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富士通の2023年度上期連結業績は減収減益、通期業績予想を下方修正

採算性改善は計画通りに進行とコメント

 富士通株式会社は26日、2023年度上期(2023年4月~9月)連結業績を発表した。

 売上収益は前年同期比0.4%減の1兆7118億円、営業利益は同55.6%減の447億円、調整後営業利益は前年同期の240億円の赤字から、507億円の黒字に転換。税引前利益が前年同期比53.9%減の601億円、当期純利益が同47.5%減の378億円となった。

2023年度 上期業績(概況)

 富士通 取締役執行役員SEVP/CFOの磯部武司氏は、「デバイスソリューションの所用減が2022年度下期から続き、デマンドの回復遅れが見られているが、成長の主力であるサービスソリューションは、第1四半期の勢いに続き、第2四半期はさらに弾みをつけており、DXやモダナイゼーション関連のデマンドが強く、受注も力強い。サービスデリバリー変革などによる採算性改善が計画通りに進んでいる」と総括した。

富士通 取締役執行役員SEVP/CFOの磯部武司氏

セグメント別の業績

事業別セグメント情報

 セグメント別業績は、サービスソリューションの売上収益が前年同期比8.7%増の9841億円、調整後営業利益は同233.8%増の634億円となった。調整後営業利益率は6.4%となり、第2四半期は8.2%に上昇している。

 「PFUの連結影響を除けば、売上収益は前年同期比13.6%増となる。増収効果に加え、開発標準化の進捗により採算性が改善。Fujitsu Uvanceの開発投資を拡大しながら、利益は前年同期の3倍超という大幅な成長を遂げた。サービスソリューション全体としては計画通りの水準であり、受注や商談パイプラインは、国内、Americasを中心に強いトレンドが継続している」とする。

 サービスソリューションのうち、Uvanceの売上収益は、前年同期比63.5%増の1537億円となり、サービスソリューション全体に占める売上構成比は、前年同期の10%から16%に拡大。内訳はVerticalが328億円、Horizontalが1208億円となった。また、Uvanceの受注は、2023年度上期で前年同期比70%増の1710億円となっている。

 「Verticalオファリングのリリースも始まり、売り上げは通期3000億円の計画を上回る形で進捗している。上期の進捗率は51%に達した。コンサルティング、モダナイゼーション、クラウドマイグレーションの需要が拡大しており、これらの旺盛な需要を、Uvanceが取り込んでいる。下期は、Vertical領域でSXの実現を支援するための多数のオファリング投入を予定している。Horizontal領域ではSAP、ServiceNow、Salesforceによる3S商談を中核としたBusiness Applicationにおいて、高いデマンドが継続している」と振り返った。

サービスソリューション
Fujitsu Uvanceの状況

 また、サービスソリューションにおける採算性の改善では、193億円のプラスとなり、売上総利益率は32.5%と、1.3ポイント改善した。また、成長投資を積極的に実行し、前年同期比で123億円の投資拡大となった。さらに、開発標準化や自動化、内製化、オフショア活用を推進するJGG(ジャパン・グローバルゲートウェイ)の活用率は34%に拡大し、国内サービスの採算性が着実に向上していることも強調した。

 サービスソリューションのうち、グローバルソリューションの売上収益は前年同期比18.2%増の2177億円、調整後営業利益が前年同期のマイナス134億円の赤字から改善したものの、マイナス26億円の赤字となった。

 「Fujitsu Uvanceは計画を上回るペースで伸長し、モダナイゼーションを支えるソフトウェアの大型売り上げが牽引した。依然として積極的な投資フェーズにある領域だが、増収効果に加えて、採算性の改善が確実に進み、損失幅を大きく縮小させることができた」。

採算性改善および投資の状況

 リージョンズ(Japan)では、売上収益が同4.0%増の5711億円、調整後営業利益は102.1%増の722億円。リージョンズ(海外)の売上収益は同9.4%増の2884億円、調整後営業利益は前年同期のマイナス33億円の赤字から、マイナス62億円へと赤字幅が拡大した。

 「Japanは、継続事業ベースで11.9%の増収となり、調整後営業利益は2倍となった。パブリックやヘルスケア向けを中心に、DXビジネスや基幹システムの刷新案件を多数進めていることがプラスになっている。海外は、為替影響がプラスに働いたほか、採算面では欧州を中心に厳しい状況が継続している」とした。

 なお、第1四半期における国内サービスソリューションの受注状況は、全体では前年比18%増となった。分野別では、エンタープライズ(産業、流通、小売)が前年同期比11%増、ファイナンスビジネス(金融・保険)が同23%増、パブリック&ヘルスケア(官公庁、自治体、医療)が同27%増、ミッションクリティカル(ミッションクリティカル、ナショナルセキュリティなど)が同12%増となっている。

