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NEC、2024年度上期連結業績は増収増益 ITサービスが好調で通期見通しを上方修正

米国のテレコム/ブロードバンド事業者向けソフトウェア企業の買収も発表

 日本電気株式会社(以下、NEC)は29日、2025年度上期(2025年4月~9月)の連結業績を発表した。それによると、売上収益は前年同期比5.6%増の1兆5697億円、営業利益は同165.3%増の1185億円、調整後営業利益は同115.6%増の1315億円、税引前利益は同332.7%増の1154億円、Non-GAAP営業利益は同96.6%増の1274億円、当期純利益は同441.1%増の728億円、Non-GAAP当期利益は同109.8%増の785億円となった。調整後営業利益率は8.4%である。

2025年度 上期実績 主要指標

 NEC 取締役 代表執行役 Corporate EVP兼CFOの藤川修氏は、「国内ITとANS(航空宇宙、防衛)が好調であり、全体で大幅な増益となった。社内想定と比較すると、調整後営業利益は約200億円上回った。国内ITサービスが想定以上に伸長した結果である。ITサービス、社会インフラがいずれのセグメントも増収増益になっている」と総括した。

NEC 取締役 代表執行役 Corporate EVP兼CFOの藤川修氏

セグメント別の業績

2025年度 上期実績セグメント別

 セグメント別業績は、ITサービスの売上収益が前年同期比2.6%増の1兆1083億円、調整後営業利益は前年同期から593億円増の1156億円。そのうち、国内ITサービスの売上収益が前年同期比3.4%増の9540億円、調整後営業利益が前年同期から520億円増の1009億円。海外(DGDF=デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス)の売上収益が前年同期比1.8%減の1542億円、調整後営業利益が前年同期から73億円増の146億円となった。

 「国内は、好調なパブリックが牽引した。法人向けPCの販売機能の移管や、子会社事業の一部終息などの特殊要因の影響を除くと、前年同期比で約9%の増収となる。また、BluStellarを中心に収益性が向上し、大幅な増益となっている。海外は、KMDでの低収益事業の終息によって減収となったが、Avaloqの収益性改善と、前年度の一過性費用が剥落したことによって増益になった」という。

ITサービス事業の概況

 国内ITサービスのうち、BluStellarの売上収益は前年同期比19.8%増の2880億円、調整後営業利益は前年同期から261億円増の396億円となり、売上比率は前年同期の26%から30%に拡大した。ベース事業の売上収益が前年同期比2.4%減の6660億円、調整後営業利益は前年同期から258億円増の613億円となった。

 「BluStellarは、好調なDX需要を受けて想定を上回るペースで事業が拡大し、収益性が向上している。シナリオに基づいたコンサル起点のビジネスを増やすことで、より収益性を高められる。ベース事業は費用の効率化を含めて収益性が向上し、事業売却益もプラスになった」と述べた。

国内ITサービスの状況

 国内ITサービスの第2四半期の受注状況は、全体では前年同期比5%減。業種別受注状況は、パブリックが同1%減、エンタープライズが同11%減、子会社他が同5%減となった。いずれもマイナス成長となっているが、高い水準を維持していることを強調する。また、エンタープライズのうち、金融は前年同期比3%減、製造が同1%増、流通・サービスが同21%減。子会社他のなかに含まれるアビームコンサルティングの受注額は同13%増となっている。

 「パブリックは、自治体標準化や消防防災案件の受注が一巡する一方、官公庁向け大型案件を獲得し、高水準を維持している。エンタープライズは、案件の端境期により2桁の減少だが、DX需要は堅調である。2025年度の受注獲得は下期偏重となっており、下期にはプラスに転じる見込みである」とした。

国内ITサービス受注動向:前年度比

 2025年度上期の社会インフラの売上収益は、前年同期比15.1%増の4030億円、調整後営業利益は前年同期から168億円増の286億円。そのうち、テレコムサービスの売上高は前年同期比3.2%減の1768億円、調整後営業利益は前年同期から89億円増の152億円。ANS(Aerospace and National Security)の売上収益は前年同期比35.0%増の2262億円、調整後営業利益は前年同期から79億円増の134億円となった。ANSから海洋システムを除いた航空宇宙・防衛の売上収益は前年同期比51.8%増の1955億円、調整後営業利益は前年同期から146億円増の232億円となった。

 「テレコムサービスでは、開発費用を中心とした費用の効率化に加えて、一部案件の前倒しが貢献。ANSは、海洋システムで一過性の費用を計上したが、航空宇宙・防衛は、これまでに受注した案件の着実な実行により、大幅な増収増益になっている」という。

社会インフラ事業の概況

2025年度の通期業績見通しは上方修正

 一方、2025年度の通期業績見通しを上方修正した。売上収益は当初見込みより600億円増額となる前年比0.9%減の3兆4200億円、調整後営業利益は当初見込みより200億円増額の前年比14.9%増の3100億円、Non-GAAP営業利益は当初見込みより200億円増額となる前年比9.2%増の3400億円、Non-GAAP当期利益は当初見込みより150億円増額となる前年比8.6%増の2450億円とした。

