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富士通の2024年度第1四半期連結業績は増収増益、当期純利益は約4倍に
Fujitsu Uvanceも堅調に成長
2024年7月26日 00:00
富士通株式会社は25日、2024年度第1四半期(2024年4月~6月)連結業績を発表した。
売上収益は前年同期比3.8%増の8300億円、営業利益は前年同期のマイナス18億円の赤字から、213億円の黒字に転換。調整後営業利益は同806.6%増の236億円、税引前利益が同216.5%増の264億円、当期純利益が297.2%増の168億円となった。
富士通の磯部武司副社長 CFOは、「第1四半期は、社内計画を若干上回る結果となり、目標達成に向けた順調な滑り出しができた。主力のサービスソリューションは昨年からの力強い増収増益基調が続いている。特に国内ビジネスはDXやモダナイゼーションに関する強いデマンドがある。採算性の改善も確実に進んでいる」と総括。だが、「計画比ではプラスだが、特段、どこが良くなったというポイントがなく、インパクトがある内容ではない。よくいえば、全体をうまくコンロトールできた四半期であった」とも述べた。
セグメント別の業績
セグメント別業績は、サービスソリューションの売上収益が前年同期比7.8%増の5016億円、調整後営業利益は同67.1%増の349億円となった。調整後営業利益率は7.0%となっており、前年同期から2.5ポイント改善した。
「国内市場を中心に、DXやモダナイゼーション商談が力強く伸長。Fujitsu Uvanceの売上も引き続き拡大した。サービスソリューションは、2024年度は順調なスタートを切ることができた」と振り返った。
サービスソリューションの売上総利益率は34%となり、前年同期から2ポイント上昇。採算性の改善効果では81億円の増加となっている。開発標準化や自動につながるJGG(ジャパン・グローバルゲートウェイ)の活用率は43%、オフショアを推進するGDC(グローバル・デリバリー・センター)の活用率は14%。また、JGGとGDCの人員数は3万人に増加しているという。
サービスソリューションにおける投資は、前年同期比で83億円増加しており、成長に向けた投資を積極的に実行。オファリング開発やモダナイゼーションナレッジの集約、人材リソースの育成や獲得、リスキリングを進めているという。また、事業成長に直結するセキュリティの強化やIT基盤の強化などへの投資も進めている。
サービスソリューションのうち、Fujitsu Uvanceの売上収益は、前年同期比37.1%増の965億円となり、サービスソリューション全体に占める売上構成比は19%(前年同期は15%)となった。内訳はVerticalが294億円(前年度実績は103億円)と約3倍に大きく成長。Horizontalの売上収益は671億円(同601億円)となった。また、Fujitsu Uvanceの受注は、2023年度に前年同期比49.8%増の1092億円となっている。「第1四半期は、売り上げ、受注ともに、計画をやや上回る進捗となっている」としている。
Verticalのグロスマージン率は40%近く、Horizontalは20%前後であることも明らかにした。
Fujitsu Uvanceは、2024年度の計画では、売上高4500億円を目指し、サービスソリューション全体における構成比で20%を目指している。また、2025年度には売上高7000億円を計画し、売上構成比は30%としている。その先の計画についてはこれまで明確にはしてこなかったが、「2030年度に向けては、半分近いものを、(Fujitsu Uvanceのような)オファリングのポートフォリオで占め、グロスマージン率を拡大していきたい」との考えを示した。
また、サービスソリューションのサブセグメント別内訳では、グローバルソリューションの売上収益は前年同期比23.8%増の1290億円、調整後営業利益は前年同期から11億円悪化し、赤字がマイナス23億円に拡大した。
「Fujitsu Uvanceを中心に力強い成長となったが、収益面では一段の投資拡大により、赤字が残る結果となった。Verticalを中心としたオファリング開発を加速したほか、モダナイゼーションナレッジセンターの拡充など、デリバリー標準化に向けた投資を強化している。オファリングビジネスの拡大、DXやモダナイゼーションに関する強いデマンドへの対応は計画通りに進捗している。増収効果とグロスマージン率の改善により、年間では健全な利益水準が確保できる」と述べた。
リージョンズ(Japan)では、売上収益が同4.0%増の2726億円、調整後営業利益は46.8%増の379億円。「DXビジネスや基幹システム刷新によるモダナイゼーションのデマンド拡大が継続しており、モビリティ、金融、パブリックで増収となった。採算性向上も進展し、調整後営業利益率は13.9%となり、4.0ポイント改善している」という。
リージョンズ(海外)の売上収益は同0.9%増の1422億円、調整後営業利益は30億円改善したもののマイナス5億円の赤字となった。「為替影響による増収はあったが、前年度にドイツのプライベートクラウド事業をカーブアウトした影響があり、前年並となった。事業ポートフォリオ改革により、損失は縮小している」と語った。
2024年度第1四半期の国内サービスソリューションの受注状況は、全体では前年同期比3%減となった。分野別では、エンタープライズ(産業、流通、小売)が前年同期比6%増、ファイナンス(金融・保険)が前年並、パブリック&ヘルスケア(官公庁、自治体、医療)が15%減、ミッションクリティカル(ミッションクリティカル、ナショナルセキュリティなど)が31%増となっている。