 「国内受注はすべての業種で2桁の伸長となり、高い水準で受注残高が積み上がっている。DXやモダナイゼーション商談を中心に拡大している。業種別に見ると、エンタープライズではモダナイゼーション案件を中心に、製造およびモビリティが牽引。第2四半期は、第1四半期を上回る高い伸びをみせた。ファイナンスビジネスはメガバンクや保険などにおいて、基幹システム更新やモダナイゼーション案件を獲得した。パブリック&ヘルスケアは官公庁のシステム更新案件を複数獲得し、電子カルテや医療情報システムへの投資が回復基調にある。ナショナルセキュリティのSI商談も貢献している」と、国内における好調ぶりを示した。

 海外の受注状況は、Europeが前年同期比27%減、Americasが同81%増、Asia Pacificが同1%減となっており、「リージョンごとに明暗が分かれている。Europeは前年同期において公共セクターで複数年の大型商談獲得の反動がありマイナス。Americasは民需向けBusiness Applicationの複数商談を獲得して大きく伸長した。Asia Pacificは前年度の公共系大型商談の反動減はあったが、全体のデマンドは堅調である」と述べた。

受注の状況(国内)
受注の状況(海外)

 ハードウェアソリューションの売上収益は前年同期比3.7%減の4775億円、調整後営業利益は同17.0%減の174億円となった。そのうち、システムプロダクトの売上収益は同5.5%増の4045億円、ネットワークプロダクトの売上収益は同35.1%減の730億円となった。「システムプロダクトは前年同期の部材調達影響が解消し、基幹システム刷新商談にあわせて、サーバーやストレージに対するデマンドが強くなっている。だが、ネットワークブロダクトは、国内、北米ともに前年度の高い需要の反動があり、減収となった。大型需要一巡による減少はあるが、高速化、大容量、低遅延、低消費電力の実現に向けた開発投資を拡充している」と述べた。

 ユビキタスソリューションの売上収益は前年同期比1.8%減の1307億円、調整後営業利益は同107.0%増の90億円になった。「為替影響、部材価格上昇に対しては、コストダウンや価格転嫁が進む、外部環境の変化に対する耐性が進んだ」。

ハードウェアソリューションとユビキタスソリューション

 デバイスソリューションは、売上収益が前年同期比31.3%減の1426億円、調整後営業利益は同81.7%減の93億円となった。「半導体パッケージのデマンドは、2022年度上期までは好調だったが、下期から大きく減速している。2023年度上期も回復は見られていない。物量減に伴う工場の操業低下が影響し、大きな減益となった」

 なお、消去・全社では、調整後営業利益が前年同期のマイナス208億円から、マイナス485億円に赤字が拡大。AIや量子、省電力プロセッサなどの先進的先行研究の強化と、One Fujitsuプログラムによる経営基盤強化による中長期的な事業成長投資の拡大が影響している。

デバイスソリューションと消去・全社

通期見通しを下方修正、増収減益の計画に

 一方、2023年度通期(2023年4月~2024年3月)の業績見通しを下方修正。売上収益は期初見通しから500億円減少の前年比2.6%増の3兆8100億円、営業利益は200億円減少の同4.7%減の3200億円、調整後営業利益は200億円減少の同0.3%減の3200億円、当期純利益は100億円減少の同3.3%減の280億円とし、増収増益の計画から、増収減益の計画とした。

業績見通し

 「デバイスソリューションは、デマンドが低調であることは当初から想定していたが、顧客での在庫調整が期初の想定から長引いているため、上期は計画に未達となっている。利益ベースで数10億円の下振れになっている。デバイスの本格回復は、2024年度になると見ており、それを今回の修正に織り込んだ。その一方で、サービスソリューションは下期以降も力強い拡大を十分に期待できる。Fujitsu Uvanceオファリングの確実なリリース、デリバリー変革への愚直な取り組みをしっかりと進めることで、計画通りに伸ばしていける。年間の高いターゲットも確実に達成できる。マクロ経済環境には不透明感があるが、足元での受注残の積み上がりや採算性改善を足掛かりに、モメンタムを維持しながら成長による結果を出したい」と説明した。

 なお決算会見では、Fujitsu MICJET コンビニ交付システムの不具合による業績への影響についてもコメント。「点検コストなどの費用はかかっているが、現時点では業績を修正するほどの顕著な影響はない。トラブルは終息しつつある」とした。

 また、ノンコア事業である半導体子会社の新光電気や、エアコンなどの家電事業を行う富士通ゼネラルをカーブアウトする方針に関する進捗状況については、「現時点で公表する内容はない」としたものの、「いずれも事業規模が大きい。時間はかかっているが、次の成長につながるように、慎重にパートナーを探している。経済的な価値だけで軽々に判断することはない」と語った。