 なお、上方修正は、すべてITサービスの修正によるものとなっている。

2025年度の通期業績見通しを上方修正した

 2025年度は、NECが取り組んでいる「2025中期経営計画」の最終年度となっており、ゴール直前の上方修正は、同社の好調ぶりを示すものといえる。

 「上方修正は、上期までの業績進捗を踏まえたものになる。下期以降も堅調な市場環境を背景に、アップサイドポテンシャルを実現していく。また、計画のなかには、事業環境の変動を想定したリスク費用を織り込んでいる。リスクを適切にマネージし、発現を抑制する」としたほか、「2026年度以降の収益性向上に向けた施策も検討している」とも述べた。

 また、高市政権の発足に伴う防衛費の増額などが見込まれるが、この点について、NECの森田隆之社長兼CEOは、「NECは、海洋から衛星まで日本のデジタルインフラをサポートしている企業である。また、日本においてLLM(大規模言語モデル)をスクラッチで開発してきた企業である。新たなAI時代において、NECが果たす役割は大きい」などと述べたほか、「JAXAと行っている光通信衛星コンステレーション構築への取り組みや、KDDIとともに日本の企業や政府機関に対するサイバーセキュリティ事業の取り組みが、日本の経済安全保障に貢献できる」と語った。

NEC 代表執行役社長兼CEOの森田隆之氏

米国でCSGを完全子会社化

 一方、NECは、米テレコム/ブロードバンド事業者向けBSS(ビジネスサポートシステム)ソフトウェア企業であるCSG Systems International,Inc(以下、CSG)を完全子会社化すると発表した。

 北米地域統括会社であるNEC Corporation of America(NECAM)を通じて、約28億8700万ドル(約4417億円)で買収する。買収完了時期は、2026年中を予定している。

CSGの買収について

 NEC 執行役 Corporate SEVP兼Co-COOの山品正勝氏は、「CSGは、米国のテレコム/ブロードバンド事業者向け事業において、強固な顧客基盤を有し、幅広い業界にソフトウェアサービスを提供する企業である。NEC傘下の米国企業であるNetcrackerとは、地理的、顧客セグメント的に相互補完性が高い。テレコム/ブロードバンド事業基盤を強固なものにでき、最適なソリューションを提供できる。両社の技術やDXの能力を生かしたソリューション強化、商材のクロスセル、幅広い業種への事業展開など、シナジーの機会が多い」とした。

 また、「NECグループが持つAIを中心とした技術、40カ国以上に展開する顧客基盤、そして資金をフルに活用することで、グローバル展開するソフトウェアサービス事業を、北米から牽引していく。欧州を中心としたDGDF事業と並ぶ事業に育てる」と位置づけた。

買収の意義
NEC 執行役 Corporate SEVP兼Co-COOの山品正勝氏

 買収によって期待するクロスセルでは、Netcracker事業の100%、CSG事業の70%に相互に貢献し、外部SIに頼っていたCSGではNetcrackerが持つSI力を生かすことができるという。

 山品Co-COOは、「テレコム/ブロードバンド事業者向け事業において、現在20%のシェアを、次期中期経営計画において、トップシェアを抜き、30%のシェア獲得を目指す」と意気込みをみせた。

 CSGは1994年に設立した企業で、2024年度の売上高は11億9700万ドルであり、2020年度からの年平均成長率は5%となっている。米国市場での売上高が約9割を占める。2024年度の調整後OP率は18%、調整後EBITD率が23%となっている。

 テレコム/ブロードバンド向けを中心としたBSSソフトウェア事業のリーディングカンパニーであるとともに、金融、ヘルスケア、物流/交通などの幅広い業種に適用が可能なカスタマーエクスペリエンス(CX)事業や、ペイメント関連ソフトウェア事業を展開。顧客別売上比率はテレコム/BBが70%、その他が30%だ。

 「複数の米国大手テレコム/ブロードバンド企業を顧客に持つなど、強固な顧客基盤と知見を武器に、DXケーパビリティを強化するとともに、幅広い業種に進出している点が強みである。CSGとNetcrackerが持つ顧客基盤やテクノロジー、DXケーパビリティを活用し、製品競争力の強化や、幅広い業種への事業拡大を図る」と述べた。

CSGの概要
CSGの強み
買収によるシナジー

 また、NECの森田社長兼CEOは、「CSGにはずっと関心があった。だが、NECの財務体質の問題があり、買収には踏み出していなかった。中期経営計画がオントラック以上に進んでおり、5000億円超の戦略投資ができる実力がついてきたこと、米国市場において事業ポートフォリオを持つという点での戦略的な意味合いが出てきたこと、DXの観点からテレコム/ブロードバンド市場に焦点が当たってきたという背景から、今回の買収に至った」と説明。

 「グローバル展開においては、セグメントを定義して、トップティアになることを目指す。Avaloqであればウェルスマネジメント、Netcracker/CSGであればOSS/BSSの領域でトップを目指す。戦えるマーケットで、トップシェアを取っていくのが基本戦略である」と述べた。