「国内は広い領域で、商談拡大傾向が続いており、第2四半期以降の受注予定のパイプラインはしっかりと拡大している。エンタープライズはDXやSX関連、基幹システムのモダナイゼーション案件が継続して拡大し、モビリティ、製造、流通と幅広い分野で活況である。ファイナンスは金融機関向けシステムの大型更新商談を獲得し、高水準であった前年同期並の受注となった。パブリック&ヘルスケアは前年同期に複数に渡る大型案件の受注があった反動によってマイナスになったが、第2四半期以降の受注が積みあがっており、懸念はしていない。ミッションクリティカルは基幹システム更改などで複数件の大型商談を獲得した効果が出ている」という。
海外の受注状況は、Europeが14%減、Americasが4%増、Asia Pacificが14%増となっている。Europeは、北欧を中心にした前年同期の大型商談の反動があったが、Americasでは、Fujitsu Uvanceを中心にサービスビジネスが引き続き拡大し、前年同期の高い水準を上回った。Asia Pacificは、オセアニアの金融系商談において、複数年のサービス更新案件を獲得したことがプラスに影響した。
ハードウェアソリューションの売上収益は前年同期比5.4%増の2285億円、調整後営業利益は63億円悪化し、マイナス36億円の赤字となった。そのうち、システムプロダクトの売上収益は同5.2%増の1948億円、ネットワークプロダクトの売上収益は同6.3%増の336億円となった。「前年同期のサーバーおよびストレージの好採算商談の反動と、円安が部材調達コストの増大に影響し、マイナスに働いた」という。なお、ネットワークプロダクトについては、需要は前年並の低い水準が続くと見ているが、次の成長サイクルに向けた開発投資を継続していく考えを示した。
ユビキタスソリューションの売上収益は前年同期比18.5%減の487億円、調整後営業利益は同1.8%減の44億円になった。2024年4月に競争環境が厳しい欧州ビジネスを終息したことが影響している。
デバイスソリューションは、売上収益が前年同期比6.2%増の716億円、調整後営業利益は同207.7%増の70億円となった。為替影響がプラスに働いている。強い上昇トレンドに転換するのは下期以降と見ている。
消去・全社では、調整後営業利益は前年度から86億円改善したものの、マイナス191億円の赤字となった。このセグメントに含まれるAIや量子をはじめとする先進的な先行研究と、経営基盤全体の強化を継続的に進めており、「これらの中長期的な事業成長投資は計画的に実施していく」とした。グローバルベースで社内ERPを再構築する「OneFujitsuプロジェクト」では、2024年度には国内サービスビジネス向けに稼働を予定しており、データドリブン経営により、さらなる事業の加速と効率化を進める考えを示した。
2024年度通期の業績見通しは据え置き
なお、2024年度通期(2024年4月~2025年3月)の業績見通しは据え置き、売上収益は前年比0.1%増の3兆7600億円、調整後営業利益は同16.3%増の3300億円、調整後当期純利益は同4.2%減の2260億円とした。セグメント別見通しにも変更はない。
「年間を通じて受注は堅調な動きが続くだろう。高い受注残に加えて、受注機会の拡大があり、着実に増収基調が続くと見ている」としたが、「現下の強いビジネスデマンドをしっかりと受け止めていく必要がある。そして、顧客に価値を提供する際に中心となるのは『人』である。事業ポートフォリオの変化に対応した内部リソースのリスキリング、外部人材の確保、モノづくりの標準化を含めた適所適材への配置や入れ替えを、よりスピード感を持って取り組む。そのために処遇面でも打ち手が必要になる。従来型SIの各プロジェクトをしっかりとデリバリーしながらも、Fujitsu Uvance、モダナイゼーション、コンサルティングの3つを柱として、ビジネス全体を成長させること、生産性向上を高めることが不可欠である。第2四半期以降もビジネス拡大と採算性改善の両輪で確実な計画達成を図り、持続的な企業価値向上に向けて取り組む」と、第2四半期以降の方針を示した。
一方、CrowdStrikeが起因となり、Windows PCなどに不具合が発生した問題に対しては、「富士通社内では大きな影響はなかったが、一部影響を受けたお客さまがあり、状況に応じてしっかりとサポートしている。全体的にはコントールできている」とし、「富士通では、品質の総責任を持つチーフ・クオリティ・オフィサーを配置し、グローバルで、横断的に対応する体制を敷いている。自然災害による被害のほか、新たなテクノロジーを使ったサイバー攻撃の懸念などがあり、これが起きるという前提のもとで、いかに素早く対応するかの準備が大切である。富士通自身がさまざまなトラブルを発生させており、心配をかけているが、品質をしっかりと担保し、トラブルが発生したときに被害を最小限に抑え、素早く解消していく」と回答した。
VMwareに関しては、「VMwareの供給形態は変わるものの、供給を打ち切るというわけではない。その点でお客さまには迷惑はかからない。価格面では悩ましいところもあるが、個別に交渉を行っており、どうしてもVMwareでないと価値が出せないというソリューションでは、VMwareを活用し、価格転嫁を含めて対応をしていく考えである。業績への影響は極小化したい」と語った。