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富士通の2024年度上期連結業績は減収増益、“セルフプロデュース支援制度”の拡充により通期の営業利益を下方修正

 富士通株式会社は10月31日、2024年度上期(2024年4月~9月)の連結業績を発表した。

 それによると、売上収益は前年同期比0.9%減の1兆6966億円、営業利益は同28.5%増の563億円、調整後営業利益は同56.8%増の795億円、税引前利益が同7.5%減の548億円、当期純利益が同4.6%減の356億円で、調整後営業利益は、上期としては過去最高となった。

2024年度上期決算 概況

 富士通の磯部武司副社長 CFOは、「主力のサービスソリューションは、着実に増収増益基調が継続している。国内ビジネスはDXやモダナイゼーションに対するデマンドが強い。海外ビジネスでは、前年度に実施した低採算事業のカーブアウトによるマイナス影響があったが、これを除くとほぼ前年並となる。社内計画に対しても、上期は予定通りである」と総括。

 また、「この上期で中期経営計画の折り返し点を迎えたが、ゴールに向けた進捗としては、でこぼこはあるものの、ここまではほぼ計画通りである。特にサービスソリューションは、Fujitsu Uvanceへのシフトによる事業ポートフォリオ変革が進み、着実な採算性改善が取り組み成果として表れている」との手応えを示した。

富士通 代表取締役副社長 CFO の磯部武司氏

2024年度上期のセグメント別業績

事業別セグメント情報

 2024年度上期のセグメント別業績は、サービスソリューションの売上収益が前年同期比3.4%増の1兆175億円、調整後営業利益は同39.8%増の887億円となった。いずれも上期としては過去最高となった。調整後営業利益率は8.7%となっており、前年同期から2.3ポイント改善した。「開発の標準化や自動化、内製化、オフショア活用の拡大などの生産性向上施策が継続しており、採算性の改善は着実に進んでいる。受注時の採算管理の強化も利益率の改善に寄与している」という。

サービスソリューションの概況

 サービスソリューションのうち、Fujitsu Uvanceの売上収益は、前年同期比31%増の2007億円となり、サービスソリューション全体に占める売上構成比は20%(前年同期は16%)となった。内訳はVerticalが前年同期比93%増の632億円(前年同期実績は328億円)と約2倍に成長。Horizontalの売上収益は同14%増の1375億円(同1208億円)となった。またFujitsu Uvanceの受注は、前年同期比30%増の2231億円となっている。

 「Fujitsu Uvanceは、受注、売り上げともに好調であり、計画を上回っている。目標達成に向けて力強いペースで進捗している。また、Uvanceのオファリング開発への投資が続いており、オファリングを市場に投入するための費用もかさんでいる。だが、開発投資は2024年度がピークになり、2025年度は減っていく」との方針も示した。

Fujitsu Uvanceの状況

 モダナイゼーション事業の状況についても開示。上期の売上収益は同69.0%増の828億円となり、2024年度通期では同68.8%増の2000億円を見込んでいる。ここでは、Uvanceとの重複分や、ハードウェアの数字は除いている。

 「上期実績は計画線上での進捗となっている。ナレッジの蓄積、自動化の取り組みなどにより採算性を向上させながら、モダナイゼーションを通じて、DX、SXのビジネス領域の拡大につなげていきたい」と語った。

モダナイゼーションの状況

 サービスソリューションのサブセグメント別内訳では、グローバルソリューションの売上収益は前年同期比13.3%増の2467億円、調整後営業利益は前年同期から34億円悪化し、マイナス60億円の赤字となった。

 「Fujitsu Uvanceを中心に成長したが、さらなるビジネス成長に向けた投資が大きく、利益では赤字となっている。Vertical領域を中心としたオファリング開発を加速していることに加えて、モダナイゼーションナレッジセンターの拡充など、デリバリー標準化に向けた投資を強化している。オファリングビジネスの拡大、DXやモダナイゼーションに関する強いデマンドへの対応は計画通りに進捗しており、下期の増収効果やグロスマージン率の改善により、年間では黒字化を確保できる」と語った。

 リージョンズ(Japan)では、売上収益が同2.1%増の5833億円、調整後営業利益は26.6%増の914億円。「DXビジネスや基幹システムの刷新などのデマンドが拡大しており、モビリティや金融を中心に増収となった。採算性改善も進んでいる」という。

 リージョンズ(海外)の売上収益は同4.4%減の2756億円、調整後営業利益は94億円改善し、32億円の黒字に転換した。「低採算だったドイツのプライベートクラウド事業をカーブアウトしたために減収となったが、その影響を除くと前年並みの水準である。事業ポートフォリオ改革の成果があり、なんとか上期に黒字を確保できた」と自己評価した。

サブセグメント別内訳

 2024年度上期の国内サービスソリューションの受注状況は、全体では前年同期比1%減となった。分野別では、エンタープライズ(産業、流通、小売)が前年同期比3%増、ファイナンス(金融・保険)が同9%増、パブリック&ヘルスケア(官公庁、自治体、医療)が同10%減、ミッションクリティカル(ミッションクリティカル、ナショナルセキュリティなど)が同11%増となっている。

