはWeb会議ベンダー側が作り込む必要があるのですが、そうしたベンダー向けにAPIも公開しています。

さまざまなWeb会議アプリケーションで利用できると話す、Holger Stoltze氏

――大きい会社であればあるほど台数は増えると思いますが、そういったときの設定の変更などはどうするのですか?

 ハドルルームやハドルスペースは1個や2個だけでなく数十~数百、中には、米国でもレアケースの部類ですが、1000個あるところもあったりしますので、ネットワークインターフェイスを搭載しており、ネットワーク経由で遠隔設定することが可能となっています。

 オン/オフやファームウェアのバージョンアップなどを、中央から一括して管理することができます。ネットワーク機能として、SNMPやDHCPオプション66(編集注:TFTP Server)に対応しているので、それに対してアプリケーションを書くことで、さまざまな管理が可能です。例えば、SNMP系でのワーニング送出や状態監視、DHCPオプション66だと起動時にDHCPでアドレスをもらうと同時に、設定の情報も送り込んでもらう、といったことができます。

管理用のネットワークインターフェイスが用意されている

――CS-700はハドルルーム、ハドルスペースに最適とのことですが、それ以上の部屋の場合でも使用できますか?

 スペックが決まっているので、あまりにも大きすぎる部屋では対応は難しいのですが、拡張マイクを付けることにより、ハドルルームより、もう少し広いところでもご利用いただけます。

 今後、YVC-1000のように拡張マイクを販売する予定なので、そちらで拡張する形ですね。

(協力:ヤマハ)