国内サービスソリューションの受注状況

 「前年度上期自体が高い伸長率となっていたが、今年度上期も、それと同等の水準を維持した。受注残高は堅調に積みあがっており、商談パイプラインの動きには大きな変化はない。商談が拡大するトレンドは継続している。下期の大型案件も見えており、増収基調を続けられる」とし、「エンタープライズは、DXやSX、基幹システムのモダナイゼーション案件が継続して拡大し、モビリティや製造、流通などの幅広い範囲で活発な受注状況が見られている。ファイナンスは金融機関向けの基幹業務システムの大型更改商談を複数獲得しており、高い水準であった前年度上期をさらに上回っている。パブリック&ヘルスケアでは前年度上期に公共で複数年契約の大型案件の獲得があり、その反動でマイナスになった。ミッションクリティカルでは基幹システム更改などの複数の大型商談を獲得。下期についてもナショナルセキュリティを中心に大型案件が複数見えている」と語った。

 さらに、「強いデマンドにいかに対応できるかが課題となる。開発の標準化やオファリングビジネスへのシフトがうまくいかないとリソースの手当てができなくなる」とも述べ、「特に、自治体システム標準化については、いっぱいいっぱいで対応している状況だ。安定した品質を確保しながら、標準化対応に必要なSEリソースを充足させることが難しい状況にある。個々に調整をしながら進めている」と語った。

 海外の受注状況は、Europeが同15%減、Americasが同25%減、Asia Pacificが同25%増となっている。欧州と米国は、前年同期の大口案件の反動が影響しているが、下期には大口案件の獲得を見込んでいるという。また、オセアニアでは、金融や小売における複数年の商談を複数獲得したことが成長につながっているとした。

海外サービスソリューションの受注状況

 ハードウェアソリューションの売上収益は前年同期比4.4%減の4566億円、調整後営業利益は同82.2%減の31億円。そのうち、システムプロダクトの売上収益は同5.2%減の3833億円、ネットワークプロダクトの売上収益は同0.4%増の733億円となった。国内サーバーおよびストレージにおいて、前年同期に公共系の大型商談があったことの反動によって減収。為替影響による部材調達コストのアップが減益につながった。ネットワークプロダクトは低い水準で推移しているが、開発投資を進めており、次の成長サイクルに備えていることを強調した。

 ユビキタスソリューションの売上収益は前年同期比16.9%減の1086億円、調整後営業利益は同26.2%増の113億円になった。2024年4月に欧州ビジネスを終息するとともに、国内ビジネスに集中したことにより、採算性が改善した。

ハードウェアソリューションとユビキタスソリューションの概況

 デバイスソリューションは、売上収益が前年同期比3.3%増の1474億円、調整後営業利益は同44.1%増の134億円となった。為替がプラスに働いて好転したが、為替を除く本業ベースでは計画を下回ったという。

 消去・全社では、調整後営業利益は前年同期から113億円回復したものの、マイナス371億円の赤字となった。AIや量子分野の先進的先行研究や、経営基盤全体の強化など、中長期的な事業成長投資を引き続き計画的に実施しているという。「富士通社内では、グローバルグループベースのERPシステムの構築を中心としたOne Fujitsuプログラムを推進。2024年10月から、国内サービスビジネスにおけるERPシステムが稼働した。自らのDXを加速し、データドリブン経営を進め、事業のさらなるスピードアップと効率化につなげていく」と説明した。

デバイスソリューションと消去・全社の概況

通期の業績見通しは据え置きも、営業利益調整項目として200億円を計上

 2024年度通期(2024年4月~2025年3月)の業績見通しは据え置き、売上収益は前年比0.1%増の3兆7600億円、調整後営業利益は同16.3%増の3300億円、調整後当期純利益は同4.2%減の2260億円とした。セグメント別見通しにも変更はない。

 一方で、セルフプロデュース支援制度を拡充。ポスティングやリスキルに加えて、外部転進施策による人材最適配置と生産性向上を加速する取り組みを行ったという。それに伴う営業利益調整項目として第2四半期に200億円を計上。これにより、調整前営業利益は3100億円、調整前当期利益は140億円減の2120億円となる。

 「セルフプロデュース支援制度の拡充は、人材ポートフォリオ変革に向けたものであり、間接部門の幹部社員を対象に、2024年10月末までに期間を限定して募集を行った。割増退職金の特別加算と、再就職支援を実施した。具体的な人員規模は控える」とし、「より成長力を持った事業ポートフォリオへの変革は、最適な人材ポートフォリオがなくては実現できない。外部転身支援は、これまでにも制度として存在していたが、事業ポートフォリオの変更スピードがかなり速くなってきたことで、人材ポートフォリオ変革のスピードも速めなくてはならなくなった。追加施策も果敢に実行していく」と語った。

 今回のセルフプロデュース支援制度の拡充による成果として、2025年度以降、年間数十億円の効果を見込む。

業績見通し 調整前連